神になったら、ただただ暇だった
気分転換に作りました
俺は崇められたかった。だから神になった。
こいつなに言ってるんだ? と思うだろう、だが俺はその経験をした。
とりあえず聞いて欲しい、俺の人生と神生を。
◇
「……崇められたい」
俺は小さい頃からそう思っていた。
園児のころから誰かに尊敬、畏怖されるように振る舞っていた、それも中学まで。
今思うと文句無しの黒歴史である、当時の俺を思い出すと死にたくなる程だ。詳細は言わない。
だが高校からはきちんとした学生をしていたはずだ、うん。
そうして何事もなく高校生活を送っていたが、俺の崇められたい欲は収まっていなかった。
突然だが俺の住む世界では一柱の神を崇拝していた。俺はその神のことを思い出し、こう思った。
(神にでもなれたらなぁ~、皆が崇めてくれるなんて俺の理想すぎるだろ)
そう思った瞬間、俺は見知らぬ真っ白な空間にいた。
俺が急な出来事に困惑していると、突如として声が聞こえた。声の方へ振り返ると、そこには神を名乗る人物がいた。
最初は疑念を抱いていたが、神の姿が世界で崇められている神と同じだと気がつき、俺は割とすぐに信じた。
信じた様子の俺を見て、その後神は俺にこう言った。
【神になりたいのだろう? 私の力を授けてやる、だからどうだ? 神になってみないか?】
と。
俺はその提案にすぐに乗り、その神の力を受け継いで神となった。
◇
そうして神となった俺は不老になり、数百年の時を過ごした。
元の神は俺が力を受け継いだ途端に消えた。あの神がどうなったのかは俺には分からない。
と、そんなことは置いといて、その後世界では神の姿は俺の姿で描かれていた、そして名前も俺の名前となっていた。
どうやら神が変わると世界の神への認識も勝手に変わるらしい。不思議なものだ。
とまあそんな感じで俺はたまに地上に降りたりして、人助けなどをして更に人々からの信仰力を高めていった。
そうして沢山崇められたのだが。
「暇だな」
そう、暇であった。
神になって二百年ぐらいは地上で色々やっていたがそれも飽き、それから数百年、俺が天界と呼んでいるこの真っ白な空間から地上の様子を眺めたり、神の力を使って天界まで届く人々の願いを叶えたり、新しい世界を創ったりなどをして過ごしていた。
しかしもう飽きた。
まさか神がこんなにも暇なものだとは思わなかったな。
せめて俺と同じような存在が居ればまだ良かっただろう、だがこの神の能力、実は生命を創り出せないという欠陥能力なのだ。初代神は一体どうやって生き物を創ったのだろうか、自然に出来たとでも言うのだろうか。
どちらにしろこの神の能力で新しく生命を創ることが無理というのは、何万回も方法を変えて試したので良く理解した。
「はぁ、どうしようか……」
もう崇められる感覚も嫌というほど味わい、もはや俺は神としての生活に苦痛すら感じ始めていた。
しかしそんな時。
『神様になりたいなぁ』
と、そんな強い願いが聞こえた。
「……あの神みたいに能力を授けて終わるか」
願いを聞いた俺はそんなことを思い、実行に移すことにした。
「まずは願いを発した者を召喚っと、よいしょ」
「ここは……?」
俺は願いの元を見つけ、その人物を呼び出した。
願いの人物は高校生ぐらいの少女であった。
「神になりたいんだって? 良いぞ、俺の力を授けるからお前、神にならないか?」
俺はかつて自分がされたように少女にそう提案をした、するとその少女はかつての俺みたくすぐに提案に乗ってきた。
人は願いが叶うと分かればすぐにそれに飛び付く。人生を大きく変える願いなら尚更だな。
俺はそんなことを思いながらも少女に力を授けた。
力を授けた俺はそのまま消える、まあ死ぬってことだな。
転生も考えたが、もう十分生きたので辞めた。
力を授け終わった俺は自分が消えていくのを感じながら目を閉じる。
(こんなに生きたけど少し死が恐ろしく感じるな、不思議だ……)
最期にそう思ったところで、俺の意識は消失した。
◇
「暇」
『神になりたい!』
「……あの神がやったようにして終わろうかな」
完