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暗血の闇  作者: 黄昏
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第3話

なんか、展開が早いような気がする…

「準備は、全て整った…。後は、お前達が目覚めれば、この国は、全て我々の物になる…。クククッ…。」




目覚める?何の話だよ。






「せ…先生、さっきから何言ってんの!?」

いつもの薙咲からは、考えられないように、怯えている。

そりゃそうだ。先生は、さっきから狂った様に笑い続けている。

さすがに俺も恐くなってきた。






「さぁ!千草!奴等を目覚めさせるんだ!」


「はい…」

そう幸土さんは答えると、いきなり薙咲に飛び掛かった。




「キャァァァァァ!」


「薙咲!!」

俺は無心で幸土さんに飛び掛かった。




「邪魔するな!」

幸土さんは、俺の体を片手で軽く投げ飛ばした。



「グッ…」

俺は、教室の壁に叩きつけられた。




くそっ…!どうなってるんだ!

片手で投げ飛ばしやがって…。

…。頭がクラクラしてきた…。

頭から血が出てるじゃねぇーか…。

薙咲…。




その時、薙咲の声が消えた。

薙咲の体からは、血が吹き出していた。

まるで、真っ赤な花が咲き乱れた様に…。






「薙咲ーー!!」




「クククッ…。アハハハハハッ!目覚めるぞ…」


「くそっ…。この野郎!薙咲を返せぇぇぇ!」

俺は、先生に殴りかかろうとしたが、



ガシッ




拳がもう少しで、先生の顔面にとどくところで、誰かに物凄い力で腕を掴まれた。






…誰だ?


………薙咲。


薙咲…生きてたのか?


なんで俺を止めるんだ?






「薙咲!なんで止めるんだ!?コイツは、薙咲を殺そうとしさんだぞ!」


「……」

薙咲は黙ったままだ。

よく見ると、薙咲の眼は、幸土さんと同じ。冷たい眼になっていた。




「クククッ…。チサメ。お前は何を言ってるんだ?俺が薙咲を殺すわけないだろ。大事な道具なんだからなぁ」




道具?薙咲が道具?




「次は、チサメ。お前が目覚める番だ」




目覚める?何を言ってるんだ?

目覚めるって何なんだ?

薙咲は目覚めてしまったのか?




「さぁ!チサメ!目覚めろ!」




嫌だ!嫌だ!俺も薙咲みたいに、なってしまうのか!?

嫌だ…。






「………?なぜだ!?なぜ目覚めない!?まさか…失敗したのか!?」




…。なんともない…。

無事だったのか?




「なぜだ!?なぜ失敗した!?また1からやり直しだ!なぜなんだぁぁぁぁ!」




先生は、大声で狂った様に叫んでいる。

薙咲と幸土さんは、先生の隣で俺を見ている。






「チサメ!お前は失敗作だ!失敗作に用は、無い!薙咲!お前の手でチサメを殺せ!」


「はい…」

薙咲は、ゆっくりと俺の方に歩み寄ってくる。




「ち、薙咲、やめろ!俺がわからないのか!?」




薙咲は、何も聞こえてないかの様に俺に歩み寄ってくる。




「アハハハハッ!妹に殺させるんだ。悔いは残らないだろ」




「ち、薙咲やめてくれ!」

薙咲は俺の目の前に立つと拳を振りかざした。




「や、やめろ!やめてくれぇぇぇぇぇ!」




ドカッ!!









……。生き…てる?




薙咲の拳は、俺の頬をかすめ、教室のガラスを突き破っていた。




「お兄…ちゃ…ん」


薙咲の腕からは、大量の血が流れだし、眼からは、涙が零れていた。

その眼は、いつもの薙咲に戻っていた。




「薙咲…」




「なぜだ!?薙咲!なぜ俺の命令に従わない!?」





「私は…。私は道具なんかじゃない!人間だ!」


「くっ…。お前等兄妹は失敗作だ!千草!奴等を殺せ!」


「…いやだ。私には出来ない…。薙咲ちゃんは…私と仲良くしてくれたから…」

「千草ちゃん…」


「千草!何を言っている!お前は道具なんだ!俺の言うとおりに動けばいいんだ!道具の分際で俺に意見するんじゃない!」


「…。私には出来ない!」


「くそっ…。何なんだ、お前達は!?全員失敗作か!?失敗さくなら俺が殺してやる!」




パーン!!




「千草…ちゃん…。……いやぁぁぁぁぁぁぁ!」






幸土さんは、その場に倒れこんだ。

胸からは大量の血が流れだしている。

先生が拳銃で幸土さんを撃ったみたいだ。




うっ…。




俺は目の前で起きた悲惨な光景と血の生臭さに吐き気がした。




「アハハハハッ!次はお前達の番だ!」

先生は俺たちに銃口を向けた。






「死ね!」


「あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛!!!!」


「な、何事だ!?」






声にならない様な叫び声が聞こえた。

叫んでいるのは…幸土さんだ。

胸を打ち抜かれて、死んでいるはずの幸土さんが、叫んでいる。






「な、お前は…。この匂い…。くそっ!」

先生は、慌てた様に、逃げ出そうとした。




「がぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」

幸土さんが、また叫び声をあげると同時に先生は、幸土さんに捕まっていた。




「は、離せ!」




ガシャン!




幸土さんは、先生の腕を掴むと、そのまま教室の窓を突き破って、放り投げた。






「…千草ちゃん」


幸土さんは薙咲の方を向くと、そのまま倒れこんでしまった。



「千草ちゃん!!」





薙咲は、幸土さんに駆け寄ると体を揺すった。




俺は、なにが起こったのかまだ理解できず、教室の隅で腰を抜かしていた。




俺、情けねぇー…。






「お兄ちゃん、どうしよう?」


「ど、どうしようって何が?」


「何がって千草ちゃんだよ!このまま、ここに置いて帰るつもり!?」


「い、いや。それはマズだろ」




薙咲のヤツ何で、こんなに冷静なんだ?

俺は、幸土さんが、どうとか言う前に、この状況はヤバいんじゃないのか?

ガラスは割れてるし、教室は、血だらけだし。


…。ちょっとまて!先生は、どうなった!?

ここ3階だぞ!

先生落ちてしまったぞ!

死んだんじゃないのか!?




「ちょっとお兄ちゃん!聞いてる!?」


「き、聞いてるよ。それより先生は、どうなったんだ?」


俺は、割れた窓から身をのりだして、下を見てみた。




……いない。

無事…だったのか?

って事は、誰も死んでない!

…。ちょっと待てよ。

この惨状を、どう説明すればいい?どうする。考えろ。考えるんだ俺!



……!よし、見なかった事にしよう。

今日の事は知らない。

俺は、なにも知らない。

よし。これで完璧だ。






「ちょっとお兄ちゃん!手伝ってよ!」


「薙咲、今日の事は、誰にも言うなよ。俺達は、なにも知らない。なにも見てない。誰かに聞かれたら、そう答えるんだぞ」


「いいから早く手伝えって!」



ゴスッ!




「ぐぁ…。黒板消しを投げるんじゃない」




「早く!お兄ちゃん!千草ちゃん、おんぶして!」


「な、なんで俺が!?」


「私じゃ無理だもん。か弱い乙女だから」


「だれが乙女じゃ」


「いいから早くしろって」


「はいはい」







俺達は、そのまま家に帰った。

あの現場が見つかれば、どうなる事やら。

まぁ考えても仕方ない。

どうにも出来ないしね。


それより、俺が幸土さんを、おんぶしてるって事実が嫌だ。

このまま、放置して帰りたい。

重いし。













俺は、家につくまで、ずっと考えていた。

先生の言った事の意味を。

目覚める。一番ひっかかった言葉だ。

だいたい、幸土さんは何なんだ?よく考えると死んだはずだろ。

てか、今生きてんのか?

あぁ!もう!わけわかんねぇ!知るか!俺は何も関係ない!

錯覚だ。錯覚。全部錯覚だ。これでいい。

ん?これって現実逃避か?

てか今は現実なのか?

うーん…。考えれば考えるほど、わけわかんねぇ。

考えるの止そう。







家につくと、薙咲は、幸土さんをリビングのソファーに寝かせるようにと、俺に言った。




「お兄ちゃん、私、千草ちゃんの着替えとか用意するから、千草ちゃん見てて」


「はいはい」






うーむ。幸土さんは、生きているみたいだ。

ちゃんと息してるし。

寝てんのか?




幸土さんの服は、血で真っ赤になっていた。

もう血は止まってるみたいだ。

…あれ?人って銃で胸撃たれても平気なのか?

……。平気じゃないだろ。

病院に行くべきじゃないのか?






「ちょっとお兄ちゃん。さっきから何ジロジロ千草ちゃん見てんの?」


「ち、違っ!見てねーよ!」


「…スケベ」


「だから違うって!」


「わかったから、早くでてってよ。千草ちゃん着替えさせるから」


「わかってるよ!」


「覗くなよ」


「覗かねーよ!」






俺は、リビングを出ると、2階にある自分の部屋に向かった。




リリリリリン!




階段を上っている途中、突然電話のベルが鳴った。




「お兄ちゃーん、電話出てぇー」


「薙咲が出ればいいだろ」


「今手が放せないの。早く出ないと切れちゃうよー」


「ったく、めんどくせぇな」


俺は、階段を掛け降りると素早く受話器を取った。




「はいはい、高度です。用件は手短にお願いします」


「あっ、チサメ?」






うわっ…最悪。嫌な予感がする…。




「…なに?」


「べつに。家に居るか確認しただけ♪じゃあね♪」


「じゃあねって!ちょっと待て!」



ガチャン…プー…プー…






……切られた。

ヤバいぞ!早く薙咲に知らせないと!




俺はダッシュでリビングに行くと、勢い良くドアを開けた。




「薙咲ヤバいぞ!」


「ヤバいのは、お前の頭だ。覗くなって言ったろ」



ボフッ



「イテッ。クッションを投げるな!」


「いいから早く出ていってよ!変態!」


「話を聞け!葉月が来るぞ!」


「えっ?なんで?」




ピンポーン




来た!




「薙咲!その血だらけの服隠せ!」


「わ、わかった!」


「薙咲も服着替えとけ!」

「うん!」


「幸土さんも隠せ!」


「どこに!?」


「…風呂場とか」


「わかった!」




ピンポーン、ピンポン!ピンポン!ピンポン!ピンポン!




だぁぁぁぁぁ!うるせぇ!インターホン連打するなよ!




「はいはい!今出ますよ!」



ガチャ




ドアを開けると予想どうりの人物が立っていた。




「遅い!インターホンが鳴ったら、すぐに出なくちゃ」


「葉月…。何しに来たんだ?」


「暇だったから♪上がるよ」


「ちょっと待て」


「何でよ?」




俺は、葉月を制止した。




薙咲ちゃんと隠したかな?



俺は後ろを振り返ってみた。



今、幸土さん運んでるし!

そういえば風呂場に行くには、この通路通らなくちゃいけないんだった!




俺は葉月に見られないように大の字の形になった。




「…なにやってんの?」


「べつに」


「ちょっと退いてよ。上がれないじゃん」


「ヤダ」


「…。なにか隠してる?」


「べ、べつに」


「……。退け!」


「うわっ!ちょ!やめろ!」




葉月は、俺を押し退けると家に上がってしまった。




「……。薙咲ちゃん、なにやってんの?」


「えっ!?なにが!?」


「いや、その引きずってる人」


「この人!?えーっと、その…。そう!この人は、お兄ちゃんの友達!」


「なっ!?違うだろ!」


「友達ね。ふーん。で、その人どこに運んでんの?」

葉月は、幸土さんに近寄り、薙咲と幸土さんに目を行ったり来たりさせている。



「ちょっと疲れて寝ちゃったみたいだから部屋に運ぼうと思って」


「ふーん。……ん?何この赤いの?」


「えっ!?」




あっ!バカ!薙咲のヤツ、体に付いた血拭いてなかったのか!




「なに…コレ?……血?」


「いや、違うってケチャップだよ!なぁ薙咲」


「えっ!?そ、そうケチャップ!さっきオムライス食べたのよ!」


「ふーん…。ちょっと電話借りていい?」


「電話?どーぞ!好きなだけ使ってください!」



葉月は、受話器を取ると、どこかへ掛けはじめた。




「……助けてぇぇ!!ここに人殺しがいます!」


「なっ!?」


俺は、葉月の受話器を取ろうとしだ、葉月が抵抗して、なかなか取れない。




「きゃぁぁぁぁ!犯人が!犯人が私を殺そうとしてる!私も殺されちゃう!」


「馬鹿ッ!やめろ!」


俺は、やっとの事で葉月から奪い取った受話器を電話機に置いた。




「いやぁぁぁぁ!私も殺す気なんでょ!誰か助けてぇ!」




…。ウゼェ。本当に喧しい奴だ。




「葉月ちゃん、ちょっと落ち着いて」


「きゃぁぁぁ!共犯者が襲ってきたぁぁぁ!」


「えっ!?共犯者って私!?違うわよ!」


「いやぁぁぁぁぁ!助けてぇぇぇぇ!」




…頭痛くなってきた。




「誰かぁぁぁぁぁ!助けてぇぇぇぇ!殺されちゃう!」


「うるせぇ!落ち着けって言ってんだろ!少しは、話聞けよ!」




あ、薙咲がキレた。




「……なによ!人殺しの言い訳なんて聞きたくない!」


「だからね、葉月ちゃん、勘違いだって」


「じゃあ、あそこで体に血付けたまま倒れてる人は何よ!?」

葉月は幸土さんを指差した。



「指差さないで」




……。起きてるし。




「千草ちゃん!大丈夫なの!?」


「きゃぁぁぁぁ!死人が生き返った!」




葉月の奴まだ続ける気かよ。




「千草ちゃん、痛い所ない?」


「うん。大丈夫」


「きゃぁぁぁぁ!死人が喋った!」


「よかったぁ。千草ちゃんが眼覚まして」


「この服薙咲ちゃんの?」

「きゃぁぁぁぁ!死人が薙咲ちゃんと喋ってる!」


「うん♪千草ちゃんの服汚れちゃったから」


「そう。ありがと」


「きゃぁぁぁぁ!死人が、お礼を言った!」




ぉぃぉぃ、葉月の奴、どんどんツッコム所おかしくなってないか?

しかもスルーされてるし。




「お礼なんていいよ。友達でしょ」


「薙咲ちゃん………。ところで、さっきから騒いでるこの馬鹿誰?」


「馬鹿じゃないわよ!死人は、黙ってなさい!」


「そーいえば葉月ちゃん学校休んでたから知らないんだ。あの子は、椎名(シイナ) 葉月(ハヅキ)ちゃん。同じクラスだよ。お母さんが外国人でハーフなんだよ」


「友達なの?」


「そっ。葉月ちゃんは、幼なじみなの」


「そうなんだ。じゃあ、葉月ちゃん、今から友達ね」


「えっ?友達?…。いいわよ!しょうがないから友達になってあげるわ!」


「ありがと…」


「べ、別に、お礼を言われる事なんかしてないわよ!」




…。なんで、あんなに打ち解けてるんだ?




「じゃあ、薙咲ちゃん、葉月ちゃん、これから3人で仲良くしようね♪」


「幸土さん、俺は?」


「……」




無視かよ!なんで無視するんだ!?




「じゃあ千草ちゃん、葉月ちゃん、私の部屋に行こ♪」


「うん」


「オッケー♪」


薙咲、幸土さん、葉月の3人は楽しそうに2階の薙咲の部屋に行ってしまった。






俺は放置かよ…。


寂しいな…。

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