上陸作戦②
~特別攻撃隊の紹介~
【レオンハルト】
辺境の小国、オルドヴィア王国の王子。魔王を討つため、特別攻撃隊を編成した。度が過ぎるほどの生真面目。
【グン】
レオンハルトに育てられたフェンリル(神獣の銀狼)の双子の兄。冷静沈着で自信家。
【カミロ】
騎士。故郷の村を魔族に蹂躙された過去を持つ。陽気で荒っぽい。
【ブリュー】
カミロに育てられたフェンリルの双子の弟。好奇心旺盛で無鉄砲。
【ルカ】
魔法使い。奴隷のように働かされていた採掘場から連れてこられた。温和で仲間思い。
グンとブリューの背に跨るのは、もうルカだけではなかった。
成体へと至った二頭のフェンリルは、今や主であるレオンハルトとカミロをその背に乗せ、人獣一体の戦士として完成されつつあった。もはや森の獣では相手にならない。遭遇した瞬間に決着が付いてしまう。
「……もう一度、あの場所へ行く」
レオンハルトが腕試しの場に選んだのは、彼らの前に最初に立ちはだかった強敵、あの遺跡のゴーレムだった。
初めてこの地を訪れた時、レオンハルトとカミロが岩肌に突き刺す矛を足場にして降りていた崖。だが今は違う。二頭のフェンリルは強靭な脚力と、岩をも掴む鋭い爪の握力だけで、重力を無視するように軽々と断崖を駆け下りていく。
グンの背、王子の後ろに乗せてもらったルカは、振り落とされまいと必死に王子の腰にしがみついていた。
あっという間に入り口の広間に着地し、その時を静かに待つ。
地鳴りとともに岩壁が組み上がり、巨大なゴーレムが姿を現した。かつては絶望を感じたその威容を前に、四人は一糸乱れぬ歩調で左旋回を開始する。
それは、もはや「戦闘」と呼ぶにはあまりに一方的な「作業」だった。
左翼のブリューが弾丸のような速さで膝に飛びかかり、カミロが強化された矛の一突きでその関節を粉砕する。ゴーレムが体勢を崩したその刹那、既にグンは一旦ゴーレムから離れて戻るように大きく円を描いて加速している。死角からこめかみへと躍り出た。
レオンハルトの放った矛が、グンの跳躍の勢いを乗せて逆のこめかみへと貫通する。
次の瞬間、巨体は砂の城が崩れるように瓦解した。かつての強敵を塵に変えるまで、一分とかからなかった。
「……本当に強くなったんだ」
ルカは震える声で呟いた。その強さは、彼が心血を注いだ矛と、毎日のシャンプーで磨き上げた二頭の命の輝きそのものだった。
「この遺跡でゴーレムと繰り返し戦い、戦術を体に叩き込む」
レオンハルトが告げた。雛形は完成した。あとはいかなる不測の事態においても、この戦術を崩さず、たとえ崩されても即座に復帰できるよう、細部の細部に至るまで無意識に落とし込むのだ。
それと並行して、ゴーレムが復活するまでの間、彼は崖登りの訓練を課した。
崖の上からルカが絶え間なくファイヤーボールを打ち込み、グンとブリューがそれを回避しながら垂直の壁を駆け上がる。
「いいぞ、二人とも! タイムが上がってる!」
ルカは二人を褒め、鼓舞し続けた。しかし、その内心は複雑だった。
タイムが上がれば上がるほど、彼らが完成されればされるほど、死地へ向かう秒読みが早まっていく。
(……本当に、勝てるのか?)
魔王軍の幹部という、想像もつかない化け物たちに、二人は……四人は……勝てるのか。
その不安が、いつも脳裏をよぎってはルカの胸を強く締め付けた。
その不安を拭うように、ルカは夜な夜な矛先に強化魔法を練り込み、鎧の内側に緩衝魔法を練り込んだ。
焦燥した彼の顔を見て、夜番になった時にグンとブリューはいつも濡れた鼻を押し当てて彼を寝るよう促したが、ルカはいつも「――あとちょっと」と言って疲れた笑みを返すだけだった。




