照らす者
泣いている子が居た。だから私はその子を笑顔にするために杖を一振りし、綺麗な妖精を呼び出し目の前で踊ってもらった。
泣いていた子はすぐさま笑顔になり、元気に「ありがとう」と言ってどこかへ行ったのだ。
苦しんでいる老婆が居た。だから私はその老婆を助けるために杖を一振りし、辺りに薬草を生やした。そしてその薬草を組み合わせ、また杖を一振りで薬が完成。それを老婆に飲ませると元気になり、また「ありがとう」と言われ、老婆も去って行った。
私はそれからも、死にかけそうな青年や捨てられていた赤子、様々な苦痛などに直面した人々に杖を一振りしてきた。そんな事をしていると噂になり、人々は私のことを救世主と呼び出した。
とある日、歩いていたら1人の男性に声をかけられた。「救世主様、お助けください」そう言われた。なんでもその人の子供が病で倒れ治らないらしい。
私はその子前で杖を一振りした。でもその子は治らなかった。何度杖を一振りしても治らなかった。その子の両親は怒鳴って「救世主じゃないのか!」と言ってきた。私は自分で救世主と名乗ったことはないのだけれど。
私は疲れていた。最初はちょっとした人助けのつもりだったのだ。しかし、最近ではこのように作業になっている。もう良いだろう、杖を振るのはお終いだ。
私はその場で呪文を紡ぐ。心臓が強く鼓動する。自身が光に満ちる。これで準備は完了した、私は杖を子供へ向ける。私を纏う光が子供へ流れていく。
光が全て子供へ渡った時、その子は目を覚まして起き上がった。それを見た両親は駆け寄って抱きついて喜んでいた。
私に「ありがとうございます」と言っているがもう聞こえない。私はもう力尽きて、心臓も止まっているから。




