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国内最大の商家の娘は、今日も我が道を行く

作者: 下菊みこと

オデット・ロクサーヌは、今やナディア帝国の経済を牛耳るロクサーヌ商会を起こした天才、ヒューゴ・ロクサーヌの一人娘である。


オデットは幼い頃に母ミラベルを亡くしたが、ヒューゴから猫可愛がりされていたため寂しさを感じることはなかった。


そんなオデットは、いずれロクサーヌ商会を継ぐべく最高の教育を受けていた。また、両親共に美形である。おかげで十六歳になる今では、教養のある美女に育っていた。


そんな彼女の唯一の欠点。それは、我が儘放題で育ったところだろう。今日もオデットは、我が道を行く。


「お父様!聞いてくださいませ!」


「どうした、オデット!?なんで泣いているんだい!?」


「さっき、私の可愛がっている孤児院の子供達が奴隷商に売られそうになっていましたの!」


「何!?彼らは、オデットが将来我が商会の従業員として雇うために幅広く教育を受けさせた逸材ばかりだと言っていたじゃないか!なんてことを!」


「ええ。ですから奴隷商と、孤児院の院長を務める神父様の両方に、私のお小遣いの中から二十億ずつ渡して子供達全員を引き取って参りましたの。どの子達もとても優秀ですわ」


「それはすごいな!よし、私の方で子供達を教育するよう従業員達に命令を出しておくよ」


「ありがとうございます、お父様。でも…」


「どうした?」


「屋敷の使用人達が、あんな汚い子供達に触りたくないと…これでは子供達に部屋を用意するどころか、食事もお風呂も準備してあげられません…」


「よし!その使用人達は職務怠慢でクビにしよう!なあに、代わりなんてすぐに見つかるさ!なんでもいいからウチで働きたいという若者は多いからね!」


「さすがはお父様!」


「ということだ。フランツ、今すぐ屋敷の使用人達の中でオデットに心無いことを言ったバカをクビにしなさい。あと、今すぐ我が屋敷で働きたいという若者を集めて必要な人材を確保しなさい」


「ですが、仕事の引き継ぎはどう致しますか?」


「お前に任せる」


「…はい、お任せください」


フランツは今日も、オデットとヒューゴの無茶振りをなんとか叶えるのだった。


「フランツ、使用人は集まったかい?」


「はい、ヒューゴ様。正直付け焼き刃ですが、使用人としての教育も受けさせました」


「付け焼き刃で問題ないさ。貴族の屋敷ならいざ知らず、ウチはただの成金だからね!」


「お嬢様の連れていらっしゃった子供達にも、屋敷内でしっかりと衣食住を確保致しました。子供達の教育が終わり次第、いつでも従業員寮に移し働かせることが出来るでしょう」


「そうか。よくやった」


「ありがとうございます」


フランツはどうにか今日も乗り切ったと胸を撫で下ろした。


ー…


「うふふ。子供達は本当に可愛いわ。ねぇ、フランツ」


「そうですね。よく食べ、よく学び、よく寝る良い子達ばかりです」


「ええ。早速一週間後から、従業員寮に移して働かせるのでしょう?やっぱり、私の目に狂いはなかったわね」


「皆様とても才能の溢れる人材です。お嬢様の人を見る目は素晴らしいですね」


「まあ、当然よね!」


オデットはご満悦である。


「あ、そうそう。これから新しいドレスを買いに行くから。行ってきます」


「行ってらっしゃいませ、お嬢様」


突然のオデットの外出にも、顔色一つ変えず対処するフランツであった。


ー…


「…あー、買った買った!」


オデットは、使用人達をたくさん引き連れて買い物を終えた。さあ、馬車に戻ろうというところでそれは起きた。


「おらぁっ!」


「ぐっ…」


喧嘩だろうか?とオデットが視線を向ける。その先には、たくさんの厳つい男に囲まれた、一人の身なりの汚い少年がいた。おそらくスラム街の子供だろう。


「お前がパンを毎日のように盗むせいで、ウチは経営がギリギリなんだぞ!」


「ウチの惣菜もだ!」


「今日という今日は許さねー!」


オデットは馬車に向けていた足を止め、男達の側に寄る。


「なんの騒ぎかしら?」


「なんだテメー、こいつを庇うなら容赦しねーぞ!」


「まあまあ、これでこの場を収めてくれないかしら?」


そう言って、オデットは金貨がたんまりと入った袋を渡す。厳つい男達は、袋の中身を確認するとすごすごとその場を立ち去り、仲良く中身を分け合っていた。


「貴方、大丈夫?」


「…ありがとう。妹が待っているから、これで」


「まあ、それなら、妹さんも連れて来なさいな。私の屋敷で受け入れるわ」


「…は?あんた、貴族か?」


「ただの成金よ。貴方は顔が良いから、きっと商売が向いているわ。女の人だって、イケメンは好きだもの。きっと、貴方の妹ならさぞかし可愛いでしょう?その子も連れてきて?もちろん、如何わしい商売ではないから安心してね」


「…でも、妹は病弱で」


「それなら尚のことウチに来るべきだわ。治療を受けさせてあげる」


「…わかった」


少年は正直迷ったものの、妹が助かる可能性があるのならと妹をおぶって連れてきた。


「さあ、馬車に乗って。屋敷に帰りましょう?」


「ありがとうございます」


「ありがとうございます…」


少年の妹は明らかに弱っていた。オデットは、念のため持ってきていたポーションを飲ませる。少年の妹は少し楽になったらしく、顔色が良くなった。


「貴方達、名前は?」


「俺はアルファ…です」


「私はライムです、ポーションありがとうございました」


「良いのよ、気にしなくて。アルファ、ライム。貴方達には身奇麗にしてもらって、少し療養してもらうわ。その後は、私の秘書になってもらうための教育を施すわ。頑張ってね」


「は?」


「お兄ちゃん。…よろしくお願いします!」


「あ…よ、よろしく」


その後、オデットの命令で屋敷の使用人達はアルファとライムを風呂に入れ、清潔な衣服を用意し、食事をとらせ、寝かしつけた。次の日には、ライムに医療も受けさせて、ライムが完全に元気になる頃にはアルファとライムはオデットを崇拝するようになっていた。


「今日からいよいよ、オデット様の秘書になる教育が受けられる…」


「緊張するね、お兄ちゃん」


「でも、頑張らないと」


「うん、オデット様の役に立つ人間になる!」


フランツは、スラム街上がりの子供を教育するというとんでもない無茶振りを淡々とこなすのだった。


ー…


「オデット様!おはようございます!」


「おはようございます!」


「おはよう、アルファ、ライム」


オデットは特に二人を気にかける素ぶりも見せず、淡々と挨拶を返す。しかしアルファとライムは、それだけで幸せな気分になっていた。


「今日もオデット様、可愛らしかったな」


「今日もオデット様は、凛としていてかっこよかったね」


果たして、アルファの恋心とライムのオデットの家族になりたいという願いは叶う日が来るのだろうか。

敦君はいつだって楽しそう


という短編小説もよろしくお願いします・:*+.\(( °ω° ))/.:+

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