2章 -弟の決意- part8
2章はこれにて終了です。
次から3章となります。
引き続きブックマーク非推奨です。
やはりあれは姉さんか・・・・・
今日で俺の命は尽きるのか。
短い人生だったな。
そう思っていると姉さんが問いかける。
「こうちゃん、今日どこ行ってたの?」
「響さんに呼ばれてお宅にお邪魔してた」
「ふぅん、響ちゃんのお家に行ってたのね・・・・・」
姉さんからの質問に正直に答える。すると姉さんの目から光が消える。
さて、とっとと死にますか。
今日死ぬことは最早確定しているのだから態々生きている時間を
引き延ばす必要はどこにもない。
「そう、響さんに『いろいろな』相談に乗ってもらうために行ったんだ」
「『いろいろ』・・・・・・・・?例えばどんな?」
「いろいろはいろいろだよ」
「こうちゃん、いいから相談の内容を教えなさい」
「教える必要はない」
「こうちゃん、お姉ちゃんに隠し事をするの?」
「例え姉さんのお願いでも言えないものは言えない」
「お願いじゃないの。命令よ。お姉ちゃんの言うことが聞けないの?」
「聞けない」
「そう、なら・・・・・」
姉さんが俺に掴みかかる。
肩を掴まれた俺は姉さんに全力で壁に叩きつけられる。
そして鬼の形相になった姉さんからの脅迫が始まる。
「こうちゃん、どうして言うことが聞けないのか言ってみて?」
「答えは簡単。言う必要がないから」
「言う必要があるかどうかはわたしが決めるの。言いなさい」
「拒否する」
姉さんは俺の頬をぶつ。
いやぁ中々痛い。
「お姉ちゃんの言うことを聞きなさい!」
姉さんが大声で言葉を発するが俺は黙り続ける。
「・・・・・・そう、どうしても言わないのね。なら」
もう一発ビンタが飛んでくる。顎外れるかと思った。
まぁ、外れたところでもうすぐ火の車のお迎えが来て無理矢理乗せられる
人間には関係のないことだがね。
そんなことを思っていると今度は床に体を投げつけられた上で
組み伏せられる。
「こうちゃん、これ以上言わないつもりならわたしはどんな話をしたか
知るためにこうちゃんを監禁しなくちゃいけなくなるの。
そうなる前に言ってほしいな」
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
そろそろ言おうか。ここを逃すと言う機会は死ぬまでこない。
そう考え俺は喋り始めた。
「なら監禁されて飢え死ぬ前に言わせて貰うよ。
俺はな、姉さんのことが物心ついた時から心の底から大っ嫌いだよ」
それを言った瞬間姉さんが凍り付いた。
「昔から俺は姉さんの都合のいい駒として使われてきた。
ダブルバインドを使った洗脳で依存させ、監禁や暴力による恐怖で
服従させて人形として生きることを姉さんは俺に強いてきた。
俺の人間としての意思と誇りを完全に失わせて思い通りに動かしてきた。
それでも俺は気づいたんだよ。自分が支配されていることに。
いいように利用されている現実に。
俺はそのことを認識するまではそれでも心のどこかで姉さんは
俺のことを家族として愛してるからこういうことをするのだと
思ってたさ。
でもその事実がわかってしまってから姉さんに対しての考え方が
180度変わったよ。
あぁ、俺はただの奴隷に過ぎなかったのだと。物以下の扱いなのだと。
消耗品としてこき使われて不要になれば捨てられる運命だって。
そう悟った瞬間から俺は姉さんを絶対に許せないと、
姉さんに何も一切期待しないと、姉さんの全てを信じないと、そう決めた。
そして俺は今ここで言わせて貰う。
もう俺は姉さんの言いなりになんてならない。
自分だけのためにこれから残された時間を費やすと。
自分の信じることのために、自分の行きたい道を生きていくと。
例え死んだとしても俺は絶対にこの意志は曲げない。
曲げられるものならやってみろ。
そして、俺は一生姉さんのことを尊敬しないし親愛・友愛・家族愛
もといどんな愛情も芽生えたりしないし
芽生えたとしても向けることはない。
俺は一生姉さんのことを憎んで恨んで死んでいく。
それでも監禁するならどうぞ。
でも俺はもう貴女からの暴力や理不尽には屈しない。
もし仮に今までの理不尽や暴力に対して謝罪されたとしても
許す気は一切ない」
言いたいことを言い終わった後姉さんは俺に覆い被さったまま
無言で俺のことを見つめる。
数十秒して急に立ち上がったかと思えば二階へとゆっくり上って行った。
・・・・・・・・・助かったのか?
俺は玄関で暫く呆然としていた。
その後姉さんが夕食時にになっても出てこなかったため
父さんと母さんに何があったのか聞かれたが知らぬ存ぜぬを突き通した。
俺は風呂に入り夕食を取った後自分の部屋の中で姉さんが
俺が言いたいことを言い切った後何故無言で
自分の部屋へ何もせずに立ち去ったのか
よく分からないでいた。
俺は取り敢えず助かったという事実を認識し、一つの決意を固める。
俺は姉さんを通して女のいろいろな面を知った。
母さんを見て俺が生きている世界の現実というものを思い知った。
俺はどんな大事故に遭ったとしても絶対に女性に頼らない人生を歩もう。
彼女も嫁も一切必要としない人生を歩む。
その決意を胸に一先ず眠りについた。
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