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第82話 愚王ペンレシア

-王城エントランス-

案内の衛兵に挟まれ、謁見の間への道を進む。


王城も三度目か。でも未だに王様に会った事無いんだよね。

愚王として有名だけども、実際はどうなんだろうね。

一緒にヴォルフガングも居るんだろうし、気を引き閉めて行かないとな。

あ、大臣のところに顔を出しても面白い事になるかも。

いやいや、今日は真面目にいこう。

…今日は?

いつも真面目ですけど、なにか?



暫く歩き見覚えのある部屋の前に辿り着いた。


-謁見控え室-

いくつかの小さなテーブルとベンチ、

壁掛けの姿見の置かれた、十畳ほどの部屋。

ベンチに腰掛け、謁見までの待ち時間。

ダンジョンに向けて出発したクローンの様子を見る。


いくつかのダンジョンには既に辿り着き、探索を始めている。

目的地に到着したフィールドシーカーは

ダンジョン探索用にクローンを生成して

ダンジョン周辺の探索を始めている。


新ジョブ

ペネトレイター…

攻撃スキル各種、隠密スキル各種、広範囲索敵、透視マッピング、罠探知・解除、解錠、ダンジョン内行動力・ステータスUPを持つダンジョン用万能職。その名の通りダンジョン攻略者である。ジョブレベル10の上級職。透視、索敵、隠密を駆使してあっという間にマッピングしながら気付かれずに最下層到達する。


-ゴブリンの洞窟最奥-

このゴブリンキングがダンジョンマスターのようだ。

取り敢えずコイツを倒して、と。


コロン。


あ、そうだ魔結晶落とすんだった。

とても小さい魔結晶を回収して

ダンジョンマスターに承認されたところで、

ゴブリンキングを生成。


ドクン!


とダンジョンが波打つ感覚があった。

ゴブリンキングが赤く光り始める。


あれ?これどっかで見たことあるよ。


マッピングして来たはずのダンジョンが消え、

ダンジョン内は全く新しく作り替えられていた。


姿を変えたのはダンジョンだけじゃなかった。

ゴブリンキングとは比べ物にならない程の風格を持った

緑色のガチマッチョが威風堂々、立っていた。


ゴブリンエンペラー。

力強さと品格。まさに皇帝と呼ぶに相応しい姿だった。


「我が悲願、此処に果たされました。

 新たなダンジョンの主に忠誠を…。」


皇帝は跪き、頭を垂れた。


「うん、君も今日から俺の一部だからね。

 しっかり生産してくれよ。」


「はっ、主よりの有り難き励ましのお言葉、胸に刻んで励んで参ります。」


「う、うん、そんなに畏まらなくてもいいからね。

 取り敢えずダンジョン情報ちょうだい。」


「は、只今開示します。」


情報が流れ込んでくる。


全五階層で最後がこの城か。


「随分でかくなったね。」


「主の生命力と魔力のお陰かと。」


「そういう事か。これなら結構な収入が期待出来そうだな。」


(マスター一つ忠告があります。)


お、珍しいね。クローンから忠告なんて。


(只今のダンジョン作成で経験値1億、総魔力1億が消費されました。

 レベル及びステータスの低下にご注意ください。)


わーお、ダンジョンには深層の方が使われるんだ。


(本来はダンジョンとダンジョンマスターの魔力は

 混ざり合う事は無いのですが、

 変換のスキルにより利用可能となったようです。)


わお。ダンジョン拡張し放題じゃない。


(しかし、経験値と総魔力を消費するので、

 過度の使用は能力の低下に繋がります。

 お気をつけください。)


了解です!


「では、早速始めさせてもらうよ。」


「主のお望みのままに。」


各階層に一体ずつクローンを生成していく。

第一階層はゴブリンが単体で生息している。


初級者向けだね。


殲滅を開始しようと近づき倒す。

死体は素材にもならないから放置で。


コロン…。


倒れたゴブリンから小さなビー玉が転がり落ちた。


ドロップ品?魔結晶以外で初めてだな。


手に取ると、スッと溶けるように吸い込まれる。


[経験値0獲得。魔力0獲得。]


これは…?


もう一体倒してみる。




―コンコン。


謁見控室のドアが叩かれた。


あ、謁見の時間だ。これからだったのに。

取り敢えず、この件はあとだ。


「魔王ヒトシ様、謁見の準備が整いました。」


呼びに来たのは妖艶な雰囲気のメイドさんだった。

華奢な体つきだが、大きく開いた胸元には深い谷間が存在していた。


これは一度谷底に落ちれば這い上がってくるのは至難!

まさに悪魔的魅力!


「て言うか、悪魔?」


あ、思わず声に出てしまった。


ぴくっ。


あ、反応した。


「くれぐれも、ヴォルフガング様と国王に粗相無き様。」


名前呼ぶ順番気を付けようね。王様が先でしょ?国王に様ついてないし。

ヴォルフ様、使い魔の再教育が必要ですよ。


「もちろんです、そっちが礼を欠かない限りね。

 例えばメイドさんが魅了を掛けてきたりね。」


彼女に満面の笑みを向ける。


ビクッ!


最近笑顔の使い方が分かってきたような気がします。

…悲しいけど。


-王城謁見の間-

両側には等間隔に大理石の柱が立ち並び、

高い天井にはいくつもの絵画が描かれ、

荘厳な雰囲気が漂っている。

正面に目を向けると豪華な玉座に腰掛ける一人の男が

こちらを見下ろしていた。

傍らにはヴォルフガングと、

美人秘書といった雰囲気の目付きの鋭い女が立っていて、

真ん中に座る男は背中を丸め、いかにも卑屈そうにしている。


あれがペンレシアの王様?


そう、まるで覇気がなく。

漂う雰囲気もただのくたびれた中年親父だ。


最初に口を開いたのは王の左に立つ男だった。


「久しいな、魔王ヒトシ。

 いや以前は魔王ではなかったか。

 まさかこんなに凶悪な男だったとはな。

 世界制服をする男が王都でチョロチョロと何をしている?

 我が国の民が怯えているではないか。

 それから、遣いに出した我が黒騎士が帰っておらぬのだが。

 なにか知らぬか?」


相変わらずよく喋るおっさんだな。


「そんな凶悪な男ならさっさと捕まえた方がいいんじゃないですか?

 民のために。

 あ、黒い奴等ならその民に酷い事しようとしてたので、

 止めておきましたよ。」


「ほう、あれは我が部下でな。

 優秀な男で国の宝とも言える近衛筆頭だ。

 多少の事は多目に見てはくれぬか?

 して、行方は知らぬか?」


多少の事?

「多少じゃなさそうだったんで、こうなりましたけど。」


無限収納から19体の甲冑騎士を放り出した。

反応は…、無しか。


「おお、ゼプロスよ。どうしてこのような姿に?」


黒い甲冑に近づき白々しく兜を外す。


あ、固まった。


カラッカラに乾燥していたせいで兜ごと首が取れてしまったようだ。


「貴様、何をした!俺の部下に、何を…!」


「え、再召喚できないように

 魔法で芯まで乾燥させて、倒しましたよ。」


「貴様、何故それを?!」


「何故でしょう。貴方のお陰かもしれませんね。」


俺は王城に来る前にリフエムに連絡を取り

悪魔と悪魔召喚について聞いていた。

悪魔召喚にはいくつかの種類があって、

ヴォルフが使っているのは生きた人間に悪魔の精神を植え付ける方法だといっていた。

精神支配をしてから乗っ取らせるのが一番早いが、

ヴォルフガングはそのまま悪魔の精神を憑依させて、

人間の精神が徐々に衰弱して行き

悪魔に乗っ取られていく様を眺めているのがお好きらしい。

気まぐれで手を差し伸べたり貶めたり、何よりも好きなのは色恋沙汰だ。

カップルを呼び出し、どちらか一方に悪魔を植え付け、

信頼関係を壊しながら弄び女を男の前で調教するのが一番のお気に入りとか。

んで、その生きている人間に憑依させるのが一番難しい技術だが

最大限に悪魔の能力を引き出せる方法だという。

何より、ほんのひと欠片でも生身の部分が残っていれば

再び魔力を込めることで再召喚が可能と言う厄介なものだった。


「まさか、こうなる事を知っていたのか!」


「どうでしょうね。」


いえ、たまたまです。


「おのれ、愚弄するか!」


「お前達がそうさせたんだろ。

 我が名は魔王ヒトシ。貴様らに仇なす魔王だ。

 お望み通り魔王らしく振る舞ってやるよ。」


「もうよいヴォルフよ。貴様ではもう手に負えないようだ。」


さっきまで虚ろな目で見下ろしていた国王は

まるで別人のように覇気を纏っていた。

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