第92話 フードの男達
クローンが空気を読まず
大量のレッサーデーモンを転送してきた訳ですが。
俺が頼んだのよね。ごめんなさい。
このままじゃ御者だけじゃなく王都の方にまで被害が出てしまう。
俺がやるしかないか。
「「「「おぉー!」」」」
歓声の様などよめきが聞こえてきた。
振り向くとバラバラになって吹き飛ばされた
何体かの悪魔の破片が散らばっていた。
「まさか、御者の申請に来て
この斧を振るう事になるなんて思わなかったぜ。」
さっきのフード男とは別のフードを被った山賊風の男が言った。
「「「「おぉー!」」」」
今度は魔方陣の近くでさっきのフードの剣士が
現れた悪魔を瞬く間に葬っていく。
「全くだ。ガッドの言う事もたまには聞いておくもんだな。」
「たまにはってなんだよ!」
よく見ると他にもフードを被った男達が
次々と悪魔を斬り伏せ、叩き潰し、突き刺し
あっという間に大量に現れた悪魔を殲滅した。
(次の悪魔を転送します。捕獲数は518体です。では転送します。)
(ストップ!ストップ!ストーップ!
ありがと、あとはそっちで処理していいから。)
(かしこまりました。)
それにしてもやっぱり元軍関係の人か、冒険者かな?
「ん、あれ?ガッド?
どこかで聞いた山賊の名前だな。」
「誰が山賊だ!」
フードを脱ぐ斧を持った男は、
ロズ隊長の部下、ひげもじゃのガッドさんだ。
「ガッドさん!」
「久しぶりだな、ヒトシ!」
「何でこんなところに?」
「まあ、あれだ、色々あってな。
それに、俺だけじゃないぜ。」
フードを被った数十名の男たちがフードを脱ぎ一斉に顔を見せた。
王国軍第7軍3番隊の皆だ!
「調子はどうだ魔王様。」
後ろから声を掛けられ振り返ると、
フードの剣士が立っていた。
「まさか…。」
フードを脱ぐ男。
「やっぱり。ロズ隊長!」
相変わらずイケメンですね!
「元気にしてたかヒトシ。」
そしてイケメンスマイルで隣に立つ。
「はい、魔王になっちゃいましたけど。」
「それにしては、楽しんでるように見えるな。」
「そう見えます?」
「ああ、なんだか魔王になった今の方が伸び伸びしている。」
「確かにそうかもしれません。
国に気を使わなくてもいい存在になりましたからね。
そういえば何でこんなとこに?
フードなんか被って軍の潜入捜査ですか?」
「それならこんなに堂々とはしてねぇよ!」
ガッドさんが悪魔の死体を足でよけながらこっちに向かってくる。
「下らない命令を何度も無視してたらクビになった。」
「クビじゃねぇだろ、あんな所こっちからやめてやったんだよ!」
ガッドさんお怒りです。
「そんな軍をやめるほどの下らない命令って何だったんですか?」
「スラムから人を攫って来いだの、反逆者を討伐しろだの…。」
「ガッド!その辺にしておけ!」
「いいじゃねぇか。隠すようなことじゃねぇ。」
「その反逆者って…。」
「…ああ、ヒトシのことだ。」
ロズ隊長が気まずそうに言った。
「そうですか。すいません俺のせいで…。」
「だから言いたくなかったんだ。」
「いいじゃねぇか、事実は事実だ。
ヒトシのうまい肉食わせてくれりゃ
それでチャラになるくらいのもんだろ?」
「ああ、確かにそうだな。
それがいいな。とびきりのやつだぞ。」
「わかりました用意しときます!」
食いしん坊い隊長!
ガッドさんのお陰で気まずい雰囲気が和んだ。
「そういえばアルさんは反対しなかったんですか?」
「ああ、あいつは反対どころか俺も行くって聞かなくて大変だった。
だが、あいつはな、事情があって軍を抜けるわけにはいかないんだよ。」
「なにかいろいろあるんですね。」
「ああ、そこはまず、聞かなかった事にしてくれ。」
何か人には言えない事情があるらしい。
「あとは仕事ですね。」
「やっぱりヒトシだな。よくわかってやがる。」
「ああ、そっちの方も頼めるか?
家族を抱えてる奴もいるんでな。」
「もちろんです!」
「だがまさか王国軍が攻めてきたり、スタンピードを制圧したりと…。
俺達が力を発揮する事態になるとは思わなかったがな。」
「こっちこそ、御者の皆が
王国軍を撃退するとは思いもしなかったですけどね。」
「王国軍対魔王軍にスタンピード、王都は大混乱だな。」
「あは、魔物は俺の仕業ですけどね。」
「「なに!?」」
ロズ隊長もガッドさんも目を見開いて俺を見た。
俺はバリアントホース捕獲から、
咄嗟に思いついてしまった軍事演習の事までの経緯を説明した。
「なるほど、確かに遠くに見えたのは黒くて巨大な影だった。
だが次々とオークが召喚されるからおかしいとは思ったんだ。
まさか誤解をも利用して、民心を掴もうとはな。」
「さすが魔王ってとこだな!がはは!」
ガッドさんが相変わらずの大笑い。
「必死にスタンピードの弁明をしようとしてたら
ダンテさんに狡く生きろって言われたの思い出して。
そしたら御者の皆の武勇を見て思い付いちゃって。」
「悪くないアイディアだか、やりすぎだな。」
「ついでに軍事演習もと…。」
「はははっ、そう言うことか。上手く乗せられたな!」
「すいません。」
「いや、丁度良かったかもしれん。
俺たちもどこまで強くなったか確かめたかったからな。
この魔力レベルとやらの力をな。」
「あのレッサーデーモン共がゴブリンよりも格下に感じたぜ。」
「…あのー。魔王様?」
あ、ウル達の事忘れてた。
なんだろう、最近物忘れがひどいです。
「我らを放って1人で楽しんでいたようだな。」
「そ、そんなことは…。」
ジグさん怖いです。もっと僕に優しさを下さい。
「あ、紹介しますね。
こちらが元王国軍隊長のロズさんと、副長のガッドさんです。
それで、こっちがこの馬達をテイムしてきたウルと獣神のジグです。」
「よろしく。」
「よろしくな!」
「よろしくお願いします。」
「こんな巨大な馬をテイムするなんて
若いのにすごいんだな。」
「いえ、全て魔王様と、ジグのお陰です。」
ウルは遠慮がちに言った。
「で、我らはいつまであそこで待っていればよかったのだ?」
「あはははー。
あ、ほらウル、馬達の餌を用意したよ。みんなお食べー。」
「誤魔化すな魔王。」
ウルの合図でわらわらと集まってくる巨大馬。
それを見て一様に狼狽え、
石の剣を固く握りに身構える御者たち。
しかしそんな事はお構いなしに魔物の死体を食い漁る巨大馬。
「…えーと、これが皆さんにお貸しする馬です。
この馬を使ってあの巨大馬車を引いてもらいます。」
いきなりの仕事の相棒紹介に皆さんポカーンですよ。




