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ep14 子弟の契約

 翌日、僕とリーナはメイルの家を訪れた。


 緊張した面持ちで足を踏み出す。一歩一歩、足元が重く感じるのは心の中で不安が渦巻いているからだ。その反対に、リーナは周囲の景色に無邪気に目を輝かせながら、まるで新しい冒険に出るかのように元気よく歩いている。僕の不安をよそに、リーナは陽気な様子だ。


「リーナが羨ましいよ…」

「どうして?ミカも一緒にメイルさんの弟子になろうね!」

 呑気なもんだなぁ…


 メイルの小屋の前に立ち、ドアをノックしようとしたその時、奥から低い声が響いた。


「ミカか、入れ。」


 その声に、思わず立ち止まり、少し戸惑った後、重い手をかけてドアを開けた。


「さて、ミカ。昨日の話だが、君には私の知っている限りの魔術を教えよう。ただし、条件がある。」メイルは静かに、しかしどこか厳しい口調で言った。


「条件?」と思い、表情を引き締めながら答える。

「教えて欲しいです!」


 メイルは少し考え込むようにしてから、ゆっくりと続けた。

「一つ、この村にいる間、君が魔術を使えることを誰にも教えてはならない。私が魔術を使えることも含めてだ。」


 僕はその言葉になんだ、そんな事かと思い、冷静に頷いた。「それは問題ありません。」リーナの存在をちらりと見たが、すでにリーナがそのことを知っていることに気づき、軽い覚悟を決めた。


「二つ、領主や権力者との接触は禁止だ。君の魔術が知られると、利用されることになるだろう。」

 意外にも僕の心配をしてくれているのか?まぁ領主や権力者とは元々接点があるわけでもない。これも問題はないだろう。


「三つ、魔術の習得が終われば、上の二つの約束は無効だ。その後の君の生き方は君次第だ。」

 メイルが語るその言葉には重みがあった、僕は心の中で確かな決意を固めた。自分の手に委ねられた未来が、少しずつ形を成していくように感じた。


「わかりました。」深く頷き、メイルもそれを受け入れて満足そうに優しく微笑んだ。


「さて、まずは君たちの魔術量を測定しよう。」メイルは部屋の隅に置かれた、埃をかぶった古びた道具を取り出し、指示を出す。「手を出して。」


 何の前触れもなく、言われるがままに手を差し出す。すぐに指先に鈍い痛みが走る。驚く暇もなく、メイルがナイフで切った指から血が流れ落ち、道具の上にその血が落ちると、血の色が変化していく。透明に近い色に変わっていくのが不思議だった。


 メイルはその変化をじっと見つめた後、静かに告げた。「君の魔力は普通だ。私より若干少ないが、決して低くはない。」僕はその結果に内心で少し安堵した。自分で魔術を使えるという希望を再び得たのだ。


 次にリーナが手を差し出す。リーナはやや不安げな表情を浮かべつつ、道具に血を落とす。すると、僕の時よりも血液の色が変わるまでに時間がかかり、その変化の過程がゆっくりと進んでいくのを見て、メイルは一層驚いたように眉をひそめた。


 しばらくして、メイルは口を開く。「リーナ、君の魔力は非常に多い。見込みがある。おそらく素晴らしい魔術師になるだろう。」リーナはその言葉に満面の笑みを浮かべ嬉しそうに飛び跳ねた。おそらく僕より褒められた事が嬉しかったのだろう。


 メイルはその後、僕らに向かって静かに告げた。「魔術は力だ。しかし、使い方によっては多くの命を奪う事ができる。その事実は忘れるな。」そして、静かに微笑んで言った。「それでは、始めようか。」


 リーナの方が魔術量が多い事に少し複雑な気持ちを覚えつつ、僕は希望に満ちた笑みで「はい、先生!」と返した。


 こうして僕とリーナはメイル先生の元で魔術の修行を行う日々を送る事になった。


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