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転落タイムスリップ  作者: ノリチカ
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2022→2007

2020年、東京でオリンピックが開かれる予定であった年、世界中でウイルス感染症が拡大し、日本社会は壊滅的なダメージを受けた。

多くの企業が倒産や合併を余儀なくされ、大不況に陥った。物流やIT分野だけが無傷で生き残った。プロ野球も半年以上開幕が遅れ、高額な年俸が払えなくなった球団は、功労者の大量整理に踏み切った。その中で唯一年俸が下がらなかったのが私であるが、日本のスポーツ界・経済界は大きな打撃を受けた。


2021年になっても、日本の不況は続き、好調なのはIT企業のみとなった。あれほど盤石だった自民党政権は、支持率を大きく低下させ、なんとか政権を維持している状態であった。

国民の所得は低下し、自殺者は急増するなど、日本自体が暗いニュースに満ちていた。


そんな時に日本企業がタイムマシンを開発したと発表。世界中で一大ニュースとなった。

日本企業が開発したタイムマシンは、過去の自分に現在の記憶を飛ばすという装置であった。

過去の1点に記憶を飛ばすため、当時の記憶が鮮明であり、かつ時間を逆流するだけの強い思いがあることが必要とのことであった。


開発チームの説明によると、実証実験は行なえておらず、タイムスリップ後に世界が変わるのかどうかは不明であるし、タイムスリップをした人間がどうなるかも不明とのことであった。

そのため実証実験は、①被験者が死ぬ可能性があること②社会に大きな影響を与えないようにすること③負の感情が少ないことを条件として募集が始まった。また参加者を絞るために、費用負担は10億にされた。


いくら人体実験に近いとはいえ、多くの応募があるだろうと見込んでいたようだった。

しかしながら応募者は世界中でたったの8名であった。


そもそも10億円出せる成功者は過去の改変なんて望まない者が多く、死のリスクを抱えてまで被験者になろうとするものは少なかった。また改変のレベルも制限されており、戦争やウイルスの拡大阻止、地震を他者に知らせるといったことも不可とされたため、あまりメリットが感じられないものだった。


そして厳正な審査の結果、被験者は私になった。実験の当日になっても、何故自分は立候補してしまったのかと思う部分もあった。

順風満帆な人生を捨ててでも、小林なぎさに会いたい…そう思ってしまった。妻や親には泣いて止められたし、まさかの野球界のスターがタイムスリップを志願したというニュースは、タイムマシンの発表の時以上に世界の注目を集めた。

企業としてはこれほどの宣伝はないだろう。


私は2007年4月6日に戻ることを希望した。

高校の入学式の日である。私は新入生代表として挨拶をした小林に一目惚れをしたのだ。

15年近く経った今でも不思議と当時の情景が脳裏に焼き付いている。

記憶の補完のために、同じ4月に実験を行うのが良いという判断になり、しばらく実験施設に入所し、実験日を待つことになった。

世間との関わりをシャットアウトし、ひたすら当時のことに思いを馳せた。

そして2022年4月3日。私の記憶は2007年4月6日へととんだ。

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