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異桜記~異郷に残す桜の道~  作者: 森音
第零章~物語の始まり~
1/5

喚ばれる者

 平行世界(パラレルワールド)。それは、ある分岐点から枝分かれを繰り返し無限に広がる世界。


 簡単に言ってしまえば「もし、あの時」と思う世界が無限にあると云うこと。


 無限にある世界。そこに住む住人は他の世界に気付かず一生を終える。


 いや、知っている方が可笑しいと言えるだろう。何故なら、平行世界は次元と呼ばれる壁で遮られ世界同士の接触は無に等しいからだ。故に自分たちの居る世界とは別の世界が存在する事を知っている住人はほんの一握りしかいない。


 その一握りの者は【()()】と呼ばれていた。


 そして、勇者達の中の極僅(ごくわず)かから、更に【()()】と呼ばれる者達が居た。


 彼らは元々、別の世界に住まう住人だったがもう一つの世界に()ばれ、喚ばれた世界に骨を埋めて逝った。


 喚ぶ世界に共通するのは【魔法】と呼ばれる不思議な力が存在する事だ。対して、喚ばれる世界の住人は無差別に喚ばれた。


 ~天界図書塔 第三級書物【平行世界ノ理】5(ページ)


【英雄】と呼ばれた数人の勇者たちの中に一人、特殊な英雄が居た。その人物は【桜】を心から愛し武器とした。人々からは【蒼桜(そうおう)の奏演者】と呼ばれ慕われ、敵からは【桜の武奏者(ぶそうしゃ)】と呼ばれ畏れられた。


 そして、その人物は【天桜國咲神(あめのさくらくにさき)】と桜を司る神となった。


 ~天界図書館 第一級書物【天桜國咲神】要約~


 その人物の名は【桜城(さくらぎ) 和尊(かずたか)】。


 桜を愛した男の摩訶不思議な体験記である。


………

……


 暑さが残る九月上旬。とある日本屋敷の一室で怪しい研究をしている青年が居た。


「もう少しで私の夢が実現する」


 その青年の年齢は20歳前後だろうか、ただ、纏う雰囲気は同年代よりも落ち着いた印象を与えそうだ。


「おはよう、(かず)。そろそろ、大学に行くぞ?」


 青年の名は【桜城 和尊】年齢は21歳。【積み木から宇宙開発なんでも御座れ】をモットーにする世界有数の企業【駿河重工業】の会長を若くして務める人物だ。


「優希…そうか、もう朝なのか」


「お前、また徹夜したのか?おばさん、心配してるぞ?」


「お前にも心配をかけさせて済まない。母さんには後で話をするよ」


「そうしろよ?」


 二人は、他愛の無い話をしながら学校へと歩いていった。靈歌と一緒に居る青年の名は【三笠(みかさ) 優希(ゆうき)】と言い、家が隣同士とテンプレな幼馴染関係で二人は何時も一緒に行動を共にしている。


「二泊三日、何処で釣行するよ?」


「ん?…あぁ、この時期じゃまだサビキや五目もやれるだろうし、堤防で構わないだろう?」


「そうだな。車は頼んで良いか?」


「問題ない。車は何時もので良いだろう?そうそう、お前を誘おうか迷っていてな伝えなかったが、今夜、夜釣りに行こうかと考えているんだがどうだ?行くなら、今日は車で乗っけて行くが?」


「水くせぇな。誘ってくれたら喜んで行くのによ。勿論、同行させて頂くよ。道具、持ってくるから家の前で待っててくれ」


「そうだったな。行くと決まれば話は早い、早く走って支度してこい」


「あいよ」


 そう和尊に言われ、玄関から慌てるように出て行き、それを見送った彼は愛車を取りにガレージへと向かった。


………

……


 和尊はガレージから愛車を出し、優希の家の前で待っていた。


「今回はエギングとぶっこみをやるよ」


「ロッドホルダーは余裕あるだろう?そこに掛けてくれ。クーラーボックスやバッカンとかは後ろに積んでくれ。イソメや切り身は私が既に準備してあるからエサの事は気にしなくて良いぞ」


「了解だ」


二人で優希の道具を積んでいるところにある人物がやって来た。


「おはよう!」


「「………」」


 その人物の名は【嘉神(かがみ) 誠也(せいや)】。和尊たちと同じ大学に通う男だ。この男を一言で表すと【苦労者】が当てはまる。二次小説の勇者召喚に出てくる反吐の出るような勇者と同じ性格では無いのだが俺が提案し悪ノリで蓮が行動に移した結果、周りには五月蝿い女どもが居る。


「ちょっとぉ!誠也が挨拶したんだから返事しなさいよぉ!」


「そうですわ!貴方達の父親の職場を潰してやりますわよ!?」


「そういう態度は宜しくない無いんじゃないかな?」


 ギャーギャーと騒ぎ立てるのが五人が常に周りにいることから交流関係が少なく見えるがその逆で友好関係はかなり広く皆から頼りにされる一面もある。


 一人日本有数の大企業の令嬢が居るが、和尊率いる駿河重工はその上を行く企業であり逆に吸収合併も出来るが、普段は普通の大学生として生活をしている為、大企業の会長という事実は親しい者以外は知らない。


 そんな、五月蝿い連中をスルーし登校。何事もなく一日を終えた放課後。


「和、行こうぜ?お、雪菜(ゆきな)も居たのか。お前も一緒に行くのか?」


「居たのかって優希、酷くない!?ねぇ、かずちゃん、優希に一言言ってよ」


「優希、雪を弄るのは程々にな。お前が弄りすぎると私にも被害が出る。雪は行かないよ」


「何々~?また、お魚釣りに行くの?」


 和尊と一緒に居たのは【白凪(しらなぎ) 雪菜(ゆきな)】と言い、彼の彼女だ。和尊と優希は別々の学部で時間が合わない事もあり其々の時間で帰ることが多いが、今日は優希が和尊に待っていて欲しいと頼み込んでいた。


「悪ぃ悪ぃ。話かなり変わるんだけどさ、和が研究している桜は何処まで進んだんだ?朝、覗いたけどさっぱり分からんくてな」


「御蔭様で後少しだよ」


 彼がしている研究。それは、誰も作ったことのない一年中花を咲かせる桜を作る事。


「よくもまぁ頑張ったな。小5からだったけか?研究を始めたの」


「あぁ、去年やっと庭に植えて経過観察しているが、一年中咲かせると言うことは物凄い大変な作業だよ」


 和尊が研究を始めたのは小学五年生。物心がついた時から桜に惹かれ小5の夏休みを機に研究を始め高校一年生の時に試験段階であるが開発に成功し今は増やす実験をしている。


「私も桜見たい!」


「見せてやりたいのは山々なんだがなぁ。もう少し待ってほしいな。完成させたのを最初に見せてやるから」


 彼女である雪菜の頭を軽く撫でながらそう微笑んだ。


「さて、優希が来たことだし帰るか。車を正門前に回すから二人は先に待っていてくれ」


「うん。優希、行こう」


「そうだな」


 二人が正門に向かったと同時に和尊も車を取りに駐車場へ向かった。


………

……


「あっ!きた!」


 正門に車を回すとそこには優希と雪菜、そして誠也の三人が立っていた。


「どうしたんだ。私たちに何か用か?」


 三人を代表して和尊がそう問うと嘉神は嬉しさと楽しみを混じった顔でこう言った。


「別に用は無いけど、一緒に帰りたいなって思ってね」


「構わんよ。雪は助手席、お前らは後ろに乗ってくれ」


 和尊以外の二人の共通認識は一度決めたら曲げない頑固でウザったい奴、彼の認識は明るく気さくで優しい奴と二つに挟まれた哀れな好青年。


「やったぁ!久しぶりだね~そう思わない、白凪さん?」


 乗り込んだ誠也は嬉しそうにしている。車内をクルクル見渡している。


「…そう言えば、何時もの取り巻き達は如何したんだ?」


 朝も居た嘉神ラバーズが居ない為、和尊は確認の意を籠めてそう聞いた。


「今日は、皆用事があるんだってさ。それはそうとさ、今夜、釣りに行くの?」


「そうだよ。そうでなければ、車では来ないよ」


 用事がある。その一言だけで和尊と優希の頭の中に一抹の不安が過ぎった。二人の暇つぶしとなっている携帯小説で良く登場する勇者召喚に似たような状況になっていた為だ。


 そしてこの後、二人は行動に移さなかった自分達に後悔する事になる。コンビニで食料や飲み物を購入し終え、二人を送っていこうとエンジンを掛けた瞬間、車体の下に魔法陣が展開されるなど思いもしなかったのだから…。

初めまして、森音(読みは「もりと」)と申します。


なろうでの執筆は初めてなので、至らない所があるとは思いますが温かい眼で見守ってくださると嬉しいです。

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