立樹が乗る実験機
自衛隊に入って2年目、叔父さんの誘いで入ったのはいいものの
何を目標にしていいのか、わからなかった。
ある日、突然、俺に言い渡された、『お前が全体の指揮を乱している。この仕事は向いてない』
でも上司は、とってもニコニコしながら肩を叩いてきた。
『だから、これあげる』と言われて、もらったのが辞職願。
『後は俺のとこにハンコ押して、それ持ってきて』と言われたのだが
中身を見ると、機密文書と書かれていた。
廊下のど真ん中で見るものではないと、それを見た瞬間トイレの個室に行き中身を見てみると
特別任務部隊転属書類と書かれていた。
…… もう一枚、何か入っている。
達川雄一郎と書かれている。おじさんの名前だ。
その紙を開いてみると
『推薦状だ。お前はやめたことにしてもらう。だからやめる理由をつけてやめる振りをしろ』
なるほど。やめる理由は、そうだな……俺には向いてなかった。でいいだろう。
見たところハンコを押す場所はないみたいだがサインする場所はある。
サインして持っていこう。
そうして自分の部屋に持っていきサインを書いて、辞職願(偽)にしまい
上司の部屋に。
「はい、じゃ、明日午後10時に寮から出て行くこと」
「了解です。今までありがとうございました」
「これから頑張れや。いやー、やめてしまうなんてもったいないわー」
そう言ってニコニコしながら送り出してくれた。
盗み聞きをしていたやつがいるかもしれないからと、演技してくれてた。
かなり棒読みだったけど…
次の日寮から出て門の外に行くと待ってました!と言わんばかりにタクシーらしき車がやってきた。
その車は俺の少し前で止まり扉を開く、乗れと言わんばかりに。
「あんちゃん、今日はどこまで乗ってくんだい?」
「そうですね…。お任せします」
怪しい。だけど遠まわしに乗れと言っている。
多分『お迎え』の車だろう。車に乗ると彼が話し始めた。
「この車、タクシーに見えるだろ?」
「まぁ、緑ナンバーと頭のタクシーって書いてる物体があればタクシーに見えるとは思いますよ。」
「詰まらない答えやだなぁ」
「で、達川さんのところへ連れて行くんですよね?」
「まぁなぁ。それが俺の任務だしな」
そう言って叔父さんのところへ連れていかられ特殊部隊だから。隠密行動が主な目的だらか。
と簡単な説明を受けて家に連れて行かれた。ここが俺らの家だ。
窓もなく太陽の光もない地下。隠密行動というのはそういうことらしい。
「身バレしちゃいけないから外にはあまり出かけられないよ」
とんでもない場所にきたらしい。でも面白そうだ。
そんなことも有り。今現在に至る。
そして、今日は大事な日だ。実験機の起動テスト並びに飛行実験。
機体というよりも、鉄の着ぐるみ?を着ているというのが正しいらしい。つまり装備品らしい。
背中部分に当たる場所が実質の出入り口。脚を入れ、腕を突っ込み、起動コードを入力すれば起動する。
中は腕マッサージ器の部分が全身にある感じ?といえばわかりやすいのだろうか。
人間の動きを認識して動く。シュミレーターでの飛行はなれるのに1ヶ月はかかった。
背中に可変翼・ブースターが着いた、ユニットが120度、背中から頭の上ぐらいまで動く。
後は両腰にブースター、頭と足に補助翼が付いている。
装備に関しては、狙撃銃・フックワイヤー・ミサイル。
そのうち付けるというミサイルポットは、機体内部に埋め込むらしい。
長銃・フックワイヤーは先端を変えると、切り替えれる。
脚の関節の上下に武装収納が有り、上の方にあるのが元となる銃の大元。発射装置というべきか。
下にあるのは狙撃銃の銃身とフックとで、左右で分かれている。
この機体の性能上、歩きにくいというのがあるが、足に収納式のタイヤをつけることで解決した。
道路程度の舗装されたみちなら走行可能。バランスの関係上60kmほどしか出ないらしい。
今回のテストは、走行テスト・長銃の陸、空中時の軌道補正・フックの陸、空中時の軌道補正・飛行テストが
今日行われる実験内容だ。そろそろ行こう。
「立樹、準備はいいか?」
「大丈夫です。いつでも行けます」
「では、これから起動実験並びに走行実験・システム確認・飛行実験を開始する。立樹、搭乗してくれ」
「了解」
改めて思う。緊張している。
心臓の音が聞こえてくる。だが驚くぐらい冷静でもある。
最初の起動実験は致死率が高い。慎重にやらなければ。
足を入れ、腕を入れ、起動コードを入力。
「起動開始します」
全身が締め付けられる。
暗闇から文字が出る。
『認証完了。目を閉じ、動かないでください。
目を閉じたあと3秒後に切り替わります。』
目を開くと360度、前後左右、外の映像が出ている。
「画面の切り替わり正常です」
「よし。まずは10歩ほど歩いてくれ」
「了解」
歩けない訳ではない。ただ歩きにくいだけ。
とても重たく感じる。足に重りをつけたみたいだ。
「システム補助のおかげで、かなり安定して進めます」
「よし、次はタイヤ走行だ。タイヤを出してゆっくりスピードを上げてみてくれ」
「了解です」
タイヤの出し入れだけに限った事ではないが、
特殊な操作は画面の空中に映し出される。操作欄を指でタッチするとそれに従った動作が起きる。
実際にタッチしてるのではなく、画面を通じて仮想の映像をタッチしているだけ。
他人から見ればそこには何もない。
タイヤを出すときは空中か完全停止の状態でないと出すときに警告音がなるらしい。
「タイヤ展開しました。走行実験に入ります」
「まずは30キロほど出して見てくれ」
「了解です」
走行している時の感覚はセグウェイに似た感触。
前に倒すと加速して後ろに倒すとブレーキ。完全停止して後ろに倒すとバックする。
「走行感覚に、異常はありません」
「それじゃあ、スピード上げて出せるだけ速度出して見て」
「了解。加速します」
更に体を前に倒す。
加速していくと、どんどんスピードが上がっていく。
右上に赤い枠で警告が入る。
「警告表示されました。スピード下がっていきます」
「よし。システムは問題ないな」
「次は射撃場に移動して、弾道補正とロックオンの確認だな」
「了解」
弾道補正は画面に表示される。銃口の角度から一発目は弾道を見る。
外れれば弾道補正が入り、当たればロックオンされる。
風を読み取り2発目以降の命中率を飛躍的にアップさせる。
ロックオンは2種類ある。敵対した相手に銃口を向け続ける。
もう一つは敵対した相手を追いかける、もしくは体の向きを変える。
対空戦には後者を使う。対地戦では前者を使う。
今回は地対地なので1発目で弾道を測り2発目からの弾道予測を出す。
「射撃準備できました」
「あまり狙わなくていい。的の方向に撃ってみてくれ」
「わかりました。射撃モードON」
狙撃銃の利点は射程である。射程を生かし攻撃する。
弾を変えれば貫通しやすいAP弾や弾薬がはいったHE弾などがある。
銃身を変えれば中・近距離戦闘に向いた、小銃にもなる。
「1発目着弾。外れ。誤差修正。2発目、発射。…命中」
「次はその的の隣にある、動いている的に当ててみてくれ」
「了解。発射…左側着弾。誤差修正。2発目、発射。…中心に命中」
「問題なさそうだな。次は飛行実験か…飛行場へ移動、飛行モードにしてからブースター、エンジン始動」
「了解です」
「ここが一番、大事な実験だ。…慎重にやれ」
「了解です」