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04 前世の俺②

「…………は、?何て……」

「お后様が、流行病に倒れられました。……感染する病ですので、どうか王子はお部屋に近づきませんよう」


ぺこりと頭を下げ、去っていく医者の背中が見えなくなるまで、俺は廊下に立ちすくんでいた。


そろそろ、ヴィオラが嫁いできて1年が経とうとしていた。

これだけ時間が経っても態度の変わらない彼女に、これなら大丈夫そうだと、そう思い始めていた時だった。


同時に、リーゼッヒ王国で彼女が行ったという悪行が、どうにも本当か真偽が怪しいものであると言うことも調べが着いていた頃だった。

だが、決定的な証拠がない。

彼女がやったという証拠も、やってないという証拠も、だ。


だから、だから、侍女長から聞いた、彼女が好んで食べているというフルーツを購入して、部屋を尋ねるつもりだったんだ。


忙しさにかまけて、どんどんそれが先延ばしにされて、やっと今日、行けるだろう、と。

そう、思っていた矢先の言葉だった。



──結局、俺は、ヴィオラに一目も会えず、彼女は儚くなってしまった。



亡骸もまだ病原体が宿って居るからと、花を添えることも出来なかった。

彼女は、どんな顔で旅立ったのだろう。

俺は、彼女の旦那であるのに、それすらもわからなかった。


「……兄貴、やっぱり、ヴィオラはなにもしてないよ。最近リーゼッヒ王国で、虐めはマーガレット令嬢の虚言だったって証言が多数上がってるらしい」

「……だろうな」


そういえば、婚姻を結んだ夜、彼女はなにか言いたそうじゃあなかったか。

もしかしたら、……もしかしたら、俺に真実を言おうとしてたんじゃないのか。


今になって思い当たる節がたくさん浮かんでくる。

やめろ、やめろやめろやめろ。考えるな。思いたあるな。

前髪をぐしゃりと握りこんで、痛む胸に気付かないふりをする。


──俺に、傷付く資格もありはしない。


けれど、もし、もしも。

もし、また逢えるとするならば。


彼女に、もう一度だけ、手を差し伸べる事が許されて欲しいと。



──それが、俺の最後の『記憶』。



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