序章 -姉がブラコンを自覚するまで- part5
序章はこれで終わりです。
次章からどんどん可笑しな方向に文章が向かっていきます。
心して読んで頂きたく候
こうちゃんがいつも降りる駅で降りて十数分。
わたしがいつも降りる駅に着いたので降りて大学を目指す。
ただいつもこの時、もしも同い年だったら
一緒に学校行けたのになと思う。
わたしが行きたくても彼は一緒に行きたくない
ってい言いそうだけど。
そんなことを考えながらわたしは大学へと向かう。
大学につき講義を受けるために講義室に入ると
友達の一人がわたしを呼ぶ。
「おーい、朱音ー!こっちこっち!」
その声のする方向へとわたしは向かう。
そして友達の響ちゃんの隣に座って講義が始まるまでの間
雑談をしていた。
「なんか今日嬉しそうだけどなにかあったの?」
「ん~?相変わらず弟がかっこよくって~」
「ああ、そ、そうなの・・・・・」
「そうなの~電車に乗るときは今日も守ってねって言うと
『任せてくれ、姉さん』て言ってくれて
きちんと痴漢に遭わないように守ってくれるんだよ!
できた弟だよ!」
「そうね・・・・しかし今どきの弟は姉のことを
守ったりするものなの?」
「ん~わかんないけどとにかくうちの弟は優しいのです!」
「それは今の話でよく分かったけど・・・・・・
なんていうか」
響ちゃんが何か言いかけたところで講義の始まりの
チャイムが鳴った。
「あ、チャイム鳴った。講義が終わったら続き話そ」
「うん」
小さい声で頷いた直後に先生が入ってきたので
真面目モードに切り替えて講義を受ける。
講義が終わって響ちゃんがまた話し始めた。
「朝の続きだけど、朱音の弟くんて、すごい献身的なんだね?」
「そうだよ~私がここ行きたいって言うとついてきてくれるし
買い物の時も率先して重いほうの袋を持ってくれるんだよ!
優しいでしょ?」
「へぇ~本当に姉思いの弟なんだね」
「えっへん!」
「そういえば・・・・・・・朱音の弟君に会ったことないわね」
「あ、確かに。でもそれは響ちゃんとは大学で知り合って
間もないもん、しょうがないよ」
「ねぇ、今度弟君に会ってみたい」
「いいよ!今度の土日のどっちかでわたしの家に来る?」
「じゃあ土曜に来てもいい?」
「いいよ!」
「決まりだね」
そして午前中の講義を全て受け終わってお昼の時間になった。
なので響ちゃんと一緒に学内にあるカフェテリアで
お昼にすることにした。
「いや~、混んでるね~」
「しょうがないよ、みんなこの時間に昼食食べるんだから」
「そうなんだよね~。昼イチに講義がないヤツは後からくれば
混雑も少しは緩和されるだろうに」
「それでもそもそも学生の絶対数が多いんだからどうしても混むよ」
「そうだよなぁ・・・・・」
そんな中身のない話をしながら行列に並び食券を買って
調理している人に渡す。
そして出てきた料理の乗ったトレイを持って空いてるところを
探して右往左往し、やっとのことで空いた二人掛けの席に
なんとか座ることができた。
「ふぅ、やっと座れた~」
「そうだね、本当に、ここまで大変だった・・・・・」
「大げさだなぁ響ちゃんは」
「大袈裟じゃないよ」
「もう、じゃぁ食べよ」
わたしと響ちゃんはお昼ご飯を食べ始める。
「やっぱり夏はざるそばだね~」
「夏は暑いうどんでしょ」
「やだ響ちゃん江戸っ子みたい」
「実際東京出身だから強ちその指摘も間違いではないのよ?」
「そうなんだ~!知らなかった~。私地元だから」
「そうだと思ってた」
「あ~何さ!田舎臭いとか思ってたわけ?ひど~い!」
「違う違う、気に障ったなら謝るから」
「ふふ、冗談」
「何だ怒ってないのね」
「本当のことで怒っても何にもならないでしょ?」
「意外とそういうことまで考えてるんだね」
「そうだよ~」
「それにしても・・・・・・朱音って弟のことになると
すごい勢いで延々と話し続けるよね」
「弟大好きですから!弟が嫌いな姉なんていません!」
「いや、普通に弟が大嫌いな姉なんていくらでもいるから」
「えっ」
「えっ」
「またまた~」
「いやいや、私の高校や中学の友達なんかはほぼ全員弟や兄を
とことん嫌ってたし」
「えぇ~!信じられない!」
「むしろ朱音のほうが珍しいと思うよ」
「そうなのかな~」
「間違いなくそうだよ」
「ふぅ~ん・・・・・・」
わたしは響ちゃんの話をどうにも信じられず話半分に聞く。
すると響ちゃんが恐る恐るわたしに質問をしてきた。
「そんなに弟君のことが好きなの?」
「好きだよ?当たり前じゃん!」
「・・・・・・朱音ってもしかしてブラコンなの?」
響ちゃんは栗色の短い髪を揺らし
鋭いツリ目を更に鋭くして真っ直ぐわたしを見据えて
こう問いかけてきた。
「何度か聞かれたことあるけど全然そんなのじゃないよ?
あくまで弟は弟して好きなだけ」
「そう、変なこと聞いてごめん。さぁ、早く食べよう」
「うん」
響ちゃんはそう言うとあっという間にうどんを食べてしまった。
わたしも負けじと蕎麦を素早く食べ終わる。
「さて、午後も頑張るとしますか」
「そうだね」
そして午後の講義を受ける建物へ移動する。
その際、ふとこうちゃんと水着を買いに行ったときの
ことを思い出す。
店員の人にカップルですかって訊かれて
こうちゃんがすかさず姉弟だと答えたときの
気持ちを思い出していた。
わたしはあの時こうちゃんが姉弟と答えたことに対して
すごく不満を抱いた。
姉弟なのは間違いないけどその答えはどうなのと思った。
わたしはこんなにもこうちゃんのことが好きなのに
こうちゃんは違うってこと?
ということはこうちゃんにとってのわたしは
どうでもいい存在なの?
わたしはいつもこうちゃんのこと見てるのに
こうちゃんはわたしのことを見てないんだね。
・・・・・・・はっ!?
これ完全にブラコンじゃん!?
「どうした朱音?」
「え、ううん何でもない。どうしたの?」
「いや、もう講義室なんだけど・・・・・
どこに座ろうか聞いても反応しないから
どうしたのかなって」
「ごめん、あそこに座ろ?」
「じゃあそうしようか」
わたしが座ろうと言った席に二人で座り、
講義を受けた。
午後の講義をすべて受け終わり正門前で響ちゃんと別れ、
駅へと向かう道でわたしは考えていた。
「そうか、わたしはすでにブラコンだったんだ・・・・・・
今更気づくなんて。でもこうちゃんが好きなのは
どうしようもないもん。
ただ、今のままじゃこうちゃんはいつまで経っても
わたしのことを見てくれないよね・・・・・・
ようし、もっとわたしを見てくれるように
いろいろな策を弄してみよう!」
そう決意しこうちゃんにL〇NEで
一緒に帰ろうと誘った。
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