第1話
鳥の泣き声が聞こえる…。
カーテンの隙間から見える朝の光…。
すがすがしい朝だ。
「ふぁぁぁ…。よく寝た。」
う〜ん…。起きたは良いものの、ちょっと早すぎたかな。
まだ6時半だし。
学校には、8時に家を出れば間に合うし。
……もうちょっと寝るか。
「…………ちゃん!」
…ん〜。なんか聞こえるな…。
「お兄ちゃん!早く起きてってば!」
…?薙咲の声?
『早く!いつまで寝てるの!』
…うるさいなぁ。
「…あと5分…。」
「…。早く起きろって!」
「グハッ…」
突然、腹部辺りに痛みが走った。
「痛ぁ…」
「やっと起きた。早くご飯食べて、学校行かないと遅刻するだろ!」
「……」
「早く準備して下に降りてこいよ!ご飯できてるから!」
「……」
「おい、聞いてんのか?」
「……」
「返事しろよ!」
「うるせぇな!お前さっき何した!?」
「何した?って可愛い妹が、兄を思って優しく起こしてあげたんじゃないか」
「なにが優しくだ!お腹真っ赤になってるじゃないか!」
「何怒ってんのさ?さっさと起きないから、かかと落としで目覚めスッキリに起こしてあげたんでしょ」
カカトオトシ?
気持ちよく寝てる兄に普通そんな事するか?
内蔵飛び出るかと思ったぞ。
「起きたなら早く支度して降りてきてよね!」
そう言うと薙咲は、部屋を出ていった。
「ちょ!待て!話は、まだ終わってねぇ!」
チクショウ…。気持ち良く寝てたってぇーのに。
薙咲の奴、もっと優しい起こし方は出来ないのか?
薙咲ってのは、俺の妹。
まぁ、歳は同じで、誕生日も同じ。
双子ってヤツ。
先に俺が生まれたから、お兄ちゃんだ。
薙咲は、どちらかと言うと男っぽい性格。
だけど、両親が居なくなってからは、毎日朝早く起きて、ご飯を作ってくれる良い奴だ。
乱暴な所を除けば…。
ちなみに俺の名前は、
『香度 チサメ』(コウタビ チサメ)
なぜ親がチサメって女っぽい名前を付けたのかは、謎。
まぁ別に気にしてないけどね。
さて、支度も終わったし、飯喰うか。
早く行かないと、また薙咲に怒鳴られるからな。
階段を降りてる途中、薙咲が慌てた様子で走ってきた。
「遅い!学校遅刻するだろ!」
そう言って薙咲は、俺の手を引っ張って、家を飛び出た。
「まて!俺まだ飯喰ってないぞ!」
「わかってるよ。行く途中に食べな」
薙咲は、俺に銀紙で包まれた何かを渡した。
「なんだよ。おにぎりか?こんなんじゃ足りねーよ」
ため息混じりに銀紙を取った。
……?何コレ?唐揚げ?
しかも3つだけ。
「なぁ、薙咲。何コレ?」
「はぁ?唐揚げだろ?見てわかんないのか?」
「いや…。そうじゃなくて…」
「ゴチャゴチャ言ってないで急げよ。遅刻するだろ」
そう言うと薙咲は、先に行ってしまった。
「………」
今日の朝ご飯は、唐揚げだけですか…。
しかも、たった3つ……。