特別攻撃隊
~特別攻撃隊の紹介~
【レオンハルト】
辺境の小国、オルドヴィア王国の王子。魔王を討つため、特別攻撃隊を編成した。度が過ぎるほどの生真面目。
【グン】
レオンハルトに育てられたフェンリル(神獣の銀狼)の双子の兄。冷静沈着で自信家。
【カミロ】
騎士。故郷の村を魔族に蹂躙された過去を持つ。陽気で荒っぽい。
【ブリュー】
カミロに育てられたフェンリルの双子の弟。好奇心旺盛で無鉄砲。
【ルカ】
魔法使い。奴隷のように働かされていた採掘場から連れてこられた。温和で仲間思い。
最初に目を覚ましたのはカミロだった。
洞窟の入り口、逆光を浴びて輪郭がぼやけているのはルカの背中だ。地平線に薄く浮かび上がった朝日を眺めている彼に、カミロが声をかけた。
「……寝てないのか?」
返事はない。波の音だけが洞窟に響く。ずいぶんと時間が経ってから、掠れた声が返ってきた。
「……寝れるわけ……ないだろ……」
「……そうか」
カミロがルカの手元を確認すると、そこには一晩中魔力を注ぎ込み、神々しいまでの光を帯びた矛があった。
「最後まで仕事熱心なこった」
「当たり前だろ」
「最初はあんなに嫌がってたくせに」
また、沈黙が流れる。しかし数拍置いて、当時の自分を思い出したのか、ルカが小さく吹き出した。
それでカミロも、少しだけ肩の力が抜けるのを感じた。ルカの隣に腰を下ろし、その横顔を覗き込む。ルカは泣き腫らした目を隠そうともせず、虚ろな、だがどこか澄んだ瞳で朝日を見つめていた。
「お前の言いたいことは……言わなくても分かるよ。みんな、分かってんだよ」
カミロの不器用な慰めに、ルカはこくりと小さく頷いた。
「最後だからよ、なんか願い事があるなら聞いてやるぞ。俺の出来る範囲でいいならな」
少しでもルカの心を軽くしたくて、カミロはそう提案した。
「……海で……グンとブリューと、みんなで遊びたい……」
その、あまりにもバカ正直で無垢な願い事に、カミロは思わず吹き出してしまった。
「お前、もっとこう……生きて帰ってきてくれとかさ、言うべきセリフがあるだろ」
するとルカは、カミロを睨みつけるように顔を上げた。
「……生きて帰ってくるのは当たり前だろ! だから、そんなの願い事にするのは、おかしいだろっ」
「……そうだな。全くだ」
カミロは自嘲気味に笑い、立ち上がった。
朝日が地平線を離れ、世界が眩い黄金色に染まる頃。
一晩かけて練り上げられた最高精度の強化魔法を纏い、レオンハルトを乗せたグンと、カミロを乗せたブリューが、決然と立ち上がった。
ルカはもう泣いていなかった。
覚悟を決め、凛とした表情で、自らの誇りである「最高傑作」たちの背中を見送る。
特別攻撃隊は、迷いなく海沿いの崖へと駆け出していった。
岩を砕き、風を切り裂くその疾走は、もはや死へ向かう者のそれではなく、希望を掴み取ろうとする神獣の躍動そのものだった。




