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新たなる始まり

「(どうしてこうなった・・・)」


只今、仲間に襲われています。


これだけじゃわかり難いか。


俺の周りをリザードが囲んでいる。


次期魔王の俺にだ。


ならなぜ次期魔王である俺を囲んでいるか気になるだろ?


理由は明白。


誰も俺が魔王の息子だと気がついてないからだ。





「息子よ。入るぞ」


「・・・・・・」


部屋に入ってきたのは俺の親父で魔王だ。


モンスター達を束ねて人間と戦っている。


自慢できる親父だ。


親父のおかげで俺は好きな事をやりたい放題だよ。


毎日寝て食べ遊ぶ。


最高の日常だ!!


「・・・何の用?」


寝巻き姿のまま返事を返した。


親父はその姿を見て深いため息をついた。


「・・・まったく・・・。まだ寝巻きのままなのか・・・。我が息子なのにだらしがない」


「え~別にいいじゃん。ここは俺の部屋なんだし」


「そう言う事を言っているのではない」


「は?どういうことだよ」


「お前は魔王の息子だ。次期魔王になってこの軍を引き継がないとならんというのに。お前ときたら毎日部屋に引き籠ってゲームばかりしておって、たまには部屋から出て部下や民に顔を出さぬか。もう十年になるんだぞお前が引き籠って・・・・・・」


あ~いつもの説教か・・・。


・・・別にいいじゃん。


そんな事しなくても俺が魔王になるのは確定されてるんだからさ。


俺が何しようと俺の勝手だろ。


「・・・話を聞いているか。息子よ」


「あ~うん。聞いてるよ~」


「なら布団から出ろ。顔を父に向けなさい」


「・・・めんどい」


「育て方を間違ってしまったか・・・。・・・仕方がない。息子よ。お前に試練を与える」


「え?」


聞いたことがなくて聞きたくない単語が聞こえたきがしたぞ。


「しばらくの間この国から追放する。外の世界を勉強してきなさい。そして一人前の魔王の息子となって戻って来なさい」


「ちょ、待って親父」


せめて着替えさせて!!


寝巻きのままなんて嫌だ!!!


「達者でな」


親父は転移魔法の呪文を唱えた。


俺の下に呪文が書かれた魔法陣が浮かび上がってきた。


「ちなみにどこに行くかは、父でもわからんからな」


それってやばくないですか・・・。


嫌だよ!俺のこの寝巻き姿をどこぞの誰かに見られるなんて!!


「待って親父!!一応着替えてから・・・!!」


「立派になって帰ってくることを父と母は期待しているぞ」


「おい!話し聞けよ!!」


「さらばだ!!」


魔法陣が光り、俺はどこかの国に転移させられた。


寝巻きのまま・・・。





「・・・・・・・・・・・・」


転移した先は空だった。


国ではなく蒼く広がる空。


「・・・・・・太陽が眩しいな」


十年振りの日の光は俺に活力を与えてくれた。


しかし、そんなものはポイッだ。


なぜなら俺は死を悟っからだ。


魔王の息子だから浮遊できる魔法があると思うだろ?


残念だが俺はそんな事を学ぶ時間があったら部屋でゲームをしている。


そんな訳で空のスカイダイビング(NA☆MA☆MI)を堪能中だ。


まさか転移先が空だったなんて流石の親父も予想外だったろうな。


だけど、現在進行形で堪能してしまっている俺の方が絶対驚いている。


いや、世界で一番だな。


驚きを通り越して冷静なっているけど。


あ~あ。こんな事になるんだったらもっと遊んどけばよかったな。


秘蔵のあれ、もう一度遊びたかったな・・・。


でも、寝巻き姿を誰かに見られないで済んだのはよかったかな。


ああ・・・もう地面が近い・・・。このままだと街に落ちるな。


さようなら俺の人生。


・・・・・・。


・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・あ。


思い出した!!


唯一唱えられる魔法!!


俺が部屋に引き篭る前に習得した魔法。


十年前だけど・・・出来るのか?


「いや、大丈夫。俺はやれば出来る子。親父もそう言ってたもんな」


時間はない。


やってやる!やってやるぞ!!


俺はまだ遣り残したことがたくさんあるんだからな!!





街はモンスターに襲われていた。


火が点けられ燃やされ、無残に破壊されている建物。


「金目の物はすべて奪え!」


リザード兵の隊長が部下に指示をだす。


その指示通りに部下は金品を奪っていく。


街の人々はモンスターの襲撃で逃げ惑う。


「ハハハ!人間共め。逃げろ逃げろ!!・・・ッイテ!?」


そんな中一人の少年が隊長に石を投げた。


石は額に命中しよろめく隊長。


だがそれも一瞬。


「馬鹿なガキめ。逃げていれば助かった命だろうに!!」


隊長は石を投げた少年に手に持っている剣を高く上げ振り下ろす。


その時


何とも言われぬ衝撃が隊長を襲い、吹き飛ばした。


「・・・・・・出来た」


吹き飛ばされた隊長は無事でないのに対し


「俺ってやっぱ出来る子だったんだな!!」


ぶつかって来た人物はすごく元気だった。


「あ~まじよかったわぁ~。生きててよかったぁ~」


命があることに感謝します。悪魔様。


「硬化の魔法覚えておいて助かった・・・ん?」


「・・・・・・」


少年がいることに初めて気がついた。


「人間の子供?なのか・・・」


初めて見たな。これが人間・・・。


何かパッと見俺との見分けがつかないな。


まじまじと少年を観察していると


「お兄ちゃん後!!」


子供が俺の後ろを指差し声を張り上げた。


「ん?後ろ?」


言われたとおり後を振り向くと、


剣を振りかざしたリザードがいた。


俺は二度目の命の危機に遭遇した!


これは避けれない!


そう断言した俺は硬化の魔法を唱えた。


その刹那剣が体に触れた。


剣が砕ける音がした。


・・・セ、セーフ・・・。


どうにか間に合った。


このトカゲ野郎が、誰に対して剣を振りかざしているんだ!!


「おいお前!俺を魔王の息子だと知っての行動か!!」


リザードは硬直した。


どうだビビッて何も出来まい。だがな貴様はもう遅い。この俺様に無礼を働いたからな。後で親父に目一杯怒られるがいいさ!


が、すぐに攻撃してきた。


「おい馬鹿止めろ!!死んだらどうするんだ!!」


俺の言葉まったく聞かずに攻撃してくる。


おかしい。なぜだ・・・なぜ俺の言う事を聞かない!!


・・・・・・あ、そうか。


俺の事を知らないのか。


それもそうか。


十年前だもんな。


姿もだいぶ変わっているから気づくはずないか。


っていうか十年前って城の外すら出たことないから知らないで当然か。HAHAHA!!


リザードが斧を振り下ろしてきた。


「ひゃああああ!!」


変な奇声と同時に避けた。


なんて悠長に考えている時じゃない!!


俺の事を知らなくても誰でも知っている証拠を出さなくては命がない!


何かないのか・・・!!


あ!そうだ!


「トカゲ野郎!この角がわからないのか!!」


俺は自分の頭にある角を指差した。


そう。これがあった!


この角を見れば俺が親父の息子だとわかるはずだ。


この角は王の象徴。


親父にも立派な角がある。


これを見れば・・・・・・あ。


俺は自分の頭を触った。


・・・ない。


そういえば親父に寝巻きのまま転移させられてたんだ・・・。


部屋に忘れてきたよ・・・。


「やっぱし・・・なんでもありませ~ん!!」


もうダッシュでリザードから距離をとる。


リザードは追っては来てなかったが、奇妙な鳴き声をだした。




はい回想終了。


どうやらあの鳴き声は仲間を呼んでいたらしい。


そのせいで、散らばっていたリザード全員が集まって俺は見事に取り囲まれてしまった。


逃げようにも建物の中に入ってしまって逃げれる所はなし。


さらにこの建物は今にも倒壊しそうな状態だ。


・・・これが全員美女だったらどんなに嬉しいことだったか。


実はこんもトカゲは着ぐるみで中には美女が・・・。


「フシュルルル」


舌をチョロチョロだしながらギョロっとした目で見つめる。


こんなのに美女がいるはずもないな。


ここは素直に諦めるとするか。


俺は目を瞑って死後の世界を待つことにした。


・・・。


・・・・・・。


・・・・・・・・・あれ?


幾ら待っても来ないな。


目を開けてみると


「・・・・・・マジ?」


俺以外全員が上から落ちてきた物の下敷きになっていた。


「ふっふっふ。計画通り」


そう。すべてはこの時の為の布石だ。


トカゲが仲間を呼ぶことを想定してこの建物に入り一網打尽にすることを。


「フフフ・・・フハハ・・・ア~ハッハッハ・・・ゲホゴホ!!」


冗談はさておいてマジでここから出ないと俺も死んでしまう。


俺はよろめきながらも脱出することができた。


「大丈夫か?」


外に出た途端誰かに声をかけられた。


「あ~大丈夫っす」


「そうか。モンスターの襲撃との報告があったから急いで駆けつけたがモンスターはどこに・・・」


「それなら全員この建物下敷きになってるよ」


「本当か?」


「ああ。俺がやったからな」


「所で君は見かけない服装だが、どこの国から来た?」


「そりゃあ・・・」


ここで親父がいる国から来たと言ったら俺が敵だとばれてしまうな。


せっかく助かった命を無駄にしてしまう。


ここは機転を利かせて。


「・・・空から」


と言って指を上に向けた。


「・・・・・・」


めっちゃ怪しまれてる。


そしてそんなに近寄らないで下さい。唇と唇が・・・。


「・・・・・・ふむ」


・・・・・・ッホ。


俺の初接吻は免れた。


「この馬車に乗ってくれ」


「へ?」


そう言って男は一瞬で俺を拘束し、片手で軽々と俺を馬車の荷台に放り込んだ。


「では、出発」


荷台の馬に乗って手綱を引き男は出発した。


「え、ちょあの!どこに行くの」


「・・・・・・」


「返事くらいしてくれ!!」


「・・・・・・安心しろ悪いようにはしない」


そのセリフは間違いなくアウトだ。


親父・・・母さん・・・俺、売り飛ばされます。



楽しんでもらえれば幸いです。

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