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第84話 ゴブリンレベリング

男達は皆、一心不乱に剣を振るいゴブリンを倒している。

一撃で両断できた者から、何度も打ち込んでやっと倒せた者まで様々。

幸い怪我をした者はいないようだった。


「はい、皆さんお疲れさまでした。

 初めて戦闘を経験する方もいたと思います。

 具合の悪くなった方はいませんか?」


すると三名ほど手が挙がった。いずれも女性。


全員男かと思ってたけど、女の人もちらほらいるね。


「決して無理はしないで下さいね。

 離脱する際は近くのクローンに声を掛けて下さい。」


そこまで焦って強くなることはないからね。

ホントは魔石なんかが出る予定じゃなかったから、

地道にゴブリンでレベル上げるつもりだったし。


「えー、では、自分の倒したゴブリンから離れて下さい。」

 

そろそろ移動し終わったかな。


「はい。では、足元に転がっているガラス玉を拾ってください。」


あちらこちらで小さく、驚きの声が上がる。


うん、みんな自分のドロップした魔石は拾ってないのに

ちゃんと経験値を手に入れてるみたいだ。

これで倒した本人じゃなくても吸収されることが分かった。


「それは魔石です。」


一様に驚きの表情だ。


「大丈夫。安全です。」


…たぶん。


「その魔石は俺のダンジョンのモンスターから採れる、

 経験値と魔力が込められた魔石です。」


「ヒトシさんのダンジョン?」

「ダンジョン持ってるんだ。」


次々と驚きの声が上がる。


「あ、南にあるゴブリンの洞窟を手に入れただけですけどね。」


「だけどゴブリンが魔石を落とすなんて話は聞いたことがないぞ。」


「魔石は俺がダンジョンマスターになった時に

 ダンジョンを改造して落とすようになりました。」


偶然だけど。


「そんなことが…。」

「さすが魔王様。」


「ちなみに経験値魔力は いくらでした?」


「10ずつです。」

「俺も10ずつでした。」

「みんな10ずつだな。」


「やっぱり。」


俺は自分の能力で吸い尽くしちゃうから魔石にまで回らないだけで、

普通は魔石に魔力が込められるんだ。


「では再開しましょう。準備してください。

 今度は少しゴブリンの支配を緩めますので、

 少し動くと思います。

 気を引き締めて掛かって下さい。」


それぞれが動かないゴブリンの前に立つ。準備完了。


「では始めますよ。

 全部一気に動かしますから倒せる人はどんどん倒して

 苦戦している人をカバーしてあげて下さい。

 あ、魔石はまだ拾わないで下さいね。

 魔石に目が行って敵から目を逸らすと危険なので。

 では始め。」


腕に覚えのある者も結構いるようで、

未経験者を上手くサポートしている場面があちこちで見られる。


よしよし、上手く回ってる。

徐々に戦いなれてきたのか、

やや討伐のペースが上がってきたかな。


「はい、ストップ。」


支配でゴブリンを止め。一時中断。


「はい皆さん、よく出来てますよ。

 結構倒しましたね。

 1人5個くらいずつは拾えるかな?」


一斉に魔石を広い始める参加者たち。

数個拾ったところで、あちこちから感嘆の声が上がる。


「レベルアップした方が多いと思います。

 しかし、レベルアップしなかった方も何かを感じたと思います。

 ステータスを確認してみて下さい。」


「す、すごいステータスが倍になってる。」

「お前もか、どういう仕掛けだこりゃ?」



「はい、それが成長点です。

 実際は魔力レベルと言いますけど。

 その話はまたいずれ。

 ゴブリン程度ならもう問題なく倒せると思いますが、

 まだ自信のない方は、近くに残ってる魔石を拾ってください。」


「はい、そこの髭のおじさん、

 自分が強くなりたいからって魔石を拾うのは止めて下さい。」


顔を上げ、頬をポリポリ。


見てますからね。


「では徐々にゴブリンの動きを解放していきますからね。始め。」


うん、やっぱり見違えるように動きが良くなった。

能力的にはゴブリンはもう敵じゃない。


となると見えてくるのが、


「適正、か。」


度胸や覚悟だけではない、性格、生育環境の違いから出る差。

「慣れ」と言う言葉だけではどうしようもない事もあるかもしれない。


急激なステータス上昇に殆どの参加者がやる気を漲らせる中、

さっきの3人は浮かない表情だ。

一番調子が悪そうなのは最年少か、14、5才の女の子だ。

迫ってくるゴブリンはなんとか切り伏せてはいるけど、

自分から積極的に行く事は無い。何度か嘔吐した跡もある。


うーん、何で離脱しないんだろう。明らかに不向きだろうに。


彼女の隣に行き、


「頑張ってるね。こう言うの苦手みたいだけど大丈夫?」


「は、はい…。」


「ホントに?」


「…嘘です、ごめんなさい。」


限界だったのかへたり込んでしまった。


「ごめんなさい、迷惑掛けて、ごめんなさい。」


「大丈夫、立ってるのも限界だったろ?

 君は誰よりも頑張ってたって事だよ。」


「でも、やっぱり…。」


「そうだね。普通の御者にならなれるんだろうけど。

 俺が貸すのはスレイプニルの馬車だからね。」


周りで話を聞いていた者の中で、

スレイプニルと聞いてギョッとした顔をしている者がいた。

恐らく知っているのだろう。

肉食の獰猛な魔物で自分よりも弱いと感じた者には従わない

「魔馬」だと言うことを。


「ほら、よそ見してると危ないですよ。」


よそ見していた男は不意を突かれ反応できない。

が、ゴブリンの攻撃は来ない。

ゴブリンは赤く発光し光が収まると灰色のゴブリン像が完成した。


「こ、これは?」


「ゴブリンを内部から燃焼させました。それはただの灰です。

 動きは遅くても、魔物ですからね。気を付けてください。」


「は、はい。すいません。」


灰だけに?


「す、すごいです。」


「ああ、これ?ファイアーボールと一緒だよ。

 誰かに当たったら危ないからね。

 相手の中に炎を作る感じでやってみたんだ。」


「そ、そうなんですね…。」


あれ、上手く伝わらなかったかな?


「君、名前は?」


「ウルです。」


「ウル、こんなに無理してまでどうして御者に拘るの?」


「私にはテイマーの「資質」があるからです。」


「資質?」


「はい、魔王様はきっと魔法の資質を持っていらっしゃるのでしょう。」


「どうかな?

 魔法のスキルはあるけどね。」


「スキルとは違うんですけど。何て言ったらいいのかな…?」


近くにいるクローンが説明を始めた。


「資質とは生まれ持った才能であり、

 他者に比べ突出した優位性を持ちます。

 例えばウルは動物や魔物にとても好かれる才能があります。

 ちなみにステータス画面には表示されません。」


「じゃあ何故分かる。」


「受付の時にそう申告がありました。」


おう。そう言うことね。彼女なりのアピールだったわけだ。


「私、字を書くことも読むことも出来なくて、

 物覚えも悪いので、まともな仕事をさせてもらえないんです。

 動物のことなら得意なんですけど、

 スラムじゃそんな仕事ある訳なくて。」


「で御者ならできるかもと。」


「はい。」


「そっか。でもこのやり方は、

 君には向かなかったみたいだね。」


「はい…。」


少女は目に涙を溜め、絞り出すような声で返事をした。

やっと見つけた、自分の得意分野で、

実力を発揮出来ない事への失望。


「クローンさんや。」


「はい、マスター。」


「俺ちょっと出掛けてくるから、

 今日はホブゴブリンくらいまで進めて切り上げて。

 ゆっくりペースでいいから。」


「かしこまりました。」


「さ、ウルちゃん。

 あなたには特別訓練を用意します。

 付いてきてください。」


少女は困惑と不安の入り交じった表情をしていたが、

何かを吹っ切るように明るく返事をした。


「はい!」

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