表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/21

【白蛇】エピローグ

 ——音がない。

 光も、時間も、境界もない。

 ただ律だけが在った。


 ステラの魂は、再びレメルの懐へと還っていた。

 その毛並も姿も持たぬまま、無数の光の一滴として、果てしない宇宙の呼吸に溶けていく。


「なんとか、持ち直したみたいミュね」


 レメルの声は、光よりも静かに震えた。


「ミナは……まだ地で生きてるキュ。彼女の光が、森を守ってるキュ。ノーチスも、もう争わないキュ。

 ボクも、あの世界に戻るキュ」


「それでいいミュ。——世界は閉じず、また繋がるミュ。

 ステラの律は、もう一度、星々の調べに還るミュ」


 レメルの手が虚空を撫でた。そこに、ひとつの波紋が生まれる。それはやがて音となり、風となり、祈りとなって——無数の世界へと広がっていく。


 どこか遠い惑星の森で。どこか別の空で。無数の命たちが同じ言葉を口にしていた。


「きゅうん、あの世じゃないキュ!」

「きゅうん、あの世じゃないキュ!」

「きゅうん、あの世じゃないキュ!」


 その声は笑いにも祈りにも似て、星々のあいだからこだました。世界は終わらない。救いは終わらない。

 ——欠けた音がある限り、律は再び編まれるのだから。


 光の環がゆるやかに閉じる。それは、ひとつの物語の終わりであり、無数の命の始まりだった。

 そして、その中心で——小さな声が、また世界を開いた。


「お願いだキュ。はやく、あの子を助けて!」


 ——その声音は、鈴を震わせる如く澄んでいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ