第4話
今まで書いた文章は、短かったので、1区切りついたら、次からは、一話で一日が終わる様に書きます。
はぁ…。独りぼっちになっちまったよ。
俺は、だだっ広いリビングで、独りコーヒーを飲みながら考え事をしていた。
『目覚める』
薙咲は、幸土さんに教われた。
薙咲の体からは、大量の血が吹き出した。でも薙咲は生きていた。
それから薙咲が俺を襲おうとした。
薙咲は、その事を覚えているのか?
それに、あの吸い込まれそうな冷たい眼。
あの時の幸土さんと同じ眼をしていた。
あの眼になると、目覚めるって事なのか?
でも幸土さんは、先生に撃たれてから、狂ったみたいに叫んでいた。
あれが目覚めるって事なのか?
じゃあ薙咲は、目覚めてないのか?
………ん?なんで俺は、目覚めなかったんだ?
うーん…。いまいち理解できないな。
それより先生は、どうなったんだ?
生きているみたいだけど、明日、学校で会ったらどうするんだ?
……ってか、独りで考える事じゃないだろ。
薙咲や、幸土さんにも関係あるんだし。
俺は、飲みかけのコーヒーをテーブルに置いて、薙咲の部屋に向かった。
…そうだ。葉月が居るんだった。
さて、どうするか。
………………。
素直に帰ってくれるかな?
俺は、薙咲の部屋のドアを数回ノックした。
「はーい」
薙咲は、ニコニコしながらドアを開けた。
奥を見ると葉月と幸土さんが、小さなテーブルを囲んで会話をしている。
「お兄ちゃん、何か用?」
「ちょっと葉月に話があるんだけど、呼んでくれるか?」
「わかった。葉月ちゃん、お兄ちゃんが、ちょっと来てくれってぇ」
「えっ?なーに?」
葉月はトコトコと俺の方に歩いてきた。
俺は、薙咲の部屋のドアを閉める。
「葉月、ちょっと言いにくいんだが、今日は帰ってくれないか?」
「えっ?なんで?」
「いや、薙咲達に話があるんだよ」
「そんなんだ。じゃあ私帰るよ」
「本当ゴメンな」
「いいって♪じゃあ、また明日学校でね♪薙咲ちゃん達に、今日は楽しかったって伝えといて♪」
そう言うと葉月は、小さく手を振ってから、行ってしまった。
あら?やけに素直だな。
いつもなら俺の言う事なんて聞かないのに。
俺は、葉月が帰った事を確認すると、薙咲の部屋のドアを開けた。
(フフフッ…。見つけた…)
ん?なんだ?今の声は?
「薙咲、なんか言ったか?」
「なにも言ってないよ」
「そうか」
なんなんだ今の声は?
「お兄ちゃん、どうかしたの?」
「いや、別に」
薙咲は、首を傾げながら俺を見ている。
幸土さんは……。相変わらず俺には無関心だな。
薙咲の部屋を珍しそうに見渡している。
「お兄ちゃん、葉月は?」
「あぁ、帰ったよ」
「えぇ!なんでよ!?」
「いや、ちょっと帰ってもらった」
「もっと話したかったのにぃ」
薙咲は口を尖らせて俺を睨んでいる。
「それでさ、ちょっと話があるから入っていいか?」
「もぉ、話って何?」
そう言って薙咲は、俺を部屋の中に入れてくれた。
まだ拗ねてるみたいだ。
俺は薙咲の部屋に入ると、薙咲と幸土さんで小さなテーブルを囲んで座った。
「で、話って何?」
「今日の事だよ。薙咲、覚えてるよな?」
「今日の事って、あれでしょ、先生の事でしょ?」
「そう、薙咲、目覚めるって意味わかるか?」
「うーん。目覚める……。何が目覚めるんだろ?」
「さぁな。じゃあ、あれ覚えてるか?薙咲が俺を殴ろうとした事」
「えっ…。その…なんとなくだけど覚えてる……」
「なんで殴ろうとしたんだ?」
「…あのね、よくわかんないんだけど…急に、先生の言う事を聞かなくちゃいけないって感じがして…。ゴメンね。お兄ちゃん…」
「いや、薙咲は謝らなくていいよ。ところで幸土さん、何か知ってる?」
「…………」
……。また無視かよ!
「千草ちゃん、何か知ってる事ない?」
「…少しだけなら」
幸土さんは、薙咲の問い掛けに小さく頷いて、話始めた。
幸土さんの話では、
幸土さんは、俺達の学校に来る前は、どこかの施設みたいなとこで暮らしていたらしい。
そこには、先生も居て、毎日、変な機械で検査をしていた。
目覚めるとは、俺達が何かを、きっかけに未知の力を発する、という事。
先生は、その力を利用して何かを企んでいる。
目覚めるには、2段階あるらしい。
きっかけができると、1段階。
2段階になる方法は、わからない。
1段階の時は、意識があるらしい。
と、まぁ、わかるのはコレだけらしい。
これだけわかれば十分かな。
てか、幸土さん、よく喋るな。
「千草ちゃん、私達には、なんか特別な力があるってこと?」
「そう。特別な力が、どんなものなのかは、私もよくわからない」
「じゃあ先生って何者なんだ?」
「………」
また無視か…。
「うーん。話を聞いたのは良いけどさ、話が大きすぎて、わけわかんないね」
「そうだな。まったく理解できない」
「…馬鹿だからでしょ」
「お兄ちゃん馬鹿だってぇ」
薙咲は、俺を指差してクスクスと笑った。
「まて!今の馬鹿というのは、俺に対して言ったのか!?それは俺が話を理解できないと言ったからか!?それなら、話がわけわかんないと言った薙咲も、さっき言った馬鹿という言葉に当てはまるんじゃないか!?」
「馬鹿は、すぐムキになる…」
「お兄ちゃん何ムキになってんのよ」
チクショウ…。ムカつく。
あっ、もう10時じゃないか。そういえば幸土さん、どうするんだろ?
「幸土さん、今日どうするの?帰るとこないんだろ?」
「……」
……………。また無視ですか?
フ ザ ケ ン ナ
「千草ちゃん、行くとこないなら泊まりなよ♪」
「えっ?でも迷惑だろうし…」
「うんうん。迷惑」
「お兄ちゃんは、黙ってて」
ちっ、なんだよ…。
「薙咲ちゃん、本当にいいの?」
「うん♪私も千草ちゃんがいると楽しいし♪」
「俺は、全っ然楽しくないけどね」
「もう!お兄ちゃんうるさい!話終わったんだから出ていってよね!」
「わっ、ちょ!やめろ」
…追い出されちまった。
寒い。
11月半ばで、家の中でも寒いくらいだった。
俺は自分の部屋に戻ると、敷きっぱなしの布団に潜り込んだ。
……………。暇だ。
暇すぎる。
今頃、薙咲の部屋では、楽しい会話が繰り広げられているのだろう。
他の人が楽しんでいるのに、俺は何もする事がないと一層退屈に感じる。
寝るには、まだ早い時間だ。
俺は、ゲームをして時間を潰そうとしたが、すぐに飽きてしまった。
…。暇だ。なにをしても楽しくない。
てか、薙咲達の話に交ざりたい。
俺は、部屋を出ると薙咲の部屋をノックした。
「入ってこないでね」
薙咲の素っ気ない返答に少しショックを受けつつ、俺は自分の部屋に戻った。
俺は、また布団に潜り込み、寝ようとしたが、なかなか寝れなかった。
…。風呂にでも入るか。
俺は、着替えの服を持つと、小走りで風呂場に向かった。
うぅ〜。寒い。早く暖まりたい。
俺は、脱衣所で、寒さを我慢して、服を脱いだ。
服を脱ぐと、また一段と寒い。
俺は、寒さを我慢し、風呂場のドアを開けた。
「…………」
そこには、千草さんが居た。
「わ!ご、ごめん!わざとじゃないんだ!その、知らなかったんだ!」
「早く閉めて」
幸土さんにアッサリそう言われ、俺は慌ててドアをしめた。
そして、ダッシュで自分の部屋に入り、布団に潜り込んだ。
ヤバいヤバいヤバいって!
知らなかったとはいえ、俺は、幸土さんの裸を見てしまった。
次からどうやって顔を会わせればいいんだ!?
もう1度謝った方がいいかな!?
いや、しかし会わせる顔がない。
どうすればいいんだ!?
まさか、学校中に、この事が知れ渡ったりしないだろうな!?
せんな事になったら、俺学校行けないぞ!
やっぱりちゃんと謝るべきか?
あぁー、どうしよう!?
……?ん?さっき幸土さんの体を見て何か引っ掛かる事がある。
なんだろ?
……………って、こんな事考えてる場合じゃない!
てか、腹へった。
そういえば昼から何も食べてない。
…。また違う事考えちまった!
俺の頭は馬鹿か!?
どうするか考えろ俺!
…………ん?
眩しい。
時計を見ると、時計の針は、7時半を差していた。
……!寝ちまったのか!?
うぁぁぁ!何も考えてねぇ!
「お兄ちゃーん、早く起きな。ご飯できてるよー」
薙咲の声が聞こえる。
毎朝ご飯を作ってくれるなんて、なんて良い妹だ。
うん、あんな妹をもった俺は、幸せ者だな。
まずは、飯食ってから考えるか。
って違ーう!幸土さんも一緒に飯食ってるはずだ!
と、言う事は、顔を会わせるって事じゃんか!
「お兄ちゃーん、早くしなよー」
どうしよ!?どうしましょ!?どうしたら良いのでしょうか!?
とりあえず下に降りよう。
薙咲がキレるからな。
俺は、重い足取りで、階段を降り、リビングに向かった。
リビングに入ると、そこには、楽しそうに朝食を食べている、薙咲と幸土さんの姿があった。
幸土さんは、黙々と朝食を口に運んでいた。
もちろん俺の存在に気付いているのだろうが、1度も俺を見ない。
俺は、朝食をとるため席につくと、目の前にある、美味しそうな料理に手をつけた。
今日の朝食は、いつもと違って少し豪華だ。
たぶん幸土さんが居るから薙咲は、はりきって料理を作ったんだろう。
俺は、幸土さんの様子をうかがっていたが、べつに変わりは、ないようだ。
薙咲の様子から見て幸土さんは、昨日の出来事を話してないみたいだ。
俺が、そんな事を考えていると、テレビから、気になる情報が入ってきた。
『番組の途中ですが、ここで臨時ニュースを、お伝えします。福森市で今朝、四時頃、身元不明の死体が発見されました。死体は、体中を鋭利な刃物で、切り裂かれており、死後まもない状態で発見されたとの事です。』
薙咲は、ニュースに釘づけになって、ご飯を食べる手も止まっていた。
そうなるのも無理はない。
福森市とは、俺達の住んでいる街なのだから。
『えー。新しい情報が入りました。福森市では、新たに3人の死者が発見されました。いずれも、先程の事件同様、鋭利な刃物で殺害されているとの事です。犯人は捕まっておらず、福森市付近に潜伏していると思われます。福森市の警察は、住民に警戒を呼び掛けております』
「うわ〜。福森市だって。私達の住んでるところだよ」
ニュースが終わると薙咲は不安そうに、こちらに体を向けた。
幸土さんは、何事も無かった様に黙々と、朝食を食べている。
何事にも無関心なのだろうか?
ふ、と気付くと家の外から、声が聞こえる。
たぶん警察だろう。
犯人が近くにいる可能性があるので住民の方々は警戒して下さい。と言った内容だ。
警察の声が徐々に遠ざかっていく。
すると突然、電話の鳴る音が響いた。
「はいはーい。今でまーす」
薙咲は、そう言うとリビングを出ていった。
リビングには、俺と幸土さんの2人きりだ。
どことなく重い空気が漂う。
まぁそれは、俺だけが感じているのかもしれないが。
「幸土さん、その、昨日は悪かったな」
幸土さんは、一瞬俺の方を見たが、黙ったまま、朝食を食べ続けた。
幸土さんと初めて会った時よは、まだ会話していたのだが(会話と言うよりバカにされてただけの様な気もするが)今は、まったく会話してくれなくなった。
やっぱり昨日の出来事のせいだろうか?
「お兄ちゃーん♪」
重い空気を突き破る様に、薙咲の楽しそうな声と共に、薙咲が戻ってきた。
「どうした?やけに嬉しそうだな」
俺は、朝食を口に運びながら、さっきまでの重い空気が無くなった事に喜びを感じていた。
「今日は、学校休みなのだ♪」
薙咲は、ピースをしながら、いかにも嬉しそうに答えた。
学校が休みなのは、たぶん今朝の殺人事件のせいだろう。
しかし薙咲は、そんな事お構い無しに、幸土さんと、今日は何処に出掛けようかと、楽しく会話している。
「薙咲、危ないから外に出るなよ」
「はぁ!?何言ってんの!?今日は休みなんだよ?こんな時に遊びに行かないでなにしろってのよ!」
「殺人犯が近くに居るかもしれないんだぞ」
「うるさい!」
楽しく会話していた中に俺の一言が、ムカついたみたいだ。
俺の話を聞こうとしない。
そんな中、会話は順調に進み、出掛ける場所が決まったみたいだ。
どうやら、2人で、買い物に行くらしい。
「俺も一緒に行く」
「は?なんで?」
「薙咲達だけじゃ危ないからな」
薙咲は、嫌々、俺も一緒に行っていいか幸土さんに聞き始めた。
幸土さんは、薙咲が良いなら自分も、それでいいと。
うーん。幸土さんは、俺を嫌っているのか、それともただ、無関心なだけなのか。
いまいち理解できない人だな。
まぁこれで一緒に行けるのだから、文句は無いが。
つまらなかったかもしれませんが、また読んでください。