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1. ノビタが作ったAIはサッカーの勝敗を当てれるようになってしまった

「じいちゃん、明日の試合応援しにきてね。アンダー15の監督が見に来るんだ。サッカー日本代表監督の孫だってところ見せてやるから。」

孫のノビスケはそう言うと、練習に出掛けて行った。


ノビタはサッカー日本代表の監督として20年前にワールドカップへ日本代表を導き、グループリーグ突破の活躍を見せた。クラブチームの監督としても活躍したが60歳を過ぎた頃、第一線を退き、今は隠居をしていた。


今日は、小学校時代の同級生のデキスギヒデトシから、夕食に誘われている。彼は、東大で機械学習の研究者として活躍していた。

「シズカ、今日はヒデトシと飲んでくる。遅くなるかもしれんから、先に寝ててくれ。」

「ヒデトシさんのお家ですか。よろしくお伝えください。」


シズカはそういうと風呂に入りに行った。




ヒデトシの部屋では、今日のJリーグの名古屋と横浜の試合は3-1で名古屋が勝つことがパソコンの画面に表示されていた。ヒデトシとノビタの作ったAIの予想だった。ノビタとヒデトシは、その表示とテレビの試合中継を見比べながらウイスキーを飲んでいたのであった。


名古屋は予想通り4-4-2のフォーメーション、横浜も3-4-2-1のフォーメーションで当たりだ。結果、2-1で名古屋が勝った。他の試合も点数はズレるものの、その日に行われたJリーグの試合に対して、AIは9試合中6試合の勝敗が当てたのだった。

「そろそろ、いいかもな。」

ヒデトシはテレビに視線を向けながらノビタに言った。

ノビタは無言でほとんど水になっているウイスキーを飲み干した。


AIはノビタの過去30年で得た経験や知識を学習しており、各チームの戦術を自動で分析し、選手のコンディションも自動でスコア付けできるようになっている。ヒデトシとAIを作り始めてわずか半年で、6割以上の確率で試合の勝敗を当てることができるようになった。ノビタ自身も信じられない思いだった。


ヒデトシはノビタにウイスキーを注ぎながらイギリスのブックメーカーのサッカー賭博のサイトを見せてきた。AIを使った予想を使って既に10億円以上儲けていた。この儲けた金をさらに機械学習に投資することで、精度は着実に上がってきている。


「この結果を世間に公表しよう。」

ヒデトシはノビタにこう言った。これは前から聞いていた話ではあった。だが、ノビタはこのAIを世間に公表することの影響をわかっていた。結果のわかっている試合ほどつまらないものはない。ヒデトシには何度もそれを伝えたが、毎回返ってくる答えは同じだった。

「いつか、だれかがやることさ。」


ノビタとヒデトシはAIの結果を配信し始めた。元サッカー日本代表監督の作ったAIだという触れ込みもあり、話題となった。誰もが公開したAIに興味を持った。フォーメーションの予想や、サイドの突破率、ゴールキーパーのセーブ率のデータが表示されており、実際の試合の結果との答え合わせを誰もが見るようになった。

最初は精度が低かったが、サッカー賭博で得たお金を投資し、より強力なコンピュータで解析することで精度はどんどん上がっていった。


株式や為替で稼いでいたトレーダー達は、ノビタのAI予想を使って、サッカー賭博で儲け始めた。お金がサッカー賭博に流れることで、ノビタ達はさらに大金を得ることができた。


ノビスケはアンダー15に選ばれ活躍していた。アンダー15の世界大会ではノビスケの活躍もあり、日本が優勝した。スポーツ誌にも、「ノビスケ半端ないって!」という見出し記事が載った。ノビスケは、インタビューでこう答えていた。

「僕は、いつか祖父のように日本代表で活躍したいと思います。じっちゃんの名にかけて!」

ノビスケにとってそうであるように、ノビタにとっても、ノビスケは自慢の孫だった。


ノビタとヒデトシがこのAIを公表してから1年がたち、ちょうどワールドカップが終わった。もちろん、ワールドカップの結果もAIが予想した。もう本当に大当たりだった。

決勝トーナメントの1回戦の勝敗は1試合当たらなかったものの、優勝チーム、準優勝チーム、3位、4位までピタリと的中させた。世界中の人がこのワールドカップでノビタのAIを知り、注目した。グループリーグが始まる頃は疑いの目で見る人が多かったが、決勝トーナメントは、もう答え合わせのようなものだった。


負けを予想されたチームはフォーメーションを変え、今までに試さなかった戦術を試し、予想を覆そうとしたが、結局自分たちの強みを活かせなくなり自滅していった。

準決勝に進むころに優勝国と予想されていたドイツでは、トーナメントを勝ち進んでいるチームのことより、このAIの話で持ち切りだった。勝っても選手をほめたたえることもなく、予想よりも少ない点数しか入れれなかった理由についての分析の話ばかりだった。


日本では、1勝2敗でグループリーグ敗退を予想され、1勝1分け1敗でグループリーグを敗退したが、ノビタのせいで敗退したような言われ方だった。サッカーファンはサッカーをつまらなくしたノビタを恨んでいた。

「ノビタのせいでサッカーが嫌いになりました。ノビタのくせに。」


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