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異桜記~異郷に残す桜の道~  作者: 森音
第零章~物語の始まり~
3/5

桜の加護

 和尊達が魔法陣に巻き込まれのと同時刻。人々の思いもつかぬ場所で静かに歯車が動き始めた。


 ローマ建築に近い建築法を用いて建てられたと思われる建物が立ち並ぶ通りの奥に一際目立つ白く大きい神殿が存在した。


 白い神殿。そこに出入りする者たちには皆、普通の人間とは違うのが見て分かる。彼らの背中には白く輝く翼があった。


 人とは違う容姿を持つ者達によって此処が人の住まう世界では無いと教えてくる。


 では、何処なのか?天界と呼ばれる世界の理を守る世界の一つ。天国かと問われれば違う。ここは神々の生活圏かつ職場である。似たように冥府と呼ばれる場所も存在するわけだが、そこも天界と同じ役割を果たしている。


 天国と地獄は存在するのか?と天界も冥府も知らぬ人々は日々討論を繰り広げている。彼らの討論の結論を述べると存在する。天国と地獄の意味を説明…いや、此処では止めておこう。時が来ればいずれ分かるだろう。


 そんな、天界の中心に存在する神殿の奥に在る執務室。執務室では書類と睨めっこしていた椅子に座る青年はふと書類から目を離し上を見る。すると、窓も開けていないのに桜の花弁が執務室内に舞い込んできた。


「……桜?」


 この天界に桜は存在していない。咲いているのは譲られた桜を除けば日本ともう一カ所のみ。


 桜の花弁が見えた。イヤな予感がする。その反面、好奇心がとある書類の事を思い出させる。地球から異世界へ召喚される桜の名を冠する加護を授かった青年の事を。


「ウーラノス様?」


「…ミカエル、この青年を応接室に連れて来てくれるかい?」


 ウーラノスと呼ばれた青年がミカエルと呼んだ女性に何時の間にか持っていた書類を渡した。受け取ったミカエルは書類を捲り内容を読んでいるとある項目で止まった。


「これは…!」


「彼の力は日本の神々に祝福された大和の贈り物だよ」


 ミカエルは一回頷き執務室から出て行った。


 その書類の項目には、日本神話系加護【桜】と表記されていた。【桜】は日本の八百万の神々が大和の心とする桜を加護の象徴としている。この【桜】は日本が生まれて以来誰一人加護を受けたことが無い。

【菊】は神武天皇が加護を受け日本を平定した。【菊】は国を治め、【桜】は人々の心に和を与える、と日本神話系体外から言われるほどに人々の心を動かすほどの力があるのだ。そして、加護を与えるにしても八百万の神々から認められなければならない。


「ウーラノスよ。我らの子に何をしようと言うのです?」


 突然、聞こえてきた女性の声にビクッとする青年。青年は度を失ったみたいに声が上擦っていた。


「か、神産巣日神(かみむすひのかみ)さん。いえ…【桜】の加護を与えられた青年を一目見たくて…」


 青年の名は【ウーラノス】。彼はギリシア神話に登場する天空神であり全宇宙を最初に統べた神々の王とされる。天界は主に欧州や其々の世界で信仰されている神々や天使などが住まう場所である。


 しかし、天界とは別の場所で独自の神話系体のみで構成される例もある。良い例が、日本神話系体だ。日本の八百万の神々は【高天原】と呼ばれる如何にも日本と言わんばかりの建築物や植物、動物が存在する世界で悠久の時を過ごし、善悪が共存する世界。


【高天原】にはその地を治める五柱の神が居る。治めている五柱の一人が神産巣日神だ。五柱には性別など有って無いような存在を独神と言うのだが、今は女性の姿をしてウーラノスの前に現れていた。


「和尊を一目みたいとは……まぁ良いでしょう」


 神産巣日神は渋々と言った感じで了承し、対するウーラノスのはホッと安堵していた。日本神話系体は普段、穏やかで日本を見守るだけで、他の神話のように何処かと敵対する訳でもない神々なのだが一度怒ると天変地異が起きる程で、敵対した勢力は跡形もなく消されることがある。それ故に、此処で神産巣日神の機嫌を損ねると非常に不味い状況になるのだ。しかも、【桜】の加護を受けた者なら尚更の事。


「あ、ありがとう御座います」


 ウーラノスはこれで終わると思っていたら神産巣日神の一言で顔が蒼白になった。


「だけど、妾も同行させていただくけど文句は無いわよね?」


「も、勿論です」


 彼に拒否権など皆無に等しかった。天界の長である神王の威厳はどこかに消え去り、まるで母親に怒られている子供のようだった。

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