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ep10 リーナ捜索 後日談

 その後、僕は泣きじゃくるリーナの涙を拭いながら手を引いて村に戻った。二人の姿は泥だらけで、リーナはまだ泣きじゃくっていた。その様子に村人たちは驚き、大慌てで駆け寄ってきた。


「ミカ!リーナ!」村の大人たちは心配そうに声をかけてくる。


 僕はアルヴァに見つかり、盛大に怒られた。アルヴァはいつもより強い調子で言った。「ミカ!何があったの?リーナがこんなにボロボロになって!」


「う、うん…ちょっと、森に行っていただけだよ。」僕は少し困ったように答えたが、アルヴァの心配そうな表情には少しだけ安堵した様子もあった。母親として、やっぱり子供の安全が一番心配だったのだろう。


 一方で、カルッソ夫妻には深く感謝された。リーナの両親は、僕に何度も「ありがとう」と言い、リーナを抱きしめながら涙を浮かべていた。僕も心の中で安堵し、少しばかり照れくさかった。リーナが無事で何よりだ。


「リーナは、しばらく休ませてあげて。まだ何も話せないよね。」僕はそう言って、リーナの手を離した。


 リーナはひきつった顔で泣いていた。何があったのか、まだ理解していないようだ。そのことを心配しつつも、僕は何も話さないことに決めた。バスタルのことや、あの出来事を大人たちに説明するのは無理だと感じたからだ。


「リーナはきっと何が起きたか理解してないだろうな…」心の中でそう呟きながら、カルッソさんに抱きかかえられ寝ているリーナの横でひと息ついた。


 その夜、アルヴァと軽く話をした。アルヴァは少し警戒心を持ちながらも、やはり心配していた。


「ミカ、あなた普段あの森に行かないのに、どうして急に?」アルヴァは少し不安そうに言う。僕のことをよく知っているからこそ、その行動に違和感を感じたのだろう。


「うーん、ちょっとリーナを探していたんだよ。」僕は適当に言いながらも、できるだけ自然に振る舞った。アルヴァの心配はもっともだが、今はとてもそのことを話す気になれなかった。


 アルヴァは少し考えてから、「そう。あんまり無理しちゃだめよ」と言って、微笑んだ。普段と変わらない温かい母親らしい言葉だった。


 僕はそれを聞いて安心しつつも、どこかホッとした気持ちがあった。今はまだ、この話を大人たちにする時ではない。リーナが少しでも元気を取り戻してから、必要なことを話すつもりだった。


 その夜、僕は寝床で静かに考え込んでいた。バスタルとの会話、命のやりとり、自分が無力なただの子供という事実。


 もし次にこんな事があれば、こんな上手くいくなんて限らない、自分はこの世界の事をもっと知らないといけない。生きていく術を身につけないと…。


「今日はありがとうMöbius」


『貴方のお役に立てたのなら何よりです』


「あと今日から僕の事はミカと呼んでくれていいよ」


『招致しました。ミカ』


 余談だがこの日以降、リーナはいままで以上に僕と一緒に過ごすようになった。両親がいかに僕に感謝すべきかを過剰にリーナに吹き込んだのか、まだ子供のリーナはその言葉を正面から受け止めてしまったみたいだ。


 僕が外を歩いていると、リーナは必ず笑顔で駆け寄ってくる。ちょっと前までは姉のように僕の面倒を見ようとしていたリーナだったがこの日を境にまるで妹のように僕の後をついてくるようになった。


 でもそうだね、「僕にもようやくこの世界で友達ができたのかもしれない」そう思えた。




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