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ビート&ヨーン  作者: ダメだ里香ちゃん


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最終決戦②

独り残されたルシファーは、内壁を叩き壊そうと狂ったように暴れるが、短く鈍い衝撃音が響くだけ、透明の監獄は微塵も揺らがない。

神々が冷気を放ち、透明の球体ごとルシファーを凍結させていく。

やがてルシファーは芯まで凍りつき、その動きを完全に止めた。

決着が付いたと思われたその時、上空で、一つの光の点が爆発的な輝きを放った。

次の瞬間、大地が、空が、視界に入る全ての景色が猛烈に揺さぶられた。ほとりに陣を構えていた六十万のロマール軍は、突如として天から降ってきた「質量」の下敷きになり、無慈悲に踏み潰された。

天から降臨したのは、超巨大戦艦アザトースをスプーンのように易々とへし折り、咆哮を上げた**「獅子の姿をしたルシファー」**であった。

獅子のルシファーの瞳が青白く輝く。そこから放たれた無数のレーザー光線が、逃げ場のない神々を正確に捉えた。

かつての支配者たちは、為す術もなく次々と爆破していく。獅子のルシファーがその場でただ足踏みをしただけで、ロマール軍の残存戦力もろとも、数千年の文明を誇った軍勢は無惨に圧殺された。

獅子のルシファーが、凍結した透明の球体を爪先で掴み、握り潰す。

中から、白い息を吐きながら「蛇顔のルシファー」が這い出した。

彼は磔刑に処された罪人のように両手を広げ、だがその顔は傲慢に上空を見上げ、世界に向けて高らかに宣誓した。

《我が名はルシファー! 人間の罪は全て私が引き受けた。故に全ての人間は如何なる罪を犯そうと……無罪であるッ! 人間よッ! 今こそ世界を征服し、魔王となれぇぇぇぇぇ!》

大地に穿たれた巨大な穴から、再びどす黒い泥が溢れ出す。瞬く間に泥沼が再構築された。

神々は、敗北したのだ。

ルシファーが真の神王となり、世界を統べる新たな秩序そのものとなった。

仕事を終えた獅子のルシファーは、緑色の光の粒子となって霧散していく。その粒子は風に乗り、呪いのように世界中に散らばっていった。

蛇顔のルシファーを取り囲もうとする、わずかな光の群れがあった。鏡の盾を構えた、旧来の神々の残党だ。

彼らはパラボラアンテナのように陣を組み、ルシファーを焼き尽くさんと、日光を一点に収束させる。猛烈な火柱が上がった。

だが、ルシファーは燃え盛りながらあぐらを組み、涼しい顔で言い放った。

《古臭い神々など不要だッ!》

彼が勢いよく合掌した瞬間、衝撃波が空気を引き裂き、神々は鏡の盾もろとも粉微塵に爆破された。

レオンハルト率いるイザベルの民は、尾根から尾根へと疾走しながら、その地獄を目の当たりにしていた。

誰もが理解した。世界の守護者はもういない。

「行先はこのままロマールでいいのかっ!?」

カミロが改めてレオンハルトに確認した。

「緑の光から逃げるのが先決だ!」

並走するフェンリルの王が鋭く助言する。

「ゴーレムの遺跡だ! あの中に滑り込み、入口にバリアを張る!」

レオンハルトの号令で銀狼たちが一斉に山を下った。先頭のフェンリルが風魔法で枝葉を薙ぎ倒して進路を切り拓き、一行は密林を一直線に進む。崖を飛び降りた先、洞窟のように口を開けた「王家の遺跡」へ雪崩れ込んだ。

地震から運良く生き残った人間たちは、空から降り注ぐ緑の光に、自ら吸い込まれるように手を伸ばしていた。

それは、ここまで魔王軍に追い詰められた人間に差し伸べられた「真の救い」に他ならなかった。

緑の光は人間の鼻、口、耳、眼球の隙間から侵入し、脳をジャックする。

光を取り込んだ人間は、こめかみから頭頂部に向かって太い血管が隆起し、頭部が風船のように膨れ上がる。彼らは一瞬で、ルシファー教の敬虔な信者へと変貌した。

《我を信ぜよ……我を信じる者たちよ、聖地に集え……さすれば天の国に誘わん……》

ルシファーの声に従い、信者たちは重く膨らんだ頭をゆらゆらと揺らしながら、山麓の泥沼を目指して行進を始めた。

「異教徒は殺せぇぇぇぇぇ!」

突如、誰かが叫んだ。

すると信者たちは、弾かれたように周囲の者を睨みつけ、素手で殺し合いを始めた。

だが、それはもはや罪ではない。ルシファーの世界では、人間は何をしても「無罪」なのだから。

「女は俺に従えぇぇぇぇぇ!」

「男は私に奉仕しろぉぉぉぉぉ!」

次々と己の欲望を叫び、衝突し、共喰いが始まる。そのせいで行進は一向に進まない。

独りで歩き出した者は巻き添えを食らわずに済んだが、結局どこかで他の集団と合流し、殺し合いに飲み込まれていく。

「神よ、お助けください……」

木陰で震える信者が現れると、周囲の者も反射的にそれを真似て、理由も分からず震え出した。

だが、その直後には、何の前触れもなく弾かれたように欲望を叫び、隣人の喉笛を掻き切る。

これが、ルシファーがもたらした**「新秩序」**。

絶対的な肯定が生んだ、最も醜悪な地獄の始まりであった。


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