表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/55

邂逅

 その報せが飛び込んで来たのは全くの突然であった。食事を終えて午後のまどろみを得ようとしていたルーディリートは、慌ただしく部屋に駆け込んで来たソニアによって目を覚まされる。

「姫様、一大事でございます!」

「……、どう、したの?」

 横で眠る娘の頭を撫でながら、(いささ)か眠気の残る口調で尋ね返した。

「落ち着いてお聞き下さい。ファルティマーナ様が……」

「何ですって!」

 侍女の言葉に顔色を失う。唇が戦慄(わなな)き後は言葉も出ない。彼女は目の前が暗転して気を失った。

 次に目が覚めた時には、すでに夜になっていた。

「ソニア……?」

 呼び掛けると、すぐに彼女はやって来た。

「姫様、よろしゅうございました」

「……夢?」

 ルーディリートは訝しげに首を傾け、眉根を寄せる。そのような主の様子を看て取り、ソニアは恐る恐る尋ね掛けた。

「何が、でしょうか?」

「夢で、ファルティマーナ様が亡くなったと、貴女が駆け込んで来たの」

 彼女は口元に微笑みを浮かべているが、目は笑っていなかった。ソニアは意を決して口を開く。

「夢では、ございません」

「え?」

 ルーディリートの表情が強張った。

「ファルティマーナ様は、本当にお亡くなりになり、姫様はその報せをお聞きして、気を失っていらっしゃったのです」

 侍女の言葉を彼女は理解できなかった。いや、理解したくなかった。ファルティマーナに会ったのは一ヶ月ほど前のカミナーニャの葬儀の時だ。立て続けに身内の不幸が起こるなど、(にわか)には信じられない。

「嘘でしょう?」

「私も嘘だと思いたいです。ですが、長老が……」

 ポロポロと彼女の目尻から滴がこぼれ始める。ルーディリートは彼女が泣くのを初めて見た。いつも気丈に、陽気に振る舞っている侍女が涙するとなれば、いよいよ真実味が増す。ルーディリートは決意を固めて、寝台から降りた。

「長老の元へ、確認に行きます」

 ソニアは目尻を拭いて、頷くだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ