第8話 クローン、豚退治始めました
目を覚ますと朝モヤならぬ
朝瘴気に包まれ目を覚ます
またやってしまった、寝落ちである
クローンたちが不眠不休で集めた大切な魔力を
夜中のうちに垂れ流しである…
本体がこんなで申し訳ない
クローンのほうが非常に優秀なのである
とにかく魔力の最大量が低いことがもっぱらの悩みである
昨夜は探索の成果を確認して
久々の食事にありつけたことですっかり油断してしまった
つい気を抜いたところに睡魔が襲いかかってきた
瞬殺であった
これで3度目か
朝モヤならぬ朝瘴気対策として
夜はクローンの活動を休止していたんだけど
ついつい、油断してしまった
瘴気を振り払い、昨日のビッグボアの肉に噛り付く
野生の味だ
味が濃くて、獣臭い
調味料なんてないから肉の味そのままなんだけど
5日ぶりにありつけた食料に俺は満足していた
ステータスのおかげか固くなった肉もバリバリと食いちぎれる
このままサバイバル生活でも全然問題ないね
俺はこの森で生きていけることを確信した
さてさて、あふれ出てるもやもやを何とかしなきゃね
とりあえず魔力タンク満タンのクローンたちに魔臓特化で
レベルアップしてもらう
そして余計な魔力をクローンたちに逆転送
とにかく今はクローンたちを使って魔力を貯める方法しか思いつかない
声『魔力転送レベルが4に上がりました』
今では謎の声も適当である
文章もその時の気分で適当に変わるようになった
声『…。
転送速度が120/秒に上昇しました』
最近は転送も活用してるからレベルも4まで上がった
そうそう、魔力総量を増やすだけなら
クローン生成と合流をひたすら繰り返せばいいと思って
やってみたんだけど生成するときにつかった魔力は
回収できないみたいだった
変質するのか、使用済みみたいになるのかわからないけど
生成した魔力はクローンの中で強化に使用してもらうのがよさそうだった
俺は水場に移動し顔を洗い
水を両手ですくい上げ一気に飲み干した
気分一新
食べ物とおいしい水は活力を取り戻してくれるね
朝日を浴びて、今日も一日頑張ろうって気持ちになるよ
さてさて、今日は昨日発見したオークとリザードの住処
どちらから潜ろうか
もちろん同時でもいいんだけど
最初は自分で見て探索しないとね
もう操作はクローンの自立思考に任せて
俺はブレーンとして指令を送るだけ
だってクローンのほうが戦闘うまいんだもん
ほんと優秀な子たちですこと
いずれは俺も経験を積んで
しっかり自分でも戦えるようにしておかなきゃとは思うんだけど
いかんせんクローンさんが優秀すぎるもので
リアルガチで戦ったことって一度もないからね
うーん、どっちにしようか
どっちのほうが攻略しやすいかって言ったら
沼よりは洞窟だよね、たぶん
沼なんて足とられそうで
きっとリザードの独壇場になると思うんだ
スライムとは比べ物にならないほど強いだろうし
まずはオークでどれほどの強さなのかを確かめてもいいと思う
と言うわけでオークの巣の入り口に立つ……
なんか、ごめんねなんか、これから行くぞ!って時に
「メッチャ臭いっす!!…いっす…いっす……いっす………」
メッチャ響いた、今回は少しだけ俺もついて行こうと思ったけど…
ゴメンやっぱ無理だわ
クローンさん宜しくお願いします!
オークってブタの化け物だもんね
前に豚小屋に行ったことあるけど凄い匂いだった。
それを考えると当然のことだったね。
悪臭にも文句を言わず、ずんずんと進んでいく
クローンの頼もしい姿に俺は申し訳なさとともに
あわい憧れをのようなものを抱きながら背中を見送るのであった
……って、付いていかなきゃ!
じゃなくて憑いて、だね。
オークの巣は思ったよりも道幅が狭く非常に入り組んでいた
3人一組で進んでいるが縦一列で進むしかなく
連携がとりずらい状況だった
そこで1人1人バラバラに行動しマップを作成させつつ
巣の中を完全攻略するためにくまなく探索し
徐々に奥に進んでいくことにした
探索の結果では見張りなんかは特になく
5分くらい進んだところに少し開けた場所がある
確かに俺も確認した
あれはものすごくおぞましい光景だった
オーク同士で喰らい合っているのだ
食欲、性欲が盛んな奴らだろうとは思ってたけど
まさかの共食いである
そこには見るに堪えない程の醜く凄惨な光景が広がっていた。
クローンでよかったと思った
こんな場所に実際に行ったら
血の臭いと内容物の臭いで
どうにかなってしまっていただろう
そこには悪いけど俺の意識は外させてもらって、別部隊で向かわせて
全滅させたら報告だけ上げてくれるように指示を出した
やっぱり魔物ってスライムみたいに
プルるんの癒し系ばかりじゃないよね
これが現実ってやつさ
と、一体のクローンが少し開けた場所に出た
いる
今度は共食い部屋ではなかった
一匹のメスとわかるオークに群がる
目を血走らせた沢山のオークたちであった
はぁ
オークってこんなんばっかかよ……