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ビート&ヨーン  作者: ダメだ里香ちゃん


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燃え上がる闘志

オルドヴィアの建国、そしてかつて最愛の友であった人間に裏切られ、絶望と共に去っていった若かりし頃の女王の記憶。そのすべてを「追体験」として受け止めたレオンハルトは、現実へと戻り、目を開くと同時に迷いなく断言した。

「一つ目の法を定める」

その声には、一国の王子としての威厳と、己の無知を恥じる痛切な決意が籠もっていた。

「人間に奉仕してくれた動物を、正式に国民として国に迎え入れる。その際、人々が責任を実感できるよう、小規模であっても必ず式典を執り行う。そして、一度迎え入れた動物を屠殺することはもちろん、虐待することも人間に対するそれと同等に、厳罰に処す。人間だけを優遇することがあってはならない」

レオンハルトは、かつて自分が何の疑問も抱かずに放った言葉を思い出していた。グンとブリューがまだ赤子だった頃、彼らにミルクを与えてくれた山羊を、自分とカミロは「用済み」として当たり前のように食べようとした。

苦虫を噛み潰したように、彼は顔を歪める。

(私は……なんと愚かなことを平然とやっていたのだ。グンとブリューは、ただ共に遊んでくれただけの人間の子供たちを守るために、命すら惜しまないというのに)

心底、己が情けなかった。だが、悔やんでいる暇はない。レオンハルトの瞳に、鋭い闘志が宿る。

「……全ての人間がこの法を受け入れるとは到底思えない。だが、法に従わぬ者に未来はない」

新王となった老狼が静かに問う。

「どうするつもりだ。全ての人間を滅ぼすのが神王の意志だぞ」

「新しい国を建てる」

レオンハルトは即座に答えた。

「もう一度、人間の社会を作り直すんだ。神獣と共に歩む、真実の国を」

その力強い宣言は、出口の見えない闇をさ迷い続けていた特別攻撃隊にとって、ようやく射し込んだ一筋の希望だった。たとえそれがどれほど困難な道であろうと、彼らが怯むことはない。

「どこから手を付ける? 移民を募るか? 土地を確保するか?」

カミロが真っ先に問いかけ、具体的かつ迅速に策を押し進める。

「移民が先だ。我らが根城とする土地はこの、オルドヴィア山脈そのものだ」

ルカが続いた。

「二手に別れるのはどうかな? 僕とカミロ、ブリューはメルカトリアへ。王子とグンはオルドヴィアへ。時間の短縮になる」

「もう時間がない」とレオンハルトを急かしたグンの判断と、極限まで建国に掛かる時間を短縮しようとしたルカの判断は、残酷なまでに正しかった。

大陸の北部を支配するクトゥルヒ人たちは、魔王城墜落の知らせを受け、既に冷徹な進軍を開始していたのだ。

人間たちが魔王軍の残党と戦っている間も、彼らの進軍は一度として停滞しなかった。先遣隊は既に、かつて特別攻撃隊が占拠し、現在はメルカトリア軍が駐留している北方の要衝、あの城砦の目と鼻の先にまで到達していた。

主戦力は、サイクロプスでもワイバーンでもない。人間側から奪い、彼らの叡智によって禍々しく改造された技術の結晶――「自動歩兵機」の大軍だった。魔王軍の幹部たちは、いかなる優勢にあろうとも、第一陣が敗れ兵を失う可能性を常に考慮し、予備戦力である第二陣の準備を怠ってはいなかったのだ。

城砦の見張り台。北の空を見張っていたメルカトリア兵の鼻を、嗅ぎ慣れた、しかしどこか異質な臭いがくすぐった。

「……聖油の臭いか?」

眼下の演習場に火の気はない。兵士は人差し指を舐めて風向きを確認したが、風は冷たい北風だ。北の国々はとうの昔に魔王軍に踏み潰されているはず。ならば、この焦げ付いた聖油のような甘い臭いはどこから来るのか。

「なぁ、変な臭いがしなかったか? 焦げたような……」

隣の兵士に確認するが、「さあ? 気のせいだろ」と間の抜けた返事が返ってくる。

(気のせいか……)

そう思い直した刹那だった。

空を裂く青白いレーザー光線が走り、二人の兵士の首が音もなく切断された。続けて城壁が激しい銃撃にさらされ、石礫が弾け飛ぶ。

「敵襲ーーーーーッ!」「敵襲ーーーーーッ!」

城内に警報が鳴り響き、兵士たちが混乱の中で走り出す。一階の倉庫から、防衛用の自動歩兵機が出撃しようとした瞬間、それを待ち構えていたかのような銃撃の雨が浴びせられ、爆発した。

それでも止まるわけにはいかない。炎上する仲間の残骸を乗り越えて、次の機体が出撃する。だが、無事に出撃できた機体は全体の三分の一にも満たなかった。

人間の自動歩兵機対、クトゥルヒ人の自動歩兵機。

それは物量、性能ともにクトゥルヒ人の圧勝だった。

両手を頭の後ろで組み、跪いて降伏を請う兵士たちも現れたが、ある程度人数が集まったところで、無慈悲にレーザー光線の餌食となった。

スケルトンの歩兵を引き連れ、血の海と化した城内に侵攻した四つ目の悪魔は、執務室に辿り着くと、待ち構えていた人間の司令官を、手刀の一撃で瞬殺。何事もなかったかのようにその椅子に腰を下ろした。

そして、傍らに跪いた獅子仮面の上位魔族に冷徹な命令を下した。

「ここを拠点とし、反撃を開始する。……神々に残された時間は少ない。急げ」


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