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走馬灯と流れる時間  作者: くにゃ
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第二話

20XX年


…ピッ…ピッ…ピッ…

シュコー、シュコー、シュコー…


あぁ、やっぱ俺死ぬんだろうな…いい人生と言える程の人生とは言わないがまぁまぁ充実してたんじゃないかな…



俺、鴨居達也は3ヶ月前にスキルス性癌と深刻された。42歳、働き盛り…嫁は結局いなかったが両親はしっかり看取る事が出来た。姉貴と兄貴は結婚してるから俺の財産も適当に別けてくれるだろう。

俺の人生はここで終わる。それはそれでいい。ただもう一度出来れば大好きだったアイツの顔が見たいと思った。


もう限界かな…目が視界が閉じてくのがわかる…後は野となれ山となれ…


…ピーーーーーーーーーーーーーー…


白く清潔感のある病室に心電図モニターの警報音だけが鳴り続けた。




…心電図の警報音が鳴る少し前…


目を閉じた瞬間…物心付いたばかりだろう、目の前にまだ若い両親がいた。祖父母もいた。時間は流れる様に進み始める。そして、祖父母が火災で亡くなる直前まで来たのがわかった。


あぁ、ここで親父達が気を利かせて旅行に行かせなければ…戻りたい。どうしても。もっと戻りたい時間はあるが…でもここに戻れるなら…もっと人生を…


そう思った瞬間に時間が普通に流れるはじめた。



「え?なんだこれ…?」

「達也?どうした」

「いや…ええっと…オトン!爺ちゃん婆ちゃんの旅行止めて欲しい!」

「いきなりどうした?」


いきなり記憶とは違う言葉発せれた事に驚きはしたが、すぐに冷静に戻り子供の時の様に我儘を言う事にする。


「俺爺ちゃんと出掛けたいから!旅行行くよりも孫と一緒にどっか行ける方がいいだろ!」

「確かにそうだと思うが…お前も一緒に旅行に行くか?」


この後に行く旅行で、祖父母はホテルの火災で亡くなる。ついていく事で何とかなるか?火災の時間は…色々考えるが見えて来ない。


もし違っていたら…いやそれならそれでいいか…ついて行くのがベストだろう。


そして翌日の土曜日に旅行へ行く事になった。

土曜日までの時間が待てずに、旅行での行き先や事故の事を思い出していると…また時間が早送りになった。慌てて土曜日の出発時に止まる様に念じる。


「婆ちゃん晴れてよかったね!」

「本当にねこんな晴れるなんて。タッちゃんが一緒に来てくれたからだよ。」

そう言って頭を撫でてくれる婆ちゃんは、記憶の中の婆ちゃんだった。


何でこんな事が起きるんだ?これは走馬灯だろ?何故行った記憶の無い旅行が出来る?


そんな現象に頭の中を整理していると、時の流れのスピードを操れるかもと思い、眠りに落ちてしまう時間まで、一気に時間を進めようと念じる。


あれ?進まない?体から少しずれた様な感覚にならない。強いて言うなら定着したような…


「どうしたのぉ?」

「…な、なんでも無いよ婆ちゃん!あ!あそこの饅頭食べたい!」

「どれどれワシが買ってくるよ」


これは過去を改変しているのか?でも俺は死ぬ直前だったはず?どうなってる?もしかしてこのまま行くと未来の俺は無かった事になるのか?それとももう死んでいてその中に生きているのか?タイムスリップしたのか?


多くの事が頭の中に流れ込み、よく分からない考えても何が正解なのかも分からない。


とりあえず現状出来る事はホテルの火災ので死なない事。これしか方法はない。


そう考えホテルの非常階段や消火栓、消化器、脱出するための最短経路などを探し検討していく。

祖父母とホテルの夕食を堪能した後に寝床に着く。


確かホテルの火災は12時に出火した筈…出火した場所とかは分からないが、30分で燃え広がって逃げ道が無くなる。確か死者だけでもかなりの数だった。


無駄に買ってもらった時計のアラームをセットして。その時間まで待つ。




…ピロリロリン…ピロリロリン…


鳴った!直ぐに行動に移さないと!


「爺ちゃん!婆ちゃん!起きて!お願いだから!」

「どうしたの!」

「どうした!?」

「臭いしない?焦げるような臭い?」


言い訳にと考えていたが、自分でもわかる。明らかにもう火の手が回っている状況じゃないと此処まで臭いはしない。


おかしい!出火は12時じゃなかったのか!?


焦りが前に出て冷静に判断出来ない。


よし!よーし!落ち着け落ち着け…よし!行ける。


このホテルに来てから考えていた事を一気に言う。


「爺ちゃん!直ぐにシーツ剥がして水につけて!婆ちゃんは荷物を一気に詰め込んで!最悪お金と車の鍵があればいいから!」


慌ててた祖父母が準備を始めてくれる。

室内の消化器はなかったので、予め部屋の中に引っ張りこんでいた。ただ、11歳の体では些か重い。

シーツを濡らして来た祖父に持ってもらう。


「行くよ!」


此処まで5分逃げた方が明らかよかった様に思えるが、出火時間がずれたため計画が狂った。

部屋の扉を開けると辺り一面が真っ黒な煙でつつまれている。


「これじゃ前が見えん!ワシが先を歩くぞ!」


そう言って歩き始める祖父の浴衣を力一杯引き何とか踏み止める!


「なんだ達也!今は急がんといかんぞ!」

「爺ちゃん避難経路図見てないでしょ!非常階段はあっちだよ!それに濡れたシーツは被って!余ったシーツは婆ちゃんと俺で結んだから、爺ちゃんも腰の帯に結んで!」


何を言ってるのか分かったのだろう、直ぐに理解してくれた祖父に今回は感謝したい。

今までのやり取りでかなり大声を出していたのだろう。多くの人が火事に気付いたようだ。実際非常ベルは押したが全くならなかったし、スプリンクラーも作動してない。


…なんだよこの煙!…

…やだ!死にたくない!…

…誰かなんとかしろよ!…


マズイ!パニックを起こされたらこの人達は100%死ぬ!


「こっちだ!こっちに付いて来い!ゆっくり歩くぞ!近くの部屋は叩いて知らせてやれ!」


祖父の声が通路に響いた。


あぁ昔っから祖父はこういうとこあったな。こういう祖父が俺は大好きだったな…


出会った人や呼び掛けに反応した人を引き連れ非常階段に向かう。


此処までで20分は消費してる。このままじゃマズイ。確か全てに火が回ったのが30分。明らかに時間がずれてるからそもそももう回ってるはずだ。


非常階段の扉に着き安堵な気持ちと焦る気持ちが綯い交ぜとなって押し寄せてくる。


…ガチャガチャ…

…ガチャガチャ…

「鍵が掛かってるな…」


その言葉で頭の中に警鐘が鳴り響いた。


マズイマズイマズイ!そう言えば昔はよくあったんだ!この火災があったから無くなったのに忘れるなんて!


この火災のが余りにも酷い管理のホテルだった為に消防法が更に厳しくなったのを今更に思い出した。


…ガンッガンッガンッガチャーン…


「よし!開いたぞ!ゆっくり降りろ!押すな!」

そう言って二人ずつ通し階段を降りさせる。


消化器がこんなとこで役に立つとは…本当によかった…




一緒に非常階段を降りた人は全員無事だった。ただ泊まっていた別館ではなく本館の方に逃げた人は多分助からないだろう。外に出てホテルを見た感想はそれしか出て来なかった。


今回の出火は本館か…別館も今からじゃもう逃げれないだろうな…


赤く燃えるホテルを見ながら今回の失敗や、計画のズレに付いて考えてみる。


多分12時に出火したんじゃなく12時に祖父母がしんだんだろうな…俺の時計は15分早くなっていた。と言う事は出火は11時半。なんで、出火の時間と祖父母の死亡時刻を間違えたのか…あと、あそこで俺もろとも死んでたら未来はどうなるのか…


疑問は尽きないが今回は祖父母を守る事が出来て良かった。




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