第93話 ロズ達の仕事
みなさーん。ずっと上ばかり見てると首が痛くなりますよ。
何事においてもタイミング、というものがありまして。
今は紹介のタイミングではなかったと言うことなのでしょうか。
難しいものです。
あらかた魔物の死体を食べ尽くすと、お行儀よく整列を始める馬達。
ウルのスキルの高さがうかがえる。
「とりあえずスタンピード騒ぎは終息と言うことで、
陽も暮れてきたし今日はお開きにしますか。」
「あの、ヒトシさん。
この子達はどうすれば。」
あ、そうだった馬小屋作ってなかった。
連れてきたのはいいけど、そっちまで手が回らなかった。
「そうだね。じゃあとりあえず地下の倉庫に向かいますか。
そこにも餌がたくさんあるからね。
クローンさん。案内してちょうだい。」
「かしこまりました。」
俺はウル達を地下倉庫に誘導すると、
御者たちに向けて話しを始める。
「それでは皆さん、今日はお疲れ様でした。
明日からも続けて訓練しますので是非参加してくださいね。
みんなで最強の御者を目指しましょう!」
「「「「「おぉー!」」」」」
「すぐに現金が欲しい場合は受付に申し出てください。
今日の分の報酬をお渡しします。」
「働いた訳でもないのに金がもらえるのか?」
「皆さんにはこれからしっかり働いてもらいますからね。
先行投資と言うやつです。」
「なんだかよくわかんねぇけど、金ももらえて強くなれて、
仕事ももらえて。言う事なしだな!」
「明日からも頑張ろうぜ!」
「そうだな、明日がなんだか楽しみになって来たぜ。」
みんなそれぞれ喜びを口にしていた。
「それでは皆さん明日も宜しくお願いします。」
明日からはまた新しい御者も来るだろうし
レベルによって分けなきゃいけないね。
…
みんなワラワラと帰っていった。
なんだかみんなの背中に活気を感じる。
よし、必ず成功させるぞ。
「ヒトシ、相談があるんだか。」
「ロズさんが申し訳なさそうに、声をかける。」
「できれば給料の前借りをたのみたい。
家族を養っている者もいるからな。
兵舎を追い出され、今はスラムの空き家で生活しているんだが。
小さな子供もいてな。
できるだけ早く、安心して暮らせるようにしてやりたいんだ。」
「給料を払う訳にはいきません。」
「な、なぜだ?金がない訳じゃないだろ?」
「なぜなら俺は皆さんを雇うつもりがないからです。」
「なら何でこんな事をしている?」
「ちゃんと聞いてましたか?
俺は皆さんに馬車と馬を貸す、と言ったんです。」
「ヒトシが雇ってくれるんじゃないのか?」
「俺がやるのは素材の採集であって運搬を仕事にする気はありません。
運搬は御者の皆さんに依頼する予定です。
つまり、俺と御者の皆は対等な立場の取引相手と言うことです。
今御者のみんなを訓練してるのは優秀な御者を産み出すための
先行投資というやつです。そして今いいことを思い付きました。」
「いいこと?」
「はい、新しい投資先を見つけたんです。」
「悪いがヒトシ、今はこいつらの家族の話をしているんだ。」
「ふふふ、そうです。こいつらとロズ隊長の話です。
取り敢えず、契約金は金貨100枚でどうですか?」
「どうもこうも、そんな大金を用意して何をやらせる気だ?」
「ロズさんたちには今までの経験を活かした仕事をしてもらいたいんです。」
「傭兵ってことか?元王国軍とは言ってもたかだか20人余りだ。
たいした戦力になるとは思えないが。それでもいいというなら…。」
「大歓迎です。じゃあとりあえず契約金です。」
俺は無限収納から金貨100枚と銀貨1000枚を渡した。
「契約金は金貨100枚だろ?そっちの銀貨はなんだ?」
「そっちは俺からの起業祝いです。
みんなの安定した生活を奪ってしまいましたからね。
身の回りの必要なものを買いそろえる足しにしてください。」
「こいつらは自分の意思で俺と一緒に来たんだ。受け取る訳には…。」
プライドからか、受け取ろうとしないロズ隊長。
「それでもです。家族にも苦労と心配をかけたのでしょ?」
「それは…。」
「なら尚更です。皆の新しい人生をこれでお祝いして下さい。」
「す、すまない。そこまで気を使わせて。」
「なに言ってんだよ。俺らとヒトシのなかじゃねぇかよ。」
ガッドさんが見かねて間に入る。
「そうですよ。水くさいですよ。」
「あ、ああ…。」
「だから俺は言ったんだよ。こそこそする必要なんてねぇってな。
なのにヒトシに迷惑はかけられない何てカッコつけるから。」
「でも来てくれて嬉しかったです。」
「「まあ、せっかく仕事するなら、ヒトシの役に立ちたいしな。」
て、隊長が言ってたぜ。」
あー、このクッソイケメンが!やっぱり好きです!
「よーし、これで嫁さんにもデカイ面して帰れるぜ!」
「何だかんだで肩身が狭かったもんな!」
「これで子供たちにうまいもんが食わせてやれる!」
隊の皆は口々に今まで我慢していた本音を漏らし始めた。
「ほら、隊長の意地はここで張るべきじゃなかったですね。」
「ああ、そのようだ。今日はこいつらと起業祝いをしてから帰ることにするよ。」
「お!いいね、隊長の婚活決起集会も兼ねてな!」
「がはは!そりゃいい!」
「じゃあなヒトシ、また世話になるぜ!」
「契約の事だが、詳しい話はまたあとで聞かせてくれ。」
「はい、こっちも準備が整ったら声かけますんで。
とりあえずそれまでは訓練に参加しててください。」
「ああ、そうさせてもらうよ。まだまだ強くなれそうだ。」
「はい、期待してます。」
「おい、隊長!みんなノドがカラカラだ。
さっさと来ないと先に始まっちまうぜ!」
「ああ、今いく!
じゃあなヒトシ、またよろしく頼む!」
「はい、こちらこそ!」
俺とロズ隊長はガッチリと握手をして絆を確かめ合った。




