彼が残したゴミの日の通知
掲載日:2026/02/07
葬儀が終わって、部屋に一人で戻った。
静かすぎる。
靴も、上着も、そのまま残っているのに、
もう帰ってこない。
スマホを開いても、
連絡先の一番上に名前があるだけだ。
押しても、もう出ない。
分かっているのに、
何度も画面を見てしまう。
ベッドに倒れ込み、
天井を見る。
涙も出ない。
ただ、空っぽだった。
不意に、スマホが震えた。
通知。
心臓が跳ねる。
でも、違う。
カレンダー通知だった。
【ゴミの日、忘れないで】
思い出す。
同棲したばかりの頃、
自分が何度も出し忘れて、
彼が笑いながら設定した通知。
「俺いなくなったら、絶対忘れるだろ」
そんな冗談を言っていた。
スマホを握ったまま、
しばらく動けなかった。
いなくなった。
もう触れられない。
でも。
確かに、
ここで一緒に笑って、
暮らしていた。
ゴミの日を気にして、
くだらないことで笑って、
喧嘩して、仲直りして。
ちゃんと、
一緒に生きていた時間があった。
涙が、やっと落ちた。
通知を消す。
立ち上がる。
ゴミ袋を持つ。
ドアを開ける前に、
小さく呟く。
「……行ってくる」
返事はない。
でも。
少しだけ、
部屋が温かい気がした。




