ひいらぎ
[佐藤悠基&石川実里&???]
「あ、あのっ!私も文芸部に入れてください!」
『…………?』
「………………。」
「と、とりあえず、話を聞いてみない?佐藤くん。」
「そ、そうだね。突然で驚いたし……。とりあえず、こっちに座って?」
「あ、はい……。丁寧にありがとうございます……」
「とりあえず、名前から聞いてもいい?」
「えっ、と、私は……清水、柊、と言います。学年は……先輩たちの、一つ下、です。」
「なるほど……清水さん、ね……。じゃあまず、なんで急に文芸部に?」
「えっと……実は……私、ずっと佐藤くんのこと見てて……」
『!!??』
[佐藤悠基]
見ててって……え?え?ずっと見られてたってこと?それってもしかして……ストーカーってやつ……?
え?もしかして危ないヤツなの……?
[石川実里]
見ててって……え?え?え?それって佐藤くんのこと、好き、ってこと……?まさかのライバル登場……?私が佐藤くんの隣で本を読んでいるだけの子だと思っていたら、急に文芸部に入るってことになったから焦って私も入るしかない的なノリ……?もしかして、大ピンチなのでは……?
[清水柊]
あれ……これ私言い方間違えちゃった、のかな……あんまり人と話さないから、よくわからないよ……
[佐藤悠基&石川実里&清水柊]
「ずっと僕のことを見てて……とは……?」
「あ、いや、その……。いつも読んでいる本……が……私の趣味と合ってて……その……前から話したいなって……思ってて……。」
「あ、えっ、と、なるほど!なるほどね!そういう意味か!ちょ、ちょっと勘違いしてたなー。」
「そうよね!私もちょっと勘違いしてたみたい!ごめんね!」
「あっ……いえ……全然……大丈夫です……。」
「とりあえず、自己紹介し直すね。僕は文芸部部長の佐藤悠基。これからよろしく。」
「私は石川実里です。よろしくね。」
「私……は……、清水、柊です……。よろしく……お願いします……。」
「文芸部の主な活動は、本の整理整頓、かな。あとは自由に本を読んでるだけかな。」
「そうなんだ、なんかこう、文化祭で本出すイメージあったかも。」
「昔はあったみたいだけど、今はもう無いね。人も少ないし大変だから。」
「そうだったん……ですね……。」
「こんなもんかな。じゃあ……どうする?ここで話す?それとも本読みに行く?」
「もうちょっと話さない?交流も兼ねて!」
「そう……ですね。私も……知りたいです。」
「分かった。じゃあ……。」
『………………』
[佐藤悠基]
うん……こうなる未来、見えてたよ。何話せばいいんだ……。好きな作家さんとか好きな本とかか……?好きな食べ物はとは違うよな……?
[石川実里]
とりあえず、やばい。清水さん、こわい。本当に趣味が合ってて見てただけなの……?気になりすぎて、聞きたいことたくさんあるのに聞けない……!
[清水柊]
ちょっと……つかれたな……。
[佐藤悠基&石川実里&清水柊]
「えっ、と、じゃあ、好きな本とか!好きな本、何かある?」
「あっ、あります!」
「私、も……ある……。」
下校までの時間、ひたすらに僕達はお喋りをした。話し始めると止まらない3人であった。
「ふぅ……、下校のチャイム、鳴ったね。」
「そうだね……、なんだか疲れた……。」
「みんな夢中になって話してたもんね……。楽しかったな……。」
「私、も……楽しかった……。」
「なんだか賑やかになって、部長としては嬉しいよ。ありがとう。」
「そんな……好きで入ったから気にすることないよ。」
「そう言ってくれると嬉しい。……じゃあ、帰ろうか。」
『はーい。』
[清水柊]
下校途中、わたしは思う。彼との距離、遠かったのにこんなに近くになった。嬉しい。気づいたら彼のこと、見ていたの。初めは本当に、読んでいる本が私の趣味と合っていた、だけ。いつ話しかけようか、悩んでいたの。ずっと、待っていたの。そしたら、知らない女の子と、話してた。何か、胸の奥にもやもやした気持ちが渦巻いていたの。だから咄嗟だったの。部活に入りたいなんて、言ったのは……。
バッドエンドにはしたくないです