俺が一体何をしたっていうんだ!!
「着いたぞ」
ああ、俺は今から競売にかけられるんだ・・・。
「すまないがここからはこの布を被って貰う。これも規則でな」
秘密の場所で行われるからか。
ああ、視界が真っ暗になっていく・・・。
「ゆっくりと引っ張るから着いて来てくれ」
恐怖なるべく長く堪能させる気なんだな。このドS。
・・・・・・怖いよ~。
「着いたぞ。では布をはずすからな」
ああ、ついに競売の始まりか。
布を外され目を開けると一人の老人が座っていた。
もしかしてもう競売は終わっていたのか。
俺はこの老人に売却されたのか・・・。
綺麗なお姉さんがよかった。
それにしても豪勢な造りの部屋だな。
俺の家とは正反対だ。
「国王の前だぞ。あまり視線を動かすな」
「あ、はい・・・って国王?」
「そうだ。この国を統べている御方だ」
「俺、国王に売却されたのか・・・」
「?。何を言っているんだ。そんな事するはずがない」
「え?そうなの。だったら何でここに」
「それは追々わかる」
男は国王の傍まで行った。
「この若者がたった一人でか・・・」
「はい。そしてこの者は空から来たと」
「ほほう。空からか。・・・ではあの噂は本当だったのだな」
「はい。そのようです」
「青年よ」
「あ~・・・はい。何ですか・・・」
「今からこの者と戦ってもらいたい」
俺を拉致した男を指差した。
冗談じゃない。
俺が勝てる相手ではない。
ここは断るのがいい判断だ。
「え、いy」
「断れば命はない」
「やります」
何事もチャレンジだ!
やってみないとわからないもんな。
「うむ。いい返事だ。では頼む」
「畏まりました。では、私に付いて来てくれ」
「は、はぁ・・・」
とりあえず返事をし、俺は言われたとおり男の後に付いて行く事にした。
逆らえば命がないからな・・・。
「この部屋にある武器はどれでも好きなものを使うといい」
「・・・・・・」
「では試合は今から一時間後だ。時間になったら迎えの兵をよこす」
そう言うと男は部屋から出て行った。
―――ガチャリ―――
しっかろとロックをして。
「これって全部本物か・・・」
まさかな。本物のはずないよな。
怪我したら大変だし、最悪死ぬしな。
だからきっと絶対間違いなくこれは全部模造品だ!
目の前にあった剣に触ってみる。
血が出た。
うん。切れ味抜群だ。
よく研いであるね。
「何だよこれ!ふざけんな!!」
試合っていったら普通は模造品だろ!
なんで本物なんだよ!!
殺す気ですか!?
てか、殺す気だよね!!?
「おい!ここから開けろ!!」
俺はまだ死にたくない!
まだやり残したゲームがあるんだ。
俺を待っている女(二次元)がたくさんいるんだよぉー!!
扉を叩くがまったく開く気配がなかった。
「チクショー・・・」
俺の命も後一時間かよ・・・。
「準備は出来たか」
「・・・・・・」
「武器はもっているな。よし試合場へ案内しろ」
もう駄目だ・・・。
「では、これより試合を開始する」
「遠慮せずにくるがいい」
「・・・・・・」
もう俺の命もあともって数分か・・・。
「どうした来ないのか?」
ああ、こうなるんだったら親父言う事聞いとけばよかったな。
親父、母さん、ごめんよ。
親不孝な俺で・・・。
でも、できたらもっと遊びたかった。
やりたいゲームも山ほどあった。
買いたいフィギュアもあったのに。
もっと好き勝手生きたかったのにな・・・。
「・・・・・・」
ほら、早く殺せよ・・・。
どうしたんだよ。
さっきから動かないで・・・。
・・・あれ?
何かおかしいぞこの人。
「・・・・・・」
何をしているんだこの青年。
こっちが構えているのにまったく動こうとしない。
それに目がすでに死んでいる。
本当にあの街を救った者なのか?
・・・期待はずれだったな。
一瞬で終わらすか。
・・・いや、待て。
もしかしてこれは誘っているのか?
こちらが攻撃した瞬間を狙って決める気かもしれん。
だったら迂闊に攻めることが出来ない!
「・・・・・・っく」
中々やるな青年。
あの無防備過ぎる状態で私を動けなくするとは・・・。
待て・・・無防備だと!?
そうか!
あれは無の型だ!
一見無駄だらけの型だがそれは無駄がない型。
それに脱力しきっているあの手足。
いつでもどんな動きにも対応できるという意味。
素人や普通の奴らにはわからない。
私以外では見抜けないだろう。
・・・見事な型だ。
まさかこんな青年が会得してるとは・・・!!
只者ではない!
なら、こちらから動けないとどうする・・・。
相手が来るのを待つか?
いや、無理だ。
無の型を会得してるとなると、どう攻めてくるかわからん。
攻めも受けも不可能。
「・・・・・・私の負けだ」
「・・・・・・へ?」
今この人何って言ったの?
負けって言ったか?
どうして?なぜ?
俺何もしてないのに。
そういえば全然動いてなかったな。
動いてなかったのに汗びっしょりかいてたし。
どこか調子が悪かったのかな。
だけど勝ったからいっか!
よかった。これで俺の命がなくなることはなくなった。
ありがとう邪神様!!
「まさか一歩も動かずに我が国一の剣士に勝利するとはあっぱれだ」
「あ、王様俺勝ったからもういい・・・」
「では次はこやつとしてもらおう」
「・・・・・・はぁ?」