表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/75

指輪

昨日、本小説「永遠とわの愛」をお気に入り登録してくれた方がいらっしゃいました^^本当にありがとうございます!感謝です♪

 プリクラマシンを離れ、俺たちは手をつないだまま階段を一歩一歩上がっていった。ひかるの手の平から伝わってくる温かいぬくもりが心を和ませる。このまま時が止まってしまえばいいのにと思った。

 硬貨を入れて、UFOキャッチャーの前にひかるを立たせた。腕は悪くない。でも、肝心なところでつかみかけたぬいぐるみを落としてしまう。何度も引っかかりそうになっては、するっと抜ける。八回ほどトライしたところで、ひかるは悔しそうにガンっとプラスチックの台を叩いた。「出てこないかなー」と言いながら、景品が出てくる穴をのぞきこむ。そして、泣きそうな顔で「取れないよ」と呟き、その場にしゃがみこんでしまった。

「……ったく、しょうがねぇな」

 俺はレバーを握った。ウィーン――ガコン――。フレンチブルドックらしき潰れた顔のぬいぐるみが出てきた。全長七cmくらいで、頭と鼻の部分が異常に大きく、胴体は短く小さい。頭にはストラップらしきものもついている。

「翔お兄ちゃん、すっごい! 上手すぎるよ!」

 パチパチと手を叩きながら横でひかるが大きな声を出した。

「お前もやってみろ。教えてやるから」

 ひかるの手をレバーに置く。上から、自分の手をぴったり重ね、そのまま誘導した。ウィーン――ガコン――。

「うっそ! 一回で取れるなんてすごい!」

 ひかるは大きな目をきらきらと輝かせて、本当に嬉しそうな顔をする。

「二つあるから、翔お兄ちゃんとおそろいだね! いろんな犬種のぬいぐるみがあるのに、フレンチブルが連続で取れるなんて不思議っ!」

 まるで子どものように小躍りして喜ぶ姿を見ていると、あの頃――そう、八歳の頃のひかるが戻ってきたような気がした。

「これ、はい」

 さっき取ったぬいぐるみをひかるが両方差し出す。

「いらないのか?」と聞くと、ひかるは首をぶんぶんと大きく横に振った。

「ちがう、本当は欲しいよ。でも、UFOキャッチャーで取るぬいぐるみはお礼って言ったでしょ? だから、これは翔お兄ちゃんの」

「でも、俺が二個持っててもしょうがないし。片方はお前が持ってろ」

「え? いいの? 本当に?」

 ひかるの顔がぱっと明るくなる。昔からぬいぐるみ好きなところは変わってないんだな……。あの頃も俺が取ってきたUFOキャッチャーの景品を、胸に抱きしめて大事に飾っていた。

 車に戻り、ひかるを助手席に乗せる。そして、俺は、同じシリーズのチワワのぬいぐるみをポケットから取り出した。

「これもお前にやる」

「チワワ! 飼いたいって言ってたの覚えててくれたの?」

 ひかるは目を細めてぬいぐるみを撫でた。

「あれ? このチワワ、なんか縫い目が変」

 やっぱりすぐに気づかれてしまった。ひかるは後頭部の縫い目に沿って指をあてている。本当はあとで驚かせるつもりだったけど、ここでバレちゃってもいいか……。

「そこ、開けてみて」

「開けるって、糸をほどいていいってこと?」

「そう」

 俺は小さなハサミを取り出して渡した。ひかるは理解できないといった様子で、ゆっくりと糸を外す。かなり緩く縫ってあるせいか、簡単に中綿が露出した。予想通り、ひかるの反応はいつもストレートだ。顔に大きな疑問符がくっついている。

「中から指輪が出てきたけど? なんで……?」

 少し考えてから、「もしかして、翔お兄ちゃんが……?」と言い、ゆっくり顔を上げた。俺は黙って頷いた。

 昨日の夜も俺はここに来て、UFOキャッチャーでチワワを取った。そして後頭部の部分をほどいて、買っておいた指輪を入れ、ゆるく糸で縫いつけた。裁縫は、中学時代に家庭科でボタンの付け方を習って以来だった。やり方がわからなかったから、ネットで調べながら一時間くらいかけて仕上げたのだ。

 驚きを隠せないといった表情で目をパチパチさせるひかるから、俺はそっとチワワを取り、中の指輪を抜いた。そして、ひかるの左手を取って甲を上にさせると、薬指に指輪をはめた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ