第90話 王国軍拠点襲撃
と、言うわけで。
俺の目の前には数十頭の巨大黒馬が
横一列に一切の乱れなく並んでいる訳ですが。
「ウルさん。今日はそのくらいにしてあげて下さい。」
「はい!じゃあみんな今日はお疲れ様。
後でたくさんご飯あげるからね。
で、いいんですよね。」
「う、うん。みんなが倒したゴブリンの死体たくさんあるから。
連れて帰ってそれを食べさせてあげよう。」
死体の処理のこと考えてなかったから一石二鳥ってやつだ。
「だって、よかったねみんな!魔王様に感謝だよ!」
「「「「「「「「マオウサマイッショウツイテイキマス。」」」」」」」」」
「う、うん。ありがと。」
なんだか馬たちのイメージががかなり変わったんだけど。
あの後ポーションの力で元気になったウルは
新たに覚えたスキルを駆使してあっという間に
全てのバリアントホースを手懐けてしまいました。
そして新たに調教、訓練、統率のスキルを獲得したのでした。
騎馬隊でも作るのかな。
「あのウルさん。テイムの方も今日はこのくらいでいいんじゃないかな?」
「私なら大丈夫です。まだまだ行けますよ!」
「うん、でもね。まだ飼う場所も決まってないんだ。」
そう、まずは厩舎を作って馬たちをちゃんと管理しないといけないんだ。
「私、ここに住みます。」
「はいい?確かにここにいれば餌には困らないかもしれないけど。」
(マスターそれは不可能です。
この森で生まれた魔物はダンジョン内にいる限り
浄化作用により一ヶ月に一度吸収されてリセットされます。)
浄化作用
…ダンジョン内で生まれた者は環境を一定に保つ為自浄作用によって
一度吸収され新たに生成し直される。
魂を持つ者以外は記憶も消える。
更新の頻度はダンジョンによって異なる。
つまり手懐けてもダンジョン内にいたら
吸収されてテイム前の状態に戻るってことか。
「てことで、ダンジョンの中で暮らすのは無理だってさ。」
「そうなんですね。」
「俺としても出来れば王都の近くにいて欲しいかな。」
「わかりました。
両親の事もあるし、無理だとは思ってましたけど。
こんな自然がたくさんの場所で暮らせたらどんなにいいかと思っただけです。」
ウルはそういうと少し未練があるのか苦笑いを浮かべた。
「それじゃあ戻ろうか。」
後で俺のダンジョンに招待しよう、
あの大自然を見たらきっと喜んでくれるはずだ。
「よし、移動開始だ。」
ゴゴゴゴゴ…。
「はい、ストップ。これじゃ無理です。」
「魔王様どうしました?何か不味い事でもありましたか?」
「バリアントホースの大移動。
このまま馬たちを王都に連れて帰ったら
この地響きと土煙で必ずスタンピードと間違われるよ。
俺先に帰って冒険者ギルドマスターに報告してくるから、
少しゆっくり帰ってきて。
クローンさん、ウル達に道案内よろしくね。」
「分かりました。」
「それじゃあみんなこっちも出発だよ。」
ゴゴゴゴゴ…。
-ペンレシア冒険者ギルド長室-
「ハローハロー。ダンテさんちょっとご相談が。」
「ヒトシ、そんなことより今、王都はスラムに突如姿を現した
王城にも匹敵する規模の建築物の話題で持ちきりだ。
これはお前、だな?」
「はいそうですよ。」
俺は、何ともない風に返事をした。
「魔王の仕業だと言う報告があり、
王国は大規模調査団を組織して向かわせたぞ。」
「え、調査ですか?」
「調査といってもいつでも魔王の拠点を叩けるように準備した王国軍だ。」
「不味い…。」
あそこにはまだ訓練中の御者達がいる。
クローンだけならなんとでもなるけど、
御者を人質に取られるのだけは避けたい。
「ちょっといってきます。」
「ああ、急いだ方がいいぞ。」
…ドォーン。
遠くで爆発の音だ。
俺は急いで拠点に転移した。
しかし拠点の中には誰もいなかった。
御者たちの訓練のために切り殺されたゴブリンの死体が
山積みになっているだけだった。
「すでに全員捕まってしまったか…。」
迂闊だった。これでもし犠牲者でも出ようものなら
残された家族になんて説明しよう。
地上に出ると。外がワーワーと騒がしい。
「そんな火の玉なんて遅すぎて当たんねーんだよ!」
「こんなもんか。脆い、脆すぎるぞ!」
「テメーら、いつも威張り腐ってるくせして大したことねーな!」
目に飛び込んできたのは王国軍を挑発しながら
即席で作った石の剣を振り回しながら
数千の敵を蹂躙する御者たちの姿だった。
「マスターおかえりなさいませ。」
「え、と。これはなんだい?」
「はい、マスターが出掛けて数時間がたった頃、
調査団を名乗る王国兵があられました。
武力行使を示唆する発言をした為、
御者に避難を促し安全を確保しようとしたのですが…。」
「それが何でこんなことになってるの?」
「はい、御者たちは王国軍と聞いて最初は怯えていました。
しかし、ある者が言ったのです。
「あいつらホブゴブリンを倒すのにも3人がかりらしいぞ。」
「何、俺たちは一人でゴブリンキングを倒せるぞ!」
「なんだ大したことないな!」
「ここはいっちょ、日頃の恨みを返しとこうぜ?」
「いいなそれ…。」」
「ちょっと待って、今なんて?」
「「いいなそれ。」です。」
「いやゴブリンキングがどうとかって。」
「「一人でゴブリンキング倒せるぞ!」です。」
「え、ホブゴブリンでしょ?」
「ホブゴブリンは開始10分で全員倒せるようになったので、
その後はゴブリンジェネラル、ゴブリンキングと順調に進み、
ゴブリンロードを倒す猛者まで現れ始めたところでした。」
ちょっと強くなりすぎでしょ?
冒険者でいったら既に全員Bランク以上ってことじゃん!
最強御者軍団がここに誕生しましたよ。
ゴゴゴゴゴ…。
遥か南方、土煙を上げながら轟音と共に王都に迫る魔物の群れが現れた。
あ、バリアントホースの事ダンテさんに言うの忘れてた…。




