受け入れがたい現実
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翔お兄ちゃんがはめてくれた指輪は、その存在を誇示するかのように夜の闇の中でキラキラと輝きを放っている。ハート型にかたどられた小さなダイヤモンドが、ふたつ寄りそうようにして並んでいる。まるで愛し合う恋人同士のように。左腕を少し伸ばしてフロントミラーの方にかざし、少し左右に揺らしてみる。サイズまでぴったりの指輪をプレゼントしてくれるなんて……。あまりの嬉しさに、目の前が涙でにじむ。
「どうした? 泣いているのか?」
心配そうな声で、翔お兄ちゃんは私の頬に手を当てた。そして、優しい手つきで下まぶたから落ちる涙の跡をぬぐう。
「サイズ、ぴったりだけど」
「ん?」
「どうしてわかったの?」
「お前の小さい手を想像しながら適当に選んだんだよ」
「えー! 絶対うそ。密かに測ったんでしょ」
「いやいや、違うって。ひかるの指ならこれぐらいだろうって店で考えて買ったんだって」
そういえばさっき指輪をはめてくれた時、翔お兄ちゃんの指も少し震えていたような気がした。これって、翔お兄ちゃんもドキドキしてたってこと? こんな風に、誰かに指輪を贈ったのは初めてだったのかな。
「ねぇ翔お兄ちゃん、今日ってなんか特別な日だっけ?」
「なんで?」
「どうしてこんなに優しくしてくれるのかなって。さっきからプレゼントもらってばっかだし」
「来週、お前の誕生日だろ」
何年もの歳月が流れても、誕生日を覚えててくれていたことがすごく嬉しかった。
「でもその日は一緒にいられない。だから今日、前祝いをしたいと思って」と、翔お兄ちゃんは申し訳なさそうに言った。
「誕生日なんて気にしないでいいよ。用事があるの?」
「来週の月曜からバスケ部の顧問を引き継ぐことになった」
「え? 急にどうして?」
「川元先生がヘルニアで入院することになっただろ? でも、まだ新しい顧問が決まってなくて、俺にお鉢が回ってきたんだよ」
「そうなんだ……」
「ごめんな。しばらく忙しくなるから、放課後には会えなくなる」
いつまで待てばいいのかわからないまま会えなくなることが、すごく寂しい。翔お兄ちゃんとの間に大きな距離ができてしまうような、なんとも言えない嫌な感じがじわっと胸に広がる。
「補習もできないんだよね?」
「あぁ、そうだろうな」
私は自分の意志とは逆に、「がんばってね」と無理に笑顔を作った。悲しそうな顔を浮かべる翔お兄ちゃんを見ていると、今はそれしか言えなかった。
翔お兄ちゃんの言っていたことは、すぐに現実になった。月曜日の放課後、理科準備室には誰もいなかった。「もしかしたら」という淡い期待は、あっさりと崩さ去る。翌日の火曜日は私の誕生日だった。でも予告された通り、翔お兄ちゃんの姿を見ることができたのは、ホームルームと生物の授業中だけだった。そして、翌週も、翌々週も状況は変わらなかった。胸がぎゅっと締めつけられる。呼吸が苦しい。暗い穴の中に突き落とされ、這い上がることができない――そんな、救いがたいような気持ちになっていた。私はこの状況のままで、一体あと何日耐えられるんだろう。もらった指輪をぎゅっとにぎる。
「翔お兄ちゃん……」