親友の絆
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お母さんがハンドバックからハンカチを取り出すために立ち上がった時、誰かがコンコンとドアをノックした。
「はい」と返事をすると、ドアの陰からひょこっと理香が顔を出した。お母さんの方を見て「こんにちは」と挨拶をしてから、私が横たわるベッドに近づいてきた。
「理香、来てくれたんだ。ありがとう!」
「当たり前だよー私たち親友でしょ」
理香の口から出た親友という言葉が胸に染みた。今まで親友という言葉を使ったことも、使われたこともなかったのだ。
「ジュースを買ってくるからね。理香ちゃん、ゆっくりしていってね」
お母さんが財布を持って病室を出たのと同時に、理香は私に抱きついた。
「無事で本当に良かった」
「理香、ありがとうね。うちのお父さんに修哉さんを会わせてくれたんでしょ?」
「私はひかるの味方だからね。先生とのことも応援してるんだよ」
理香は白い歯を見せてニッと大きく笑った。
「私ね、中学の頃イジメにあってたの。机を隠されたり、上靴に画鋲を入れられたり。きっかけは些細なことだったんだけど、イジメがトラウマになって人間不信になってたんだ。高校に入学した時も本当に不安だった。私みたいな人間がまともな学校生活を送れるのかって思ってたの。でも入学式の日に出席番号順で、私たち席が前後になったでしょ?」
「吉岡と渡瀬だもんね」
「あの時、実はガッチガチに緊張してたんだけど、ひかるの無邪気な笑顔を見てたらなんだか気持ちが晴れ晴れとしてきちゃって。私のことを名前で呼んでくれたのもひかるが初めてだったんだよ。すっごく嬉しかったんだ」
「私こそお礼を言わなきゃ。一人だったら、今頃学校をやめていたかもしれない。クラスの子から無視されて本当に辛かったし。でも、理香が一緒にいてくれたから、なんとか登校できたんだと思う」
「私ね、イジメをする奴が許せないんだ。無視される辛さを知ってるから。だから、どんな事があってもひかるの味方でいようって心に誓ったの」
その時、ガラっという音と共にお母さんが病室に入ってきた。
「理香ちゃん、ジュース飲んで」
お母さんは果汁100%のオレンジジュースを差し出し、理香に渡した。
「ありがとうございます。遠慮なくいただきます」
「あら、二人の邪魔をしちゃったかしら?」
お母さんは少し居心地の悪そうな顔を浮かべ、私を見た。
「あの、帰りますね」
「え? 理香ちゃんもう帰るの?」
「はい。私にはこれからやるべきことがあるんです」
理香は何かを決意したような顔つきで、「バイバイ」と言い残し、スカートをひらりと翻して病室を後にした。




