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第88話 魔人の力 巫女の力

獣神ジグが張り切って連れて来た

バリアントホースの群と対峙している訳ですが。

いくら巨大馬とは言っても、

明らかにドラゴンなんかよりは格下なのは間違いない。


「さて、どう料理したものか。

 せっかくジグが連れて来た馬だしな。」


俺はスライムスーツを装着。

疾駆で平原を駆け一気に距離を詰めて群の正面に立つ。


『≫グロァァァァ!≪』


ドラゴンロア。天地を震わせる竜の咆哮だ。

ドラゴン狩りまくってるからね。

スキルをコツコツ集めて咆哮もブレスもレベル14ですよ。

ブレスの方は口の中火傷しそうで使ってないけど。

猫舌なもので。


天地を震わせるほどの咆哮に暴走特急バリアントは緊急停車です。

ふう、どうやら人身事故は免れたようです。

恐怖に震えて動けないバリアントホース達。

しかし一頭だけそれに耐え抜いた馬がいた。

一回り大きな馬がヨロヨロと立ち上がる。

これは生まれたてのやつですね。他の馬より一回り大きいけど。

こいつが群れのリーダーのバリアントギャロップか。


「ワレラヲドウスルツモリダ。」


これは、獣神の加護のお陰か。魔物の声が聞こえる。


「これから俺の指示に従ってもらう。」


「ワレラハマダマケヲミトメテイナイ。」


食い下がるギャロップ。


「咆哮だけで、動けなくなったのに?」


「ソレハ…。ダガ、チカラデハマケヌ。」


「力比べか。わかった。じゃあ先に倒れた方が負けね。」


「ソレデイイ。ソレデハイクゾ。」


巨大馬はじりじりと少しずつ距離を取り、

その強脚で大地を抉り突進してきた。大口を開けて。


「お前それ力比べじゃないから。」


グシャリ…。


右の平手で叩き落とされた鼻先は下顎にめり込み、地面に半分埋まった。


リーダーを力でねじ伏せられて、

他の馬達に抵抗の意思はすでに無かった。


グシャグシャになったリーダー馬の顎に

ポーションを振り掛け元通りにしてやる。


「一応さ、俺はここのダンジョンマスターだから。」


何でダンジョンマスターにケンカ売ってこようと思うんだろう。

俺がダンジョンマスターだって分からないのかな?

威厳が無いから。


「ハイ、モウシワケゴザイマセン。」


ダンジョンマスターという事を知り、巨体が背中を丸めて小さくなってる。


はい、制圧完了ね。


「はい、これで勝負つきましたよ。」


振り返ると、二人とも目が点になっていた。

これが魔王様の実力というものですよ。

おーい、大丈夫ですかー?


「まさか、龍の眷属だったとはな。」


「魔王様が龍の、眷属?」


ウルが首をかしげる。


「さっきの咆哮を聞いたろ?」


「うん、すごかった。大地も空も悲鳴を上げてるみたいだった。

 荒ぶる馬たちの動きも一瞬で止めたし。」


「あれは竜の咆哮だ。

 我も龍共とは何度かやりあったことがあるが、

 強靭な体躯と頑強な皮膚を持っていて、咆哮やブレスも厄介だ。

 上位種になると高度な魔法を使ったり、

 人化で人間のように振る舞ったりする変わり者もいる。」


やっぱり人化に対しては否定的な意見なわけですね。


「確かに今のはドラゴンのスキルですけど、俺は人間だよ。」


たぶん…。


「まさか、人間にあの技が使えるはずがない。

 竜の血は混じっていないというのか?」


「はい、この咆哮は俺のスキルの能力なんです。

 倒した相手から、スキルを奪う能力なんですけど。」


「な?!スキルを奪うだと?」


「はい。と言っても、スキルの残滓を集める感じですけど。」


「やはりか!それは大昔に滅びた魔人の能力だ。」


確かにスキルを奪う能力は

魔人化の派生スキルを手に入れたときに使えるようになった能力だ。


「魔人は古代魔導大国の末裔と自らを名乗っていたが。」


「末裔…、って事はその国は滅んだんですか?」


「そう言うことだ。

 我も何度か転生を繰り返して記憶を失っているので確かなことは言えないが、

 今の記憶では既にそのような文明は存在しなかった。」


「そんな凄い力を持った人達が滅ぶなんて…。」


「いつでも力を持ち過ぎた者は自らの力に滅ぼされるものだ。

 私も、人の事は言えないか。」


「そういうものですかね。」


「力は誇りになるが、過ぎた誇りは慢心を生み、

 慢心は嫉妬、怨恨を生む。

 末裔たちはいつも魔人であることを誇り、

 周りと手を取り合うことをしなかった。

 滅びるその時までな。

 全てが滅んだ今ではそんな誇りも無意味だというのに。」


まるで親しい者の話をするように懐かしむように言った。


「ジグさんは魔人と知り合いだったんですか?」


「ああ、既に顔も忘れてしまったがな。

 ずっと昔のことだ。今更だが我も長い年月を生きたものだ。」


「ジグはずっと長い時を生きて、色々な物を見てきたんだね。」


「そして数多の巫女と多くの時を過ごしてきたが。

 ウルが一番戦いの出来が悪い。」


「それは、…ごめんなさい。」


「冗談だ。巫女の力とは信じる力。

 我が死して尚、ウルのもとに戻れたのは、

 優しく強いウルの我を思う気持ちがあったからだ。

 巫女からすれば私は力の象徴。

 しかし力を求めれば求めるほど心と魂の繋がりは離れる。

 力を求めぬウルにこそ最大の力を与えることが出来るとは皮肉な話だ。」


獣神は何かを思い出したように悲しく笑った。


「魔王よ。一つ忠告だ。」


「はい。」


「やつらは力を求めすぎ、自身が成長する事をやめた。

 身の丈に合わぬスキルは己の身を滅ぼす。

 スキルは魂に育つ木だ。

 魂の力を吸い上げて育ち、やがて一つの実を付ける。それがスキルだ。

 しかし魂の大地に育つ木の数は限られている。

 植えられ過ぎ、育ち過ぎた木は

 栄養を求め未熟な魂の芯まで根を伸ばし、主を食い殺す。とな。」


スキルに食い殺される、か。

魂の成長。

そもそも魂って何なんだ?


「そう難しい顔をするな。そうならぬための忠告だ。

 どうやら今のお主なら心配はいらぬようだ。

 まあ、ウルと我を再び巡り会わせてくれたせめてもの礼だ。

 ほら、でかい図体の馬共が震えながら魔王の裁きを待っているぞ。

 次はどうするのだ?」


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