5章 -弟入院、そして- part4
次の日。
朝早くに父さんが勉強道具を持ってきてくれたので
教科書を見ながら勉強をする。
痛みに耐えながら勉強をしていたらいつの間にか昼になり、
勉強を一旦やめる。
昼食を摂り終わり再び勉強しようとした矢先突然ノックの音が聞こえる。
「・・・・・・?誰だろう。どうぞ」
入室を許可すると見知った姿が病室に入ってくるのが見えた。
「やぁ」
響さんだ。
今の時間講義があるのでは、と言おうとしたが
「キミの様子を見るために午後の講義をサボった」
と響さん自らがここに来た理由と疑問に対する回答を示してくれた。
「あぁ、そうですか」
と簡素に返答すると、
「浩太くん。常々思っていたのだが私に対して冷たすぎやしないかい?」
と響さんから俺の喋るときの態度に対して糾弾するような言葉を貰う。
俺はその糾弾に対して自身の過去の体験から
ついそうしてしまったことを説明し謝罪する。
「・・・・・・すみません。どうしても女の人に対して
いいイメージがないので。気分を害してしまって申し訳ありません」
「あっすまない。キミの過去を知っていながら無神経なことを」
「いえ、気にしないで下さい。」
お互い謝った後気まずい空気が少しの間流れる。
響さんに対してああいう態度をしてしまうのも結局は
あの暴君の教育の賜物なのだろう。
響さんとあの人は全然違うと頭ではわかっていても
心が同じ女性という概念の中にいる一人だろと
区別することを拒絶するのだ。
何と醜い自己矛盾だろう。
そんなことを思っていてふと俺は疑問に思った。
「そういえば、響さんはどうして俺がここにいるって分かったんですか?」
俺でなくても入院した病院を教えていない人が病室を
突然訪れてきたりしたら驚くだろう。
響さんは俺のそんな疑問に対して経緯を含めた答えを教えてくれた。
「ニュースで浩太くんが意識不明の重体だと知って
すぐに病院に駆け付けようとしたんだがどこに入院してるのかわからなくてね。
翌日浩太くんが通ってる学校に行って知ってる人間を
呼んできてもらって聞き出したのさ」
あぁ、成程。確かにそれなら俺が入院してる病院の場所もすぐわかるだろう。
響さんは俺が通ってる高校に初めて来たとき凄い数の生徒に囲まれてたからな。
自分が校内で有名になったことを利用したのか。
「で、早速ここに向かったんだが今は面会できる状況じゃないと門前払いされてな。
今日こそはと思って来たら面談できるとのことで希望して通してもらったわけさ」
「大胆なことをしますね」
「その方法が一番確実だと思ったからね」
俺が響さんが俺の入院先に関する情報を手に入れた手段に対して
若干呆れていると響さんが俺の現在の体調について聞いてきた。
「まぁそんなことはどうでもいいんだ。体調はどうだい?」
「今絶賛痛みが走ってます。24時間年中無休で」
「それだと眠ることすらままならないだろう?」
「昨日はあんまり寝れませんでした」
「そうだろうね。どこをやられたの?」
「胸と肩の辺りの骨を折られました。内臓もやられて手術しました」
「ふむ・・・・・・・そりゃ意識不明になってもおかしくない。
もし何か私に持ってきて欲しい物があったりしたら遠慮なく言ってくれ。
できるだけ希望に添えよう」
「ありがとうございます」
「む、こんな時間か。では今日はこれで失礼するよ」
「この後何かあるのです?」
「ちょっとね。じゃ、また来るよ」
「あ、はい」
響さんはそう言って去っていった。
一体何を企んでいるのだろうか・・・・・・・?
そう思いながら勉強する気が少し萎えてしまったので
スマホを操作する。
その後2週間くらい痛みと闘う生活だったがそこから徐々に痛みはなくなり
3週間くらいでほとんど痛みはなくなった。
ちなみに最初は鎮痛剤で痛みがどうにかならないかと思って
それを処方してもらったのだが大して効かなかったためすぐ飲むのをやめた。
その間雨宮や立花、響さんがときどきお見舞いに来てくれた。
そして医者からはもう動いたりしてもいいとのお達しが出たので
少し歩き回ってみることにした。
だって今までトイレと風呂以外殆ど動けなかったからな。
というわけでちょっと散策でもしてみますか。
とはいえ、病院の外に出られるわけではないから
飽くまで病院内を散策することとなる。
まず1階に。そしてそこから1階ずつ上がって
ざっとその階に何があるのか見ていく。
で、全部の階を見終わって病室のある階に戻る。
そして飲み物でも買おうかなと思い談話室と書かれた部屋に入ると、
散策してた時にはいなかった女の人が座って小説を読んでいた。
予告:次回から超展開が始まります。
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