第三話
火災から数日経った。テレビでは奇跡の脱出劇などともてはやされている。ホテルの火災時の対応や非常設備の不備など、叩けば埃が出る状態にメディアは狂喜乱舞して放送している。ただ自分の記憶違いで無ければ、この年は国会で有事特別措置法について審議されていた。メディアに煽られて結局通る事はなっかったが、今回はどうなるだろうか。ホテルの事件は本来ならば死人に口無し。内容は大きくは報道されず、教訓程度の筈だったのに今はこれだ。大きく歴史を変えてしまってる様な気がする。実際あの日から時間の早送りも出来なくなった。これが意味する事は、走馬灯の変更に成功し、未来が変わったのか。最終的に収束して走馬灯に戻るのか現状ではわからない。ただ、次の目標は決まっている。15の夏に救えなっか少女を…気付きさえしなかった友達を救いたい。
自分の過去では15の夏休みにクラスメイトが自殺したと記憶している。原因は強姦から脅迫、輪姦といき最後は自殺。いつから始まったかは知らないが、彼女が自殺したのは8月末だと記憶している。
仲は良かった。俺は部活オンリーで余り勉強は出来なかったが彼女は頭が良く、席が隣りだったためかいつも教えてくれていた。スタイルがよく顔も可愛らしい、そんな子が自殺したのが信じられなかった。変えれれるものなら変えたい過去の一つなのは間違い無く、その時は照れくさいのもあってぞんざいに対応していた。
今はまだ11歳、4年で何が出来るかは分からないがとりあえず蓄えれる知識、金、力を思いつく範囲でためようと思う。
今感じているズレが大きくなる前に、出来ることをしなければいけない様に感じたからだ。
「爺ちゃん!おこずかいくれ!」
11歳のガキに与えられる額は少ない。しかし、お年玉やお手伝いで貯めるしか現状では方法が無い。いつ、走馬灯の記憶が無くなるかも分からないため、ノートに年間表を作成し行動指針を立てる。歴史を改変しない様に…最小限の行動で最大の成果を出すために。
「おはよ〜ぅ」
朝のクラスに響く声。本当に懐かしく思う。ただ、定着したためだろうか、何をその時は言ったかまで思い出せなくなって来ているのが自分でも分かる。最悪喋らない方向でもっていく事も出来るが、小学生の頃の俺は馬鹿だった。下手に人気者になりたくて、目立つ事ばかりしていたように思う。いきなりなりを潜めるなど出来そうもない。
「おはよ〜達也!昨日のさぁ…」
友達が昨日のアニメの話しをしてきた。みたいた記憶はあるが、どの回なのかが分からない。適当に相槌をうってやり過ごそうとするが、子供は敏感だ。すぐにに見てない事がバレる。
「何だよ見てねーのかよ」
「悪い!見逃す事もあるだろ?何なら録画でもしてない?」
そんな言葉で誘導して事無きを得るが、いつ取り返しのきかないボロが出そうだ。
危なくなる前に、趣味趣向の変更と友達との関係の結びつきを他方面からのものに変える。こんな事でかなりの時間と労力をかける事になるとは思いもよらなかった。
小学生6年に上がると、俺は本好きの真面目な子との認識が定着している。バカ話も出来るが、少し斜に構えた子と印象付けられている。テストも高得点は取れるが、取ることをせずに平均をキープ。先生からの評価は、お調子者から優等生候補といった感じに変更されている。
親や姉からは少し変わった程度に思われているが、お手伝いもよくするし、姉の趣味にも付き合えるようになったので悪い印象ではない。
一番苦労したのは株取引の為に親の保証が無いと出来ない事だ。そこもお願いしまくる事で軟化はしていたが最後の最後はNO。結局祖父が世間を知るために一緒にするという事で落ち着いた。
毎日PCにかじりつく訳にも行かずにコツコツと行っているのだが、元手も少なくリバレッジもかけれない。夏休みは勉強の傍ら行う事で100万近くまで膨らます事は出来たものの、祖父からの視線は懐疑的なものだ。
「達也は経済事情がわかるのか?」
祖父に聞かれて普通に答えると驚かれた。それはそうだ、たかが12歳の子供が大人と同じだけの知識を持ち、先見の明で株取引で成果を出している。常識では考えられないものだ。
稼いだお金は俺口座に入っているため、いずれ扶養から外れてしまうがそれ迄は黙っていて欲しいと祖父には話してある。祖父にも利益供与するようにして、お願いした銘柄の購入や為替証拠金取引にも手を出している。経済状況や国際情勢、法案の可決云々にまで目を通し、自分の記憶にある近代史の情報で上手く立ち回っている。だが、損がゼロでは無いため大きく稼ぐ事は出来ていない。
そんな生活で小学生の青春は終わった。目標があるから損をした気分にはならないが、もう少し遊びたかったとも思う。これで、歴史を改変したとは思えないのでそこまでの危機感は今は無い。
さて、中学入学が大きなミソである今回。部活選択と勉強が一番重要だ。間違えれば同じクラスにはなれない。評定遺憾でいくらでも変わるからだ。ただそこまで計算尽くで行うのはほぼ無理である事も知っている。なので部活は情報部に入り勉強は平均をキープして行く。勉強自体は小学生の時に復習済みだ。二流大学なら今でも合格出来るだろう。ただ何があるかは分からない。最近は留学や一流大学に受かるレベルの勉強を密かにしている。勿論自分のお金で参考書や欲しい教材は揃えられているから問題無い。
1度姉が部屋に来た時に参考書を見て悲鳴をあげていた。3つ上の姉だ。自分でも分からない問題が解いてある問題集が怖くなったのだろう。祖父頼りで解きましたと嘘は万全だったが、税金や扶養の関係から家族にはバレている。ただ、頭の良い家族程度で収まっているし、元々ごうつくな家族ではない。俺の金を当てにする事もないのが凄く嬉しく感じた。
情報部は楽しいと言うより毎日PCいじりやネットサーフィンが主な活動内容。ただ、俺の提言により校内BBSを立ち上げて情報収集を行っている。情報部は外側から俯瞰して全ての情報集積を一般生徒はいいサイト程度に使ってくれている。
やはりバカはいる。イジメや万引きを仄めかす奴や煽る奴。情報部の人間は真面目君ばかりなので辟易しているようだが、情報漏洩はしない。した場合どのようになるかは、懇切丁寧に説明したから絶対にしないだろう。逆にばれずに妨害する方法や、掲示板を使った情報誘導などを最近はしている。本人達も良かれと思ってやっているようだが、羽目を外さないように連絡事項の徹底をしている。
部活はすぐ終わるので最近は空手道場に通い始めた。力は絶対に必要だ。夏は合気道や体動術も習いに行こうと思っている。忙しい学生生活に辟易しそうだ。
3年春、遂にやってきたこの時期である。緊張しながらクラス分けを見ると俺のクラスに篠崎愛菜の名前があった。勿論、自殺する女友達だ。