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暗血の闇  作者: 黄昏
6/7

第5話

今回は、少し長く書いてみました。前の話では、誤字が、あったみたいです。スミマセン

俺と薙咲と幸土さんは、買い物に出かけた。

俺は薙咲達が何を買うのかは知らないが。

まぁ、薙咲に、もしもの事が、あったら大変だから、ついていった。



すこし歩くと市街地に着いた。

殺人犯が近くに居るかもしれないのに、街には、たくさんの人がいる。

皆、自分は殺人犯に襲われるかもしれないと思ってないのだろうか?


まぁ、俺も、こうして薙咲達と一緒に買い物しに来てるのだから、一緒なんだけどな。

だいたい、近くに殺人犯が居ると言われても実感が湧かない。

実際殺人現場を見たなら別だけど。



街を見渡すと、いろんな物が目に映る。

開店の準備をしている店。

オバサン達が何やら話ながら楽しそうに笑っている。

いつもと何も変わらない街。

平和な街。


本当に、この街で殺人事件が起こったのか疑いたくなる。



俺は薙咲達の、すこし後を歩きながら、街の風景を楽しんでいた。


すると一際目立つ物を見つけた。



街路樹の隅に座ってる女の人。

制服を着ている。俺達と同じ学校の様だ。

しかも特待生…。



俺達の学校には、特待クラスと言って、推薦で入学した奴等専用のクラスがある。

特待生は、普通の奴と違ってすぐ分かる。

襟の色が違うからな。



俺が、なぜ、その女の子に目が行ったかと言うと、その子は、特待生らしからぬ格好をしていたからだ。



茶髪。いや、あれは茶髪じゃないな。赤いし。

それにピアスをしている。


ちょっと危ない人といった雰囲気を漂わせている。




薙咲達は気付いていないのか、その子のすぐ隣を通って行ってしまった。




勇気あるな。薙咲のヤツ。



俺は、目を合わさないように、その子の隣を通り過ぎた。

そのまま少し歩いて、後ろを振り替えってみた。




……。目が合った。

思いっきり俺を見てる。




その瞬間、嫌な予感がした。

予感と言う物は、当たってほしくない時ほど、よく当たる。

そう思うのは、俺だけかもしれないが。




そして嫌な予感が的中した。

女の子は、立ち上がると俺の方に向かって歩いてきた。

無意識に、早足しなっていた。

後ろを振り返りながら歩いていたせいか、薙咲達の、すぐ後ろまで追い付いていたのに気付かなかった。



後ろを振り替えると、その子は、やっぱり俺の方を見て歩み寄ってくる。




ヤバい。俺、なんかしたか?ジロジロ見てたからか?




「薙咲、俺ちょっと用事あるから」


「えっ?ちょっとお兄ちゃん!」




薙咲は、いきなり走りだした俺に驚いている様子だ。


しかし、こうなっては、もう止まる事は出来ない。


俺が走りだすと、その子も、走りだしたのだから。


全速力で走っているが、いつまで体力が保つかが問題だ。

そもそも、俺は、体力には自信がない。

しかし女の子の体力には、負けないだろう。




何分走っただろうか?

いつのまにか、町外れの裏路地まで来てしまった。

結構な距離走ったと思う。

横腹が痛い。運動不足のせいか?



さすがに、もう付いてこないだろう。

俺は深呼吸して、息のリズムを整えていた。




「おい、お前、何逃げてんだ?」

突然声を掛けられ、また呼吸のリズムが崩れてしまった。

そのせいか、声を出すことが出来なかった。



その女の子は、汗1つかいてなく、息切れもしていなかった。




女の子は、俺を睨むと、俺の腹部を殴った。



「ゲホッゲホッ……」



女の子の拳は、見事に俺のミゾオチにヒットした。



女の子は、地面にうずくまっている俺を、しばらく見ていた。




ようやく立ち上がった俺を見て、女の子は、鼻で笑った。

なぜ鼻で笑ったのかは、分からないが、それより気になったのは、この女の子の目的が分からない事だ。


殴るだけじゃ足らないのか?

だいたい、なぜ俺が殴られる必要があるんだ?




「お前、名前は?」


女の子が口を開いたかと思うと、意外な言葉が出てきた。

なぜ俺の名前を聞く?

俺を殴っといて、なんなんだコイツは?




「名前を聞いているんだ。それとも、お前は、自分の名前が言えないのか?」


女の子は、俺を馬鹿にした様に、尋ねてくる。




「いきなり殴っといて、お前なんなんだよ」



女の子は、ため息を付くとこう答えた。




「お前は、人の話を聞いてるのか?名前を尋ねてるんだ。名前を」




「チサメ。高度 チサメ」


「チサメ?女みたいな名前だな」

女の子は、俺の名前を聞いて、また鼻で笑った。



さすがに、名前を馬鹿にされると、腹が立つ。




「余計なお世話だ!だいたい人の名前聞く前に、自分が名乗るのが礼儀だろ!」


「礼儀か?…。そうだな。俺の名前は、神宮 神楽(ジングウ カグラ)だ」


「俺?今、自分の事『俺』って言った?まさかね、女の子が『俺』なんて使わないよな」

俺は、ムカついていたので、神宮と名乗った女の子に鼻で笑いながら、嫌味たっぷりに言った。




「女が『俺』って言っちゃいけないのか?誰が決めたんだよ?総理大臣か?政府か?あ?どうなんだ?答えろよ」


女の子は俺の服を掴むと壁に押しつけた。


恐…。その顔で凄むなよ。

神宮さんは、眼鏡をかけていて、その眼鏡が一層恐さを引き立てている。



「冗談です。ごめんなさい」



「……。まぁいい」

そう言って女の子は、俺を放した。



殴られるかと思った…。



「それとな、チサメ、そんなにビビるなよ。兄がそんなんだど妹を守れないぞ」


なんで呼び捨てなんだ?

てか何で妹がいるって知ってるんだ?



「なぁ、神宮さん、なんで妹がいるって知ってるんだ?」


「チサメが逃げてる時、お兄ちゃんって言ってる女の子がいたじゃないか」


「あぁ、そっか。……って薙咲ほったらかしじゃん!」


「あっ!ちょっとまて!」

走り去ろうとした俺の腕を神宮さんは、掴んだが、そのまま引っ張られて、転んでしまった。




「あっ、大丈夫か!?」


俺は、神宮さんが転んだ弾みで、飛んだ眼鏡を拾うと、神宮さんの手を掴んで、起き上がらせた。



「ごめん。はい、眼鏡。怪我してないか?」


「大丈夫。ありがと」

そう言って神宮さんは、顔を上げた




「ん?………………アハハハハハッ!」


「な!?なに笑ってんだ!?」



神宮さんは、眼鏡を外すとかなり、童顔だった。

俺は、今までのギャップの違いに、おもわず笑ってしまった。




「ねぇ、もしかして、この眼鏡って、その顔隠す為にかけてんの?」


「あっ!眼鏡返せ!」


「いやだね。俺を殴った仕返しだ」

俺は、眼鏡を高く上げて、神宮さんに届かないようにした。

背が、あまり高くない、神宮さんは、今見ると、中学生くらいに見えてしまう。




「馬鹿!早く返せ!」




さっきとは、うって変わった姿で、眼鏡を取ろうと必死になる神宮さんの姿が、たまらなく面白い。

俺は、調子にのって、さらに眼鏡を高く上げた。




が、その瞬間、ミゾオチに拳がめり込んだ。




「グッ…。またミゾオチ殴りやがった…」


「うるさい。さっさと返さないからだ」

神宮さんは、俺から、眼鏡を奪い取ると、レンズをハンカチで拭いてから、眼鏡を掛けた。




神宮さんは、気を取り直したかの様に小さく咳をすると、俺に話し掛けてきた。



「だいたいチサメ、遊んでる場合じゃないんじゃないのか?」


「ん?なんで?」

俺は、2度もミゾオチにパンチをくらった痛みを堪えて立ち上がった。




「妹はどうするんだ?」


「あっ!忘れてた!」


「忘れんなよ」


「じゃあ、俺もう行くから」


「あぁ、また何処かで会ったら、声かけてな」


「あぁ、じゃあな」

俺は、そう言って神宮さんと別れた。



俺は薙咲達の居るところに向かう途中、ふ、と思った。

なんで神宮さんと仲良くなってんだ?

神宮さんは、俺を殴ったんだぞ?

まぁ、悪い人じゃないみたいだけど。




すこし走ると、ちらほら人の姿が見えてきた。

ところで薙咲達は、何処にいるんだろうか?

俺が、薙咲達と別れた所には、居なかった。

近くの店を探してみたが、どこにもいない。

こんな時に、携帯を持っていれば、いいのだが、どうも俺は携帯を持つのが嫌いだ。

薙咲に携帯を持つように奨められた時に買っとけばよかった。



俺は街路樹の木陰で休むことにした。

家に帰る時にココを通るから、いずれ薙咲達は来るだろう。


俺は、空を見上げた。

雲一つ無い。青い空が、どこまでも続いている。

なにもかも忘れてしまいそうだ。






「お兄ちゃん!早く来て!千草ちゃんが!千草ちゃんが…」



突然、薙咲の声が聞え、薙咲が俺の腕を引っ張っている。

半泣きになって俺を必死にどこかに連れて行こうとする。




「おい、引っ張るなって。どうしたんだ?」


「千草ちゃんが…」


薙咲の眼からは、涙が流れてきた。

たぶん幸土さんに何か起こったのだろう。


さらに、俺の腕を引っ張る薙咲に着いていくと、街中から少し離れた、公園に着いた。

公園には、服やアクセサリーが散乱していた。

薙咲達が買った物だろうか?



公園を見渡すと、人気のない、その公園の中心あたりに、人が倒れてる姿があった。


俺は、その人に駆け寄った。

…幸土さんだ。

体中から血を流し、服は真っ赤に染まっていた。

呆然と立ちすくむ俺の隣では、薙咲が泣いている。


「幸土さん!」

俺は、幸土さんの体を抱き起こした。

手には、生暖かい血の感触が広がる。

すると同時に、体中が熱くなるのを感じた。


気持ち悪い感覚だ…。

なんなんだ。この感覚は。



今は、そんな事考えてる場合じゃない。

幸土さんが心配だ。

急いで病院に連れて行かなければ。



俺は、幸土さんを抱きかかえ、病院に向かった。

俺の服に、幸土さんの血が付いた。

また体中が熱くなり、気分が悪くなる。




「…ん」




幸土さんの眼が開いた。

その眼は、冷たい眼をしていた。


「幸土さん!」


「千草ちゃん!」




薙咲は、幸土さんを抱えた俺に駆け寄って、幸土さんの顔を覗き込んでいる。




「…私は、大丈夫だから」


「そんなに血が出てるのに、大丈夫なわけないじゃん!お兄ちゃん、早く病院に行かなきゃ!」


「…本当に大丈夫」

そう言って幸土さんは、服を捲って見せた。



「傷がない…」

幸土さんの倒れていた場所には、たくさんの血が流れていたのに…。




「…これが私の力みたい」


力?……昨日の夜、幸土さんが話ていた事か?

と言う事は、幸土さんは、目覚めているのだろうか?

そう言えば、幸土さんが眼を開けた時、いつもの眼じゃなかった。

でも幸土さんが無事で良かった。本当に良かった…。




俺は、幸土さんが無事と分かり、自然に涙が流れてきた。

涙は、抱えたままの幸土さんの頬に流れ落ちた。




「ちょ、お兄ちゃん、何泣いてんのよ」

薙咲は、涙を拭きながら、笑っている。

薙咲も安心したのだろう。







幸土さんの顔を見ると、俺の顔を見ている。



「ん?どうかした?」


「…別に。それより早く降ろして。さっきからアンタの涙が、うっとおしいのよ」


「あ、ごめん」

俺は、幸土さんを降ろした。

俺の服は、幸土さんの血で真っ赤に染まっている。




「……。その服……ごめんね。私のせいで」


「ん?気にしなくていいよ」


「本当に?ありがと」

そう言うと、幸土さんは、ニコッと笑った。

初めて俺に向かって笑ってくれた幸土さんに釣られて、俺も自然と、顔に笑みが浮かんだ。

薙咲も嬉しそうに笑っている。




「そうだ、どうしよう。服とか土で、汚れちゃったよ」

薙咲は、服を拾って土を落としている。




「洗濯すれば大丈夫だろ」



幸土さんも薙咲を手伝って、服を拾っている。




服を全て拾うと、薙咲は、パンパン、と手を叩き、手に付いた土を取ると、こう言った。


「そろそろ帰ろっか?」


「そうだな」


それに伴い、幸土さんも小さく頷いた。


幸土さんは、服を買い物袋に入れて立ち上がった。

すると、そのままフラフラと倒れてしまった。



「千草ちゃん!大丈夫!?」


「…うん。ちょっと目眩がしただけだから」


「お兄ちゃん、千草ちゃんを、おんぶしてあげて」


「なんで!?」


「だって、千草ちゃんフラフラじゃん」


「…大丈夫だよ。1人で歩けるから」

そう言って幸土さんは、立ち上がろうとしている。




「………。わかったよ」

そう言って俺は幸土さんの前に屈むと、おぶさるように言った。




「……ありがと」


幸土さんは、素直に俺に、おぶさってきた。




「お兄ちゃん、優しいとこあるじゃん♪」

薙咲は、クスクスと笑っている。



俺は、どことなく、それが恥ずかしかった。




「よーし♪じゃあ、帰ろう♪」


「そうだな」






帰る途中、俺は、大事な事を忘れていた。


だれが幸土さんに、あんな事したか。

聞くのを忘れていた。


あとで聞いてみるか。







家に着くと、俺は、幸土さんをリビングのソファーに寝かせた。




「……ありがと」


幸土さんが、小さな声で、そう言った。




「じゃあ、お兄ちゃんは、外に出て♪千草ちゃん着替えさせるから♪ついでに昼ご飯も作るから、待っててねぇ♪」


「あぁ、じゃあ、終わったら呼んでくれ」


俺は、そう言って自分の部屋に戻った。




しかし、誰があんな事したんだ?

……もしかして、今朝のニュースで言ってた、殺人犯か?

そうだとしたら、かなり恐いな。

こんなにも近くに居るなんて。

まぁ、幸土さんに聞いてみれば解るか。




俺は、敷きっぱなしの布団に寝転がると、窓から見える青い空を、ぼぉっと見つめていた。






「お兄ちゃーん」

突然、薙咲が部屋のドアを開けた。

ニコニコ笑っている。

何か嬉しい事でも、あったのだろうか?




「飯できたのか?早いな」



薙咲は、ドアの前に立ち、何かを企んでいるように、ニヤけている。




「見て♪お兄ちゃん♪」


「ちょ、薙咲ちゃん!」




ドアの奧から、幸土さんが、薙咲に引っ張られてきた。




「可愛いでしょ♪今日買ってきた服に、汚れてないヤツがあったの♪だから千草ちゃんに着替えるついでに着てもらったの♪」


「ちょっと薙咲ちゃん…」



幸土さんは、よく街で見かける女子高生みたいな格好をしている。

服に詳しくない俺は、幸土さんの着ている服の名前が解らない。

スカートは、ミニスカートだ。




「千草ちゃんって、こんな服着るの初めてなんだってぇ♪今時珍しいよね♪」


「薙咲ちゃん、恥ずかしいよ…」



幸土さんは、顔を真っ赤にして俯いている。




たしかに、幸土さんが、こんな服を着たのを見るのは、初めてだ。

いつもは、制服か、トレーナーだもんな。

いつも薙咲が着ているような服でも、幸土さんが着ると、一段と新鮮に見える。





「どお?似合ってるでしょ?」

薙咲が、幸土さんの俯いた顔を上げながら言った。

顔を上げた幸土さんは、真っ赤になっている。

今まで俯いていて気付かなかったが、少し化粧もしているみたいだ。




「うん。かなり似合ってる。可愛いよ。幸土さん」

俺の一言に、幸土さんの顔が、さらに赤くなった。




「薙咲ちゃん、もういいでしょ。ね?行こ」


「あっ、ちょっと千草ちゃん」


幸土さんは、薙咲の腕を引っ張って行ってしまった。




「あっ!おい、薙咲、飯は!?」


「今から作る〜」



まだ作ってなかったのか…。

腹減ったなぁ。



それにしても、幸土さん可愛かったなぁ。

いつも、あんな格好してればいいのに。




そう言えば葉月のヤツから連絡ないな。

学校が休みの日は、必ず電話してくるのに。

……まぁ、いいか。アイツが来ると、うるさいし。






「お兄ちゃーん。ご飯できたよー」



おっ、もう、できたのか。早いな。



俺は、部屋を出ると、リビングに向かった。

リビングには、薙咲と幸土さんがテーブルを囲んで座っている。

テーブルの上には、カレーライスとサラダが並んでいる。




「これってレトルト?」


「うん♪作るの、めんどくさかったから♪」



レトルトか。

まぁ、いいか。


俺は、自分の席に着いた。



「あ、幸土さん着替えちゃったの?」


「うん。恥ずかしいから嫌だって言うんだよ。可愛かったのにねぇ♪」


「………」


幸土さんは、また俯いてしまった。




「まぁ、幸土さんが、嫌がってるから、仕方ないよ。それじゃあ、いただきまーす」


「いただきまーす♪」

俺に、続けて薙咲も言った。

幸土さんは、小さく手を合わせている。






カレーライスとサラダの組み合わせ。

うん。健康的だな。

……って、今日の事聞かなくちゃ。




「聞いてなかったけどさ、幸土さん、誰があんな事したか覚えてる?」


「うん…。」




おぉ!幸土さんが、俺を無視しなかった!

……続きを聞かなくちゃ。




「話してくれる?覚えている事だけでいいから」


「うん…。チサメ君と別れてから、私達買い物しに行ったの」



おぉ!初めて名前呼んでくれた!

チサメ君か…。

なんだか恥ずかしいな。




「それでね、買い物が終わって、チサメ君が居ないから、近くの公園に行ったの」


幸土さんが、倒れていた公園か。



「それで、薙咲ちゃんは、公園のトイレ行ったの。そしたら急に、女の子が、『みつけた』って言って、襲ってきたの」



みつけた?どこかで聞いたことあるな。



「幸土さん、その女の子って見たことある人?」


「えっ!?えっと、見たこと無いよ…。フード被ってて顔よく見えなかったし!」



ん?なんで慌ててるんだ?



「はい、止め!こんな話やめよ♪千草ちゃんも無事だったんだし♪」


「そうだな」


どうせ聞いても解らないし。

この話は、やめるか。




「それより千草ちゃん♪ご飯食べおわったら…♪」


薙咲は、いつもの様に、何か企んだように笑っている。



「え、薙咲ちゃん、辞めようよ…」


「ダーメ♪約束したでしょ♪」




ん?なんの話だ?




そんな話をしている間に、俺は、カレーライスと、サラダを完食した。

薙咲と幸土さんも、食べおわったみたいだ。




「はーい♪お兄ちゃんは、ちょっと出てて♪」


薙咲は、俺の背中を押し、リビングから追い出した。


何をする気だ?






「ちょっと薙咲ちゃん!待って!」


「いいから♪早く♪」


「ちょ、いやだ〜」


「いいから♪いいから♪」




リビングの中では、何やら騒いでいる。


相変わらず楽しそうだな。




「お兄ちゃーん、入ってきてぇ♪」


「薙咲ちゃん、ちょっと待って!」


「お兄ちゃん♪早く早く♪」



俺は、戸惑いながらも、リビングのドアを開けた。




「じゃーん♪」


リビングのドアを開けると、そこには、薙咲と幸土さんが、並んで立っている。




「どお?可愛いでしょ♪」

そう言った薙咲の服は、新しく買ったものだろうか?

見たことの無い服だったが、いつも着ている服と対して変わらない。



幸土さんは、ダボダボの服を着ている。

B系ってヤツか?

よく解らんが可愛いな。




「千草ちゃんの服、私が選んであげたんだよ♪」


「薙咲ちゃん…。私こんな服似合わないよ…」


幸土さんは、恥ずかしそうに、ダボダボの服で顔隠している。

初めて会った時は、あんなに冷酷そうな人だったのに、幸土さんも、普通の子と変わらないんだな。




「幸土さん、可愛いよ。似合ってる」

俺が、そう言うと、幸土さんは、顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに、顔を手で覆いながら、指の隙間から俺を見ている。




「ねぇねぇ♪お兄ちゃん♪私も可愛いでしょ♪」


薙咲は、あからさまに可愛いと言ってほしい様な仕草で、俺に、話し掛けてくる。



「いつも着ている服と、変わらないじゃん」


「な!?全然一緒じゃないじゃん!ほら!こことか、可愛いロゴ付いてるし、このスカートだってラメが入ってるんだよ!」

薙咲は、俺に、どこがどう違うかを、詳しく説明する。

まぁ説明されても、解らんがな。

ラメって何だよ。ラメって。




「はいはい、解ったよ。あんまり金の無駄遣いするなよ」


「全然解ってないじゃん!なんでそんなに千草ちゃんの時と態度が違うの〜」


薙咲は、わがままを言う子供みたいに俺に、しがみ付いてくる。






「解った!お兄ちゃん、千草ちゃんが好きだから、ヒイキするんでしょ!」


「…いきなり何言ってんだ?」


こんな場合、普通の奴は、慌てて否定するが、俺は、そんな事しない。

逆に疑われるだけだからな。




「千草ちゃ〜ん、お兄ちゃんが好きだってぇ〜。ど〜する〜?」


薙咲は、幸土さんに、抱きつきながら、ちゃかす様に、言っている。


…ガキか?幼稚だな。

幸土さんだって、相手にしてな……




ふ、と幸土さんを見ると顔を真っ赤にして、眼には、涙が溜まっていた。



…えっ!?何!?なんで泣きそうなの!?




「千草ちゃ〜ん、お兄ちゃんと付き合っちゃえば〜?」


「………」


幸土さんは、抱きついていた、薙咲を振りはらうと、そのまま、家を飛び出して言ってしまった。


「痛っ!………鼻打った〜」


全体重を幸土さんに、掛けていた薙咲は、突然振りはらわれ、そのまま、床に倒れこんでしまった。

その拍子に、鼻を打ったみたいだ。




「おい!幸土さん、出ていっちゃったぞ!」


「鼻が痛い〜」


「捜しにいかないと!」


「ねぇ〜鼻血でてない〜?」




………。話にならん。




「薙咲、ふざけてないで、幸土さん捜しに行くぞ」


「はいはい。でも何で出ていったんだろーね?」


「薙咲が、ちゃかすからだろ」


「まさか、本当に、お兄ちゃんの事が好きだったりして」


「な!?そんな事あるわけないだろ!」


「あれ?お兄ちゃん、何慌ててんの?もしかして、お兄ちゃんも、万更じゃなかったりして〜」


「う、うるさい!早く行くぞ!」


「はいはい」




…まさかな。幸土さんが、俺を好きなんて。

あんなに、俺を嫌ってたんだぞ?

ありえないだろ。




すぐに、幸土さんの後を追って、家を出たが、幸土さんの姿は、なかった。




「千草ちゃん、どこ行っちゃったのかなぁ?」


「俺は、学校の方捜すから、薙咲は、街の方捜してくれ」


「うん、わかった。」






俺は、薙咲と別れて、学校のある、住宅街の方に向かった。




昼過ぎとはいえ、11月の風は、少し寒さを感じる。

学校へ向かう途中、誰1人、人の姿が見えなかった。

寒いからかな?

それとも、殺人犯のせいかな?




………殺人犯!?

忘れてた!



俺は、殺人犯の存在を思い出したとたん、物凄く不安になった。

こんな、誰もいない時に、殺人犯に幸土さんが、襲われたらどうする?

早く見つけないと。




俺は、学校に着いた。

しかし、校門は、閉まっていて、中には、入れない。

わざわざ校門を乗り越えて中に入るとは、考えにくい。

他を捜すか。


いったい、どこにいるんだ?



そうだ!薙咲が見つけたかもしれない。

電話してみるか。


俺は、公衆電話を捜した。公衆電話は、以外にも、あっさりと見つかり、俺は、薙咲に電話を掛けようとした。




…。薙咲の携帯番号忘れた……。


………。明日、携帯買いに行こ。




さて、どうしよう。

家に戻るか、このまま捜すか。




………。もう少し捜すか。




俺は、学校の周辺を捜す事にした。


学校の周辺を探して見つからなかったら一度戻るか。



俺は、入り組んだ住宅街を隅々まで、眼を凝らしながら、幸土さんを捜していた。


…こんな適当に捜して、見つかるもんじゃないよな。


曲がり角にさしかかった時、突然前から、人が、ぶつかってきた。




「キャ!」




俺に、ぶつかってきたのは、幸土さんだった。




「チ、チサメ君!」


「やっと見つけた」


「助けて!」




…助けて?




すると、俺の背後で、不気味な声が聞こえた。


「フフフ…。見つけた…。」




突然、背後から聞こえた声に、俺は、恐怖を覚えた。

コイツが殺人犯なのか?

コイツが幸土さんを襲ったのか?

俺も、殺されるのか?



俺は、恐怖のあまり、振り返る事が出来なかった。



幸土さんは、俺に抱きついて、小さく体を震わせている。

こんな幸土さんを見るのは初めてだ。


こんなにも怯えている。




「…なんなんだ。なんで、こんな事するんだ…」

俺は、怯えている、幸土さんを、強く抱き締めながら、後ろを振り返らずに、言った。




「ちっ…。お前が居ると面倒だ。今回は、見逃してやる。だが、覚えておけ。いずれ、お前達は、死ぬ運命だと言う事を」






振り返ってみると、そこには、誰もいなかった。



いったい何なんだ?

なぜ幸土さんは、狙われてる?

それに、『お前達は、死ぬ運命』って、どういう意味だ?

お前達って、誰だ?




幸土さんは、まだ震えている。

そうとう恐い目に合わされたのだろうか?




すでに、日は、落ちかけている。

冬は、日が落ちるのが早いな。




「とにかく、家に戻ろっか?」


「……」



幸土さんは、小さく頷いたが、俺に抱きついたまま、放そうとしない。




うーん…。どうしよう。

まだ震えているし。







俺は、抱きついたままの、幸土さんを、抱え上げた。



…なんか、お姫さまダッコみたいな格好になってしまった。

幸土さんは、相変わらず、抱きついたままだ。



仕方ない。このまま連れてかえるか。




俺は、幸土さんを抱えたまま、家に戻った。


玄関の前には、薙咲が座っている。




薙咲は、俺達に気付くと、走りよってきた。




「え!?何!?どうしたの!?」


幸土さんを、お姫さまダッコしている俺を見て、薙咲は、不思議そうに聞いてくる。




「もしかして……。愛し合ってる…とか?」


「馬鹿みたいな事言ってんなよ」


「なんだ。違うの?」

薙咲は、つまらなそうに、言った。




「寒いから早く中に入るぞ。ドア開けてくれ」


「はいはい」




俺は、リビングに行くと、幸土さんを、ソファーに座らせようとした。



が、幸土さんは、抱きついたまま、放してくれない。



……困った。腰が痛い。

ずっと抱えて来たからか。




俺は、幸土さんを、抱え直して、そのまま、ソファーに座った。




「あらあら、ラブラブですねぇ〜。抱き合っちゃって。イチャつくなら、人が居ない所で、やってもらえますか〜?」




すると、幸土さんの泣き声が聞こえ始めた。



「あ、ちょ!薙咲、泣かすなよ!」


「ち、違うよ!そんなつもりなかったんだよ!」


「薙咲と一緒に居ると、ちゃかすから、部屋に戻る」


「そんな事言ってイヤラシイ事考えてるんでょ〜」


「…だから、そんな事言うなって」


「あ、ゴメン」




俺は、リビングを出ると階段を上った。

人抱えながら上るのは、結構きついな。




「お兄ちゃーん、ご飯出来たら呼ぶから、ちゃんと来てよねー」


「はいはい」

俺は、薙咲に聞こえるか、聞こえないくらいの小さな声で、返事をした。


幸土さんを抱えたまま、部屋に入り、俺は、1人掛け用の小さなソファーに腰を掛けた。


幸土さんは、まだ泣いているみたいだ。


はっきり言って、こんな場合どうしていいか、まったく解らない。






「……ごめ…んね」

幸土さんは、俺に抱きついたまま、小さな声で言った。



「えっ!?いや、謝らなくても…」




今まで俺の胸に、顔埋めて泣いていた幸土さんは、顔を上げた。

泣いていたせいか、眼は、真っ赤になっている。




ピンポーン




突然、インターホンが鳴った。



「あ、俺ちょっと行ってくるね」

俺は、抱えたままの幸土さんを下ろして、部屋を出ようとした。




「私も行く…」

そう言って幸土さんは、俺の手を掴んできた。



うーん。幸土さんどうしたんだろ?




俺は、幸土さんと、手をつないだまま玄関のドアを開けた。




「チサメ!助けて!」


玄関の前には、葉月が、立っていた。

腕からは、おびただしい量の血が流れだしている。




「葉月!どうしたんだ!?」

俺は、葉月に駆け寄ると、腕から流れている、大量の血を止めようとした。


…うっ。まただ。気持ち悪い。




すると、誰かが走ってた。



「あいつよ!あいつが私を襲ったのよ!」


俺は、葉月の血を止めながら、葉月が指差した方を見てみた。




「チサメ!ソイツを離せ!」


…神宮さんだ。

手には、長い刀のような物を持っている。

その刀には、血が付いていた。




「チサメ!たぶんアイツが殺人犯なのよ!」

葉月は、神宮さんを指差し、そう言った。

葉月の腕から流れていた血は、止まりかけている。




……神宮さんが殺人犯?

そんな…。

…幸土さんを襲ったのも、神宮さんなのか?




「チサメ!そこを退け!ソイツは…」




俺は、幸土さんや、葉月を襲った神宮さんに怒りを覚えた。


体中が熱い…。

燃えるようだ…。



「…お前か。お前が、幸土さんや、葉月を、こんなめに合わせたのか…」


「や、やめろ!チサメ!その力を使っちゃダメだ!」




コイツが…幸土さん達を…。

…許さない。


……殺してやる。

お前が、幸土さん達に、した様に、俺も、お前に同じ事をしてやるよ…。

殺してやる。

ころしてやる。

コロシテヤル…。




「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ァ゛ァ゛!」


「チサメ!やめろ!」








これからも読んでくれるとうれしいです

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