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心の傷は消えない

第七章


『心の傷は消えない』


 この章は、青春時代に負った心の傷は決して消えないということをある男性の経験から心理的現象として、ご紹介したい。


 その男性は本当に自分の命よりも大切に想っていた女性がいた。


 環境により、彼女の性格を知り得た上、愛し始めたのではない。


 インスピレーション、スピリチャル的な、俗にゆう一目惚れであった。


 人間は運命的出会いがある人とない人がいるかもしれない。


 彼は前者の方であった。


 何も予期してない感覚が脳を通過し、心に響いたのだ。


 どうしようもない。 


 予期せぬことを避けることはできない。


 なるべくしてなってしまった。


 来る日も来る日も、彼女のことが、頭から離れることはなかった。


 中学2年の新学期、間もない頃、急に彼女の笑顔が目に入り込んできた。

 防ぎ用のないことであった。


 その恋は一旦、成就するが、彼女の無言の別れにより幕を閉じ、奇しくも彼女は元彼と恋愛を重ね、遂には結婚してしまう。


 この忘れ去られた恋の中に、消え去ることが出来ないデータが残存する。


 それが、彼が最初に得たインスピレーションである。


 環境、共生により育んだ愛とは違い、スピリチャル的な愛、所謂、インスピレーション=一目惚れにより得た恋心は成就すれば良いものの、しない場合は心の深淵に深い傷跡を残したまま、人生を過ごさなくてはならなくなる。


 ましてや、恋敵である元彼と復縁した彼女に対して、愛は憎しみに変わり、心の深淵の傷も深みを帯びる。


 こればかりは、どうしても消えない。


 これが俗に言う、恋愛的トラウマである。


 恐怖的感傷がもたらす心理現象である。


 彼女と関連すること、同じ苗字の芸能人、顔立ち、母校、故郷、全ての共通項がトラウマを引き起こす。


 そのショックの度合いも徐々に治りかけるとリバウンドするといった変動、反動を繰り返す。


 特に女性より男性に多い現象だと聞き及んでいるが、このトラウマは時として精神疾患まで惹き起こす場合もある。


 正にトラウマである。


 親、配偶者、子供、兄弟を死別で亡くした場合、うつ病を発症することがあるが、それと同じである。


 ただ、違う点は、死別ではなく、生前の別れ、青春期の別れであることから、この別れは、通常の人間の寿命を考えると、かなりの長期間、心のトラウマとして存在し続けることになる。


 忘却することは出来ず、そのふりをしても、脳内アーカイブに保管されている以上、油断した時に必ず夢として襲いかかってくる。


 この症状を経験している人はご存知のとおり、彼女との楽しい思い出があったにも拘らず、夢として表出する映像はかなりダークな色彩を帯び、憂鬱な目覚めを惹き起こす。


 この恋愛的トラウマは、スピリチャル的なインスピレーションである限り、誰のせいでもなく、正にそうなるべくしてそうなった運命的な感傷なのである。


 これも仕方がないことである。

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