6章 -弟はトラウマと闘う- part1
前回の話の浩太にキスをした女性視点の話です。
あの日、私は病室を出て談話室で本を読んでいた。
私に残された残り少ない時間をどう過ごすか。
それを考えるための参考資料として。
本を読み進めていると視界の端に収めていた
談話室の入り口に影が見えた。
キリのいいところまで読んで栞を挟んだ後影が見えた方向に
顔を向けると一人の少年がそこには立っていた。
彼はいったい誰なんだろうか。
私は彼に誰なのか聞いてみたら少年は桜木浩太と名乗った。
桜木浩太・・・・・・・どこかで聞いた覚えがあるわね。
そうだ。テレビだわ。
繁華街でナンパ男に言い寄られて困っていた少女を
傷だらけになって助けた少年が彼だ。
今私の目の前にしつこいナンパ男から少女を救った本人が現れたのだ。
しかし私の目の前に現れた彼は想像と大きくかけ離れていた。
私は彼のことをてっきり知らない女の子を身を挺して男たちから助けた
人間なのだから相当に顔も心もイケメンなのだろうと思っていた。
でも実際の彼の容姿はどこにでもいるような平凡な男のコだった。
そして人を助けたいという意思を微塵も感じさせない、、
人のことを絶対に信じないという決意が際限なくにじみ出ている
とてつもなく濁った目をしていた。
そんな目をしていて一体何故彼は少女を助けたのだろうか。
私は彼に興味が沸いた。
彼が少女を助けた理由、そんな目で人と世界を見るようになった理由。
そして誰が彼をここまでさせたのか。
まず知りたいのは彼が少女を助けた理由。
普通に考えるなら少女が彼の好みで少女をナンパ男から助けて
そこから関係を深めたいからというところだろう。
でも彼の場合は間違いなくそんな理由ではない。
何故彼が少女を助けたのか、それを知るため私は彼に
恋愛に関する質問をしていった。
するとやはり彼は少女が自分の好みだったとか
一目惚れしたといった理由で助けたのではない
ということはわかった。
でも、だとすると彼が少女をナンパ男から自身が病院に搬送されるような
怪我をしてでも守った理由は何?
そしてそもそも彼は女性が好きなのか?
そんな疑問が沸いてきたため、彼は女性が好きなのか確かめるため
私は彼に恋人になるように命令してみて、
隙が出来たらキスをしてみることにした。
私が恋人になりなさいと命令した瞬間彼は動揺し私の言葉に反論をしてきた。
その隙に私は彼に素早く近寄り彼に無理やりキスをした。
人生で初めてのキスだったが今はそんなことはどうでもいい。
キスしながら彼の反応を見ていると彼の顔色が突然悪くなる。
そして突然彼は大怪我をしているとはとても思えない大きな力で
私を引き離し物凄い速さでどこかへと行ってしまった。
私は突然の彼の行動に暫く呆然としていた。
でもこれで私は一つの確信を得ることが出来た。
彼は女性に対して底のないトラウマがある。
更にそこから私は一つの仮説を見出した。
少女を助けたのは少女の置かれた状況が彼のトラウマを
想起させるような状況だった。だから彼女が自分と同じ
トラウマを持つことがないように行動を起こしたのではないか。
そして私はその仮説を検証するために彼を探そうと思ったが
彼の病室をそういえば知らないことに気づいた。
私は一旦自分の病室に戻りどこで聞けば彼の病室がわかるか
暫く考えたのちナースステーションに行って聞けばわかるのではと思い
そこに行って彼の病室の場所を聞いたらあっさり教えて貰えた。
今日は彼には会えないだろうから明日会いに行ってみよう。
そう思いながら私は病室に戻り本を読み進めた
後で大きく書き直すかもしれません。
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