第87話 スレイプニル大平原
俺たちは今森の中の平原に来ている。
正確に言うとスレイプニルが生息するとされる
森の中にある大平原のダンジョンだ。
生息する魔物は馬、狼、鹿、山羊、熊など大型のものから
小動物まで多種多様な生物が生息している。
魔物たちはそれぞれに生態系を形成し、
弱肉強食の世界で生きているようだった。
そして、ついさっき俺のダンジョンとして生まれ変わった姿だ。
獣神ジグが子供の灰色馬の事を
ダンジョンの魔物と言っていたのを聞いてピントきた。
近くを探索していたフィールドシーカーを捕まえて
周辺を探索してもらったら案の定、
ダンジョンに繋がる次元の裂け目を発見した。
洞窟や渓谷の目に見えるダンジョンと違って
フィールド型のダンジョンは非常に発見しづらい。
なんせ木と木の間3~4メートルの範囲が入り口だったりする。
さらにダンジョンの構造も外と同様に森だったりすると、
ダンジョンの入り口が目の前に存在していても全く気付けない。
このダンジョンは元々小さな森のダンジョンだったんだけど、
例のごとくダンジョンマスターを倒して魔結晶を手に入れて
ダンジョンマスターを生成し直したら望みを叶えてあげちゃって、
様々な動物が豊富に存在する広大な平原になってしまったという訳。
魔力相当使ったけどね。
そして驚くことに、ジグはスレイプニルだった。
あ、誰も驚かないね。
そして、スレイプニルはバリアントホースより上位の魔物だった。
聖獣になったから強くなったわけでなく、元々強かったのです。
ジグもまだ目覚めたばかり、ウルも資質に目覚めたばかり、
スレイプニルも子供。まだまだ聖獣としては弱いのである。
待って、おかしいよ。
あのデカい馬の頭を一撃で吹き飛ばしてらっしゃいましたよね。
まだまだ弱いっておかしいよね。
なんと今日ここに新たなチートが誕生しました。
お願いだから敵に回らないでね。
「何をボーッとしている。
さっさと先に進むぞ、魔王。」
ちなみに、獣神の加護をもらったので
俺もジグちゃんと会話が出来るようになりました。
ちなみに、人化とか出来るのか聞いたら、
「なんだそれは?そんなものに何の意味がある?」
と、連れない答えでした。とんだツンデレさんです。
と言うわけで、例のごとく経験値の魔石を落とすので
ウルのレベリングをしながら中央に向かっている最中です。
最初はヒーヒー言いながら必死に魔石を拾っていたけど、
一時間もすると、相当ステータスも強化されたのか、
ペースが跳ね上がった。
「ダンジョンで言えばそろそろ中盤辺りだね。」
バリアントホースが姿を現すようになった。
しかしそんなのお構いなしに次々とバリアントホースを葬るジグ様。
「ちょっと待ってジグ。」
そんなジグをウルが止める。
「何だウル、もう音を上げたか?」
「違うよ、むしろやり始めた頃の方が音を上げそうだった。」
「ふん、言うようになったな。」
ジグの声にはウルに対する優しさが込められている。
「そろそろ、テイムを試したくなったんだよね。」
俺が二人の会話に口を挟むと、
「調子に乗るなよ魔王。ウルはそれで危険な目にあったのだぞ。
もう忘れた訳ではあるまいな。」
俺にツンでウルにデレのタイプなんですね。分かります。
泣いていいですか?
「そんなこと言わないのジグ。
魔王様に会わなきゃ、私はスラムで何も出来ない弱虫のまま。
きっと私達、また出会うこともなかったんだから。」
それはウルが、必死の覚悟で御者になる道を選んだから開けた運命だとおもうんだ。
それにしてもウルはさっきから獣神に対してこの態度である。
気負いというものが全くなく、今まで通り。
神と崇められる存在と知ってか知らずか、かなりの大物っぷりである。
「魔王、さっきから何をニヤニヤしている。」
「いや、ウルとジグは仲がいいなと思って。」
「あ、当たり前だ。聖獣と巫女は一心同体。いつでも一緒だ。」
「そうだね、ありがとジグ。」
ジグの首に下から腕を回し引き寄せ撫でるウル。
ああ、尻尾を激しくパタパタさせてジグ様がデレてる。
「だからこっちを見てニヤニヤするな気持ち悪い。
もう行くぞ。さっさと馬を捕まえてくる。
それでいいのだろう?」
「はい。」
「うん、お願いね。」
10分後…
物凄い土煙と共にドヤ顔でご帰還のジグ様。
「ジグさんあれは何ですか?」
「あれはバリアントホースの群れだ。
喜べ、群れのリーダーは変種のバリアントギャロップだ。
体格は一回り大きいだけだが、パワーは10倍の凶悪なやつだ。
さあ、猛者共を選び放題だぞ。」
「ジグさん、ウルに何をさせる気ですか?」
「何とは、強靭な馬共をウルの力を使って下僕にしたいのだろう?」
「あの、さっき俺に危険なことさせるなって怒ってませんでした?
こんなに沢山のお馬さんどうやっても手懐け切れないでしょ。」
「…つい。」
ああ、しょんぼりさん。
ウルにありがとう言われたのが相当嬉しかったのね。
「さすがにこの群れの突進を押し止めることは不可能だ。
ウル、背中に乗れ!逃げるぞ!」
「でも、魔王様が!おいていけません!」
「大丈夫だよ。俺もこう見えても魔王の端くれだからね。
何とかしますよ。」
しょうがないな。ここは魔王様の実力を見せて、
流石魔王様。言われる場面ですな。いっちょ気合を入れますか!
「ふん、ダメだった時は置いて逃げるからな。」
「え、そのときは一緒につれてってよ…。」




