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決戦①

~特別攻撃隊の紹介~


【レオンハルト】

辺境の小国、オルドヴィア王国の王子。魔王を討つため、特別攻撃隊を編成した。度が過ぎるほどの生真面目。


【グン】

レオンハルトに育てられたフェンリル(神獣の銀狼)の双子の兄。冷静沈着で自信家。


【カミロ】

騎士。故郷の村を魔族に蹂躙された過去を持つ。陽気で荒っぽい。


【ブリュー】

カミロに育てられたフェンリルの双子の弟。好奇心旺盛で無鉄砲。


【ルカ】

魔法使い。奴隷のように働かされていた採掘場から連れてこられた。温和で仲間思い。


挿絵(By みてみん)


「……そろそろだ」

レオンハルトが低く呟くと、先頭を行くブリューがぴたりと足を止めた。

カミロとレオンハルトを降ろすと、ブリューとグンは「ぶるぶるっ」と体を震わせて冷たい海水を振り払う。一息つく間もなくあるじを再びその背に跨らせると、垂直に聳え立つ岩肌を一気に駆け上がった。

跳び下りた眼前に広がるのは、頭の中で幾度となく描き、シミュレーションを繰り返した魔王軍の城塞。

だが、想定外の光景があった。城塞の屋上を覆い尽くさんばかりの巨躯を横たえた、巨大な竜――ワイバーンが、紅い瞳でこちらを覗き込んでいたのだ。

ワイバーンの耳をつんざく咆哮。だが、特別攻撃隊に臆する者はいない。

「あいつを相手にしている暇はない! 三階から行くぞ!」

レオンハルトの号令。ワイバーンの獰猛な噛み付きを紙一重でかわしながら、二頭の神獣は城壁を垂直に疾走する。そして三階の窓を、周囲の石壁ごとぶち破り、城内へと雪崩れ込んだ。

ひた走る。立ち止まることは許されない。

廊下の先から大群で押し寄せる魔族の兵士を、ルカが磨き上げた最強の矛が薙ぎ払う。真っ二つになった胴体が床に落ちるよりも早く、二頭の神獣は階段を駆け上がった。

最上階に辿り着いた瞬間、殿しんがりのグンが跳躍し、レオンハルトが矛で天井を切り裂いて瓦解させる。既に反対側の階段へ向かっていたブリューも、カミロと共に天井を崩落させた。

追っ手の路は塞いだ。これでわずかな時間を稼げる。

グンとブリューの間に、嫌悪感を覚えるほど豪奢な扉がある。

歩調を合わせ、一気に加速。二人の体当たりが同時に扉を粉砕し、一行は「敵」の懐へと飛び込んだ。

広い部屋の奥。漆黒に艶めく巨躯の鎧兜が、玉座に深々ともたれていた。

余裕を誇示するように片肘をつき、リラックスした態勢。こいつが幹部だ。

「ほう……神獣フェンリルか。これは珍しい」

背後の窓からは、ワイバーンの紅い瞳が部屋の中を凝視している。

玉座の傍らには、マントを羽織った痩身の悪魔が控えていた。

「人間、よくぞここまで辿り着いた。見事な奇襲だ。褒めて遣わそう」

だが、レオンハルトに言葉を交わすつもりなど毛頭ない。痩身の悪魔の直線上に位置取ったグンが、間髪入れずに突進した。

悪魔が咄嗟に掌を翳す。バリアか攻撃魔法か。

それが発動するより早く、グンがフェイントでかがみ込み、上体を横に倒したレオンハルトの矛がアッパーとなって悪魔の顔面を捉えた。

悪魔は上体を逸らして辛うじて避け、打ち下ろしの一撃をレオンハルトの顔面に叩きつけた。

凄まじい衝撃。後頭部が床を砕き、破片が飛び散る。

だが、レオンハルトは離さなかった。叩きつけられた衝撃を利用し、悪魔の腕に両手両足を絡ませ、完璧な「腕ひしぎ十字固め」を決めていた。

躊躇はない。一思いに引き絞る。ミシリと、骨が砕ける鈍い音が響いた。

その間、グンも悪魔の首元に深く牙を突き立てていた。

悪魔はゆっくりと首を回すと、人間の限界を超えて大きく口を開き、グンの頭頂部へと噛み付いた。蛇のような大口の隙間から、グンの荒い鼻息が漏れる。

幹部は、今にも首を食いちぎられそうな仲間には一瞥もくれず、ただブリューとカミロを凝視し続けている。二人もまた、幹部の隙を伺い、睨みつけたまま動かない。

立ち上がったレオンハルトが、矛で一閃。悪魔の胴体を真っ二つに裂き、グンに噛み付いたままの頭部を上半身ごと引き剥がした。

返り血を振り払うように、グンが咆哮を上げた。

それでようやく、幹部がグンへと視線を移した。その瞬間、ブリューが一直線に走り出す。レオンハルトもグンに飛び乗り、円を描いて加速の態勢に入った。

カミロが突き出した矛先が、兜の奥の目玉を貫こうとした、その刹那――。

「……ぱんっ」

幹部が、退屈そうに拍手をした。

直後、部屋全体に青白い電流の網が迸る。窓ガラスが砕け散り、悲鳴を挙げてワイバーンが顔を背ける。

加速していたブリューとカミロは、弾け飛んだ。幹部の背後の壁へと激突し、対角線上の壁にはグンとレオンハルトが打ち付けられた。

「く……ぅ……っ」

レオンハルトが、震える腕で立ち上がろうとする。

「ぱんっ……」

幹部が無造作に手を叩くと再び猛烈な電流が流れ、レオンハルトは床にひれ伏した。

拍手が鳴るたび、四人の体は、糸の切れた人形のようにピクンと跳ねては崩れ落ちる。やがて彼らは、ぴくりとも動かなくなった。

雷鳴のような轟音が去った後、部屋には耐え難いほどの静寂が降りた。

窓の外で、恐怖に駆られたワイバーンが遠ざかっていく大きな羽ばたきだけが、空虚に響いている。

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