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清き風は麗しく舞う  作者: 斎木伯彦
手鏡と耳飾りと
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手鏡と耳飾りと

平日毎朝8時に更新。

「騎士たちは、どこへ?」

 彼女は裸馬の首にしがみついて何とか態勢を立て直した。見渡す限りの平原の真っ只中では、本来の目的地も、皇都の方向さえも分からない。やや気落ちして彼女は馬の操作に専念しようとした。すると後方から蹄の音が響いて来る。期待感を抑え切れずに振り返ると、騎馬の群れが近づいて来ていた。しかし、その先頭には見慣れない男が見える。

「先程の!」

 彼女は血の気が失せた。山賊たちの手から逃げれたつもりが、徐々に差を詰められているのである。単純に考えても追い付かれるのは時間の問題と言えた。

「どのようにすれば?」

 どのようにすれば逃げ切れるのかを考え、彼女は見渡すばかりの平原には身を隠すような場所などはないと気が付いた。せめてもっと動き易い服装で、手元に剣があれば良かったのであるが、そうも言っていられない状況だ。

「どうにかして、逃げないと……」

 馬は軽快に走る。山賊たちも徐々に差を詰めて来る。不意に彼女は宙に投げ出された。馬はいなないて倒れる。

「き、きゃああああ!」

 悲鳴を上げた彼女は、空中で一回転して腰から地面に叩きつけられた。

「あう……」

 呻き声を上げて彼女は痛みに苦しむ。腰が痛くて足元に力が入らない。その内に山賊たちが追い付いて来て、彼女を取り囲んだ。

「ついてねぇな、馬が何かに足を取られるとはな」

「まったくでやんす」

 顔面に赤い跡を付けた山賊の頭目がせせら笑う。その横には腰巾着であろう、小柄な男が掌を擦り合わせながら付き添っていた。

「よく見りゃ、上玉だ。こいつはどこかの貴族のご令嬢って奴だ。野郎共、しこたま身代金をふんだくれるぞ!」

「おお」

 頭目の言葉に従って山賊たちは気勢を上げる。彼らはこの界隈を根城にする盗賊団であった。その情報は王宮にも知らされているはずなのだが、騎士団が討伐隊を編成する度に根城を移転する為、根絶するまでには至っていなかったのだ。

「よし、丁重にもてなしてやんな」

「おいっす」

 二人の山賊が馬から降りると、起き上がれない彼女に近づいて来る。その二人の肩を押さえる者がいた。

「ん?」

「何だ?」

「どけ」

 黒い服に身を包んだ男は、有無を言わせず二人を後ろへ投げ飛ばした。その行為に、取り囲んでいた山賊たちは色めきたつ。

「何者だ、一体?」

 頭目が手下を抑えながら誰何する。すると男は不機嫌極まりない視線を頭目に投げかけた。男の身なりは、黒で統一された動き易そうな衣裳に、寸鉄も帯びていない。どこかに武器を隠し持っている様子もなかった。それでも彼の眼光は鋭い。

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