制圧作戦①
~特別攻撃隊の紹介~
【レオンハルト】
辺境の小国、オルドヴィア王国の王子。魔王を討つため、特別攻撃隊を編成した。度が過ぎるほどの生真面目。
【グン】
レオンハルトに育てられたフェンリル(神獣の銀狼)の双子の兄。冷静沈着で自信家。
【カミロ】
騎士。故郷の村を魔族に蹂躙された過去を持つ。陽気で荒っぽい。
【ブリュー】
カミロに育てられたフェンリルの双子の弟。好奇心旺盛で無鉄砲。
【ルカ】
魔法使い。奴隷のように働かされていた採掘場から連れてこられた。温和で仲間思い。
次にレオンハルトが選んだ訓練場は、今や凶悪な魔獣の巣窟と化した古城だった。魔王軍が構える不落の要塞。それを想定した、夜闇の中での強襲訓練。
「行くぞ……!」
レオンハルトの低い声を合図に、グンとブリューが動き出す。二頭はゴーレムの遺跡で培った脚力を爆発させ、垂直に切り立つ城壁を迷いなく駆け上がった。最上階の窓を、周囲の石壁ごと力任せに突き破り、城内へと同時になだれ込む。
そのまま廊下を、疾風となって翔ける。目指すは幹部の居室に見立てた一室。そこには、幹部役のルカが待ち構えていた。
「行きますよ……! はぁっ!」
ルカの手から、無数のファイヤーボールが部屋を埋め尽くすように放たれる。だが二人は、その灼熱の弾幕を紙一重で回避しながら距離を詰め、ルカの額に優しく鼻先でタッチした。
「……よし、タイム更新だ!」
ルカが喜び、二人を褒める。その無邪気な様子を見ていると、一瞬、夜の城で遊んでいるような錯覚を覚えるが、これは正真正銘の軍事訓練だった。
不測の事態に備え、レオンハルトは何度もパターンを変えた。最上階以外の窓からの侵入、二手に別れての攪乱、あるいはルカが一方の進路を徹底的に妨害し、遅れたもう一方を迎えに行かせる。
どんなトラブルが起きようとも、幹部の部屋には必ず「同時」に到着する。その時間の感覚を、彼らの細胞の一つ一つにまで叩き込んでいく。
妥協は許されない。妥協した分だけ、作戦が失敗し、仲間を失う可能性が高まるからだ。立案者のレオンハルトはもちろん、カミロも、そして彼らを支えるルカも、自然と訓練に込める力が激しさを増していった。
そのピリついた空気を、グンとブリューは敏感に感じ取っていた。
帰り道、二人はよく静かに目配せを交わした。夜の森、離れた場所で見つめ合うグンとブリューの間には、かつて初めてゴーレムを打ち破った時のような自信と結束、そして……迫りくる決戦に向けた、静かな「覚悟」が漂っていた。
三人は気づいていなかった。
女王から赤子のグンとブリューを授かったあの日。愛と忠誠を誓ったのは、レオンハルトとカミロだけではなかった。
まだ名すら与えられていなかったあの瞬間に、小さな二頭もまた誓っていた。
この、自分たちを慈しむ、傷ついた手を。この温かな人々を。
己の命に代えても、必ず護り抜くと。
焚き火を起こし、寝支度を整えると、ただいまとお帰りとお疲れ様を合わせたキスが来る。
成長し、戦士となった二頭の「あくび」の裏には、もはや甘えだけではない、鉄の意志が宿っていた。




