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壊れた心

新たに本小説『永遠とわの愛』をお気に入り登録してくれた方がいらっしゃいました。継続的に読んでいただいてすごく嬉しいです!どうもありがとうございます^^ これからもよろしくお願い致します♪

 私は先生の足手まといになっている――。中田先生の放った言葉が、頭からずっと離れない。自分でも自覚はあったが、他人からズバっと指摘をされると、より心に深く突き刺さる気がした。

 中田先生との浮気を疑われ、学年主任の前で醜態をさらした揚句、チンピラに記憶が無くなるほど殴られた翔お兄ちゃん。私はそれを止めることもできず、ただ走って逃げるしかなかった。私には最初から翔お兄ちゃんの恋人になる資格なんてなかったのだろう。自分が惨めで情けない。私のせいで翔お兄ちゃんの家族までもが悲しみに暮れている。記憶を失った原因の一つがストレスだった事も私には大きなショックだった。恋人として、私は何をしてあげられたのだろう。結局この数ヶ月間、私は翔お兄ちゃんにストレスという苦しみを与え続けていただけの存在だったのかもしれない。

 考えれば考えるほど、自分という存在が無意味なものに思えた。私がいることで、誰かが幸せになっただろうか。理香だって私さえいなければ、クラスから無視されることもなかっただろう。両親だって無理に結婚することはなかっただろうし、お父さんが血のつながりのない子を苦労して育てようとする必要もなかったはずだ。翔お兄ちゃんの家族にも迷惑をかけずに済んだだろうし、中田先生だって我欲むき出しな姿をさらして私を責め立てることはなかったのかもしれない。全て私が原因なのだ。私というこの存在が、周りの人を狂わせているのだ。

 自分の部屋でベッドに腰をかけていた私は、その場でよろよろと立ちあがって少し歩き、机の引き出しからカッターを取り出した。そして、ためらうことなく渾身こんしんの力を込めて左手首に刃をあてる。目の前で、赤い液体が勢いよく流れ出た。だが、私は微塵みじんの怖さも感じなかった。それどころか、言いようのない安心感を覚えた。これで誰のお荷物にもならずに済む。これ以上、何の苦しみを抱える必要も与える必要もないのだ。そう考えただけでスーッと気が楽になり、薄れゆく意識の中で沸き上がる幸福感を噛みしめた。

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