邂逅
その報せが飛び込んで来たのは全くの突然であった。食事を終えて午後のまどろみを得ようとしていたルーディリートは、慌ただしく部屋に駆け込んで来たソニアによって目を覚まされる。
「姫様、一大事でございます!」
「……、どう、したの?」
横で眠る娘の頭を撫でながら、些か眠気の残る口調で尋ね返した。
「落ち着いてお聞き下さい。ファルティマーナ様が……」
「何ですって!」
侍女の言葉に顔色を失う。唇が戦慄き後は言葉も出ない。彼女は目の前が暗転して気を失った。
次に目が覚めた時には、すでに夜になっていた。
「ソニア……?」
呼び掛けると、すぐに彼女はやって来た。
「姫様、よろしゅうございました」
「……夢?」
ルーディリートは訝しげに首を傾け、眉根を寄せる。そのような主の様子を看て取り、ソニアは恐る恐る尋ね掛けた。
「何が、でしょうか?」
「夢で、ファルティマーナ様が亡くなったと、貴女が駆け込んで来たの」
彼女は口元に微笑みを浮かべているが、目は笑っていなかった。ソニアは意を決して口を開く。
「夢では、ございません」
「え?」
ルーディリートの表情が強張った。
「ファルティマーナ様は、本当にお亡くなりになり、姫様はその報せをお聞きして、気を失っていらっしゃったのです」
侍女の言葉を彼女は理解できなかった。いや、理解したくなかった。ファルティマーナに会ったのは一ヶ月ほど前のカミナーニャの葬儀の時だ。立て続けに身内の不幸が起こるなど、俄には信じられない。
「嘘でしょう?」
「私も嘘だと思いたいです。ですが、長老が……」
ポロポロと彼女の目尻から滴がこぼれ始める。ルーディリートは彼女が泣くのを初めて見た。いつも気丈に、陽気に振る舞っている侍女が涙するとなれば、いよいよ真実味が増す。ルーディリートは決意を固めて、寝台から降りた。
「長老の元へ、確認に行きます」
ソニアは目尻を拭いて、頷くだけだった。




