第78話 スラー商会
「では始めましょうか。」
「おう。」
「「はい。」」
机の上に大量の資料を広げ、必要な情報を集めていく。
まず始めに王国に放置されてるダンジョンをピックアップだ。
基本的に放置されてるダンジョンは、
国が無価値と判断したもの。
それを好きにしたって文句を言われる筋合いはない。
国が管理していないダンジョンは36箇所。
以外と多いな。
採算が取れない素材が取れない場所が22。
攻略困難が3。
到達困難が11。
あと俺が冒険者の時に採取剥ぎ取り施設を作って
その後国に没収されたロックリザードの巣。
俺が手を引いた後、すぐ採算がとれなくなり撤退したみたい。
頭悪すぎない?
ロックリザードのクエストで一緒に頑張った
イリさんやアーロンさんは元気にしてるかな。
疫病は終息しただろうか…。
ロックリザードはすぐ稼働できるとして、
他の場所も下見して、生産輸送体制をを確立しないとな。
ダンジョンをリストアップする。
まずは素材価値無、低の放置ダンジョン。
・ゴブリン×5…素材価値なし。E
・ウェアラット×3…素材価値なし。F
・レイスの廃城…素材なし。E
・キラービーの巣×2…遠方。D
・マッドゴーレムの墓所…遠方、素材価値低。C
・アント地底窟…遠方。価値低。D
・チープトレント群生地×2…価値低い。F
・トード地底湖群…有毒種価値あり。D
・レッサーデーモン群生帯…危険。素材価値低い。B
スネイルの塔…討伐難易度高。素材価値低い。B
不死者の溝…素材価値なし。C
廃坑…遠方。価値低い。D
ロックリザードの巣…遠方。価値低い。D
ロックリザードの巣…開発済み。価値低い。D
攻略困難ダンジョン
・魔窟…凶悪な悪魔の巣窟。入り口付近でグレーターデーモンに遭遇する。
素材も並みの魔物と比べて品質は変わらない。
魔法を習得できる悪魔の瞳が入手可能。
だが強い肉体と精神力が無いと、瞳の持つ魔力に冒される。
危険な割には需要が極端に低い。
たまに悪魔が迷い出てくるので誰も近寄らず、近隣に住む者もない。
ダンジョンランク…S
・神殿跡地…大昔、土地神が祭られていたが、信仰者の過疎が進み、
廃れやがてオーガになり果てたとも。
オーガが住み着いたとも。凶悪。
ダンジョンランク…A
・ソーマの棲み家…魔女ソーマのダンジョン。
残忍な魔女は勇者の手によって討伐されたが、
魔女の怨念によって様々な邪鬼が棲息するダンジョンと化した。
到達困難ダンジョン
王都南方
・地底神殿…平地にぽっかりと空いた大穴。
一週間壁を下り光も届かない場所にこつぜんと姿を表す門。
その中には巨大な神殿があり、
その奥には延々と広大な回廊が続く。
神殿にそびえ立つ白亜の石像が襲い来る。
石像は希少な聖白石で出来ているが、穴が深すぎて引き上げは不可能。
・湖底遺跡群…湖底に沈んだ古代遺跡。水棲魔物の巣になっている。
・地獄の釜…ホットスポットに出来たダンジョン。マグマに阻まれ侵入は不可。
・水神の大瀑布…激しく落ちる滝壺の底。
小さな小さな裂け目からは魔力に汚染された水が吹き出している。
その少し上に人一人が通れる水路がある。
その先に、魚人の住まうダンジョンがある。
北方大山脈方面
・魔王の影…山脈の西側大きく裂けた割れ目はどこまでも深く、
入り込んだ者を闇に落とし食らう。
・天上空洞…山頂付近切り立った崖の上にぽっかりと空いた穴。
風が強く、辿り着くことは困難。
・魔楼窟…塔のように伸びた山の上にある楼。
楼の中は外見にそぐわぬ広さがあり、
洞窟のような岩肌のダンジョンになっている。
周囲に巨大鳥の魔物が多数生息する為、登頂は不可能。
・火龍の口…北方大山脈タラ山中腹にある穴から
マグマ溜まりが顔を覗かせる場所。
・タラ山頂火山湖遺跡…火山湖に沈んだ遺跡。詳細は一切不明。
ダンジョンであったという口伝が残っているのみ。
東方絶壁…北方大山脈東側2000メートルの切り立った崖。
ブラックワイバーンの住処となっている。
コワル樹林帯…東方絶壁下に広がる樹林帯。
魔力が豊富で小さいダンジョンが無数に存在する。
魔力を元に大量の魔物が繁殖しているため、
ワイバーンの餌場となっている。
魔力濃度が濃いため普通の人間には長時間の滞在は不可能。
方向感覚を失い必ず迷う。
西方
魔王リュグエンの塔
…大陥没により塔は地下へと沈み入り口が塞がった。
天界とは別の空を目指した古代魔王の塔。
頂上には古代魔王の城があるとされる。
よし、大体のマッピングと特徴は憶えた。
攻略困難と、到達困難のダンジョン情報はさすがに少ないけど、
クローンと無限収納があれば問題はない。
次は未攻略のダンジョンか。
国が管理する38のダンジョンの内未攻略区域有りは16。
全てA級以上の魔物が生息する階層だ。
ここもマッピングして派遣するぞ。
今年の討伐数が0匹、の区域があるダンジョンは未攻略も含めては30。
過去三年まで遡っても28。
「国内在住の冒険者に限って言えば、全ダンジョンで討伐0の区域があります。」
「マジか、そんなにこの国レベル低いの?」
「年々登録者数は減り、上級者ほど他国へ移る傾向にあります。」
多分、大臣達のせいだね。商人ギルドと練金ギルドもか。
命懸けで依頼をこなしてもいいように使われるだけ。
市場を大臣が全て牛耳ってるから自由な取引ができない。
そりゃ、力が付いたらこんなとこ出ていくわ。
なんか、色々見えてきたね。
ま、それはおいおい考えるとして、まずはガッツリ攻略しますか。
「ありがとうございました。」
「こっちは売り先との交渉やら、なんやらでしばらく時間が掛かりそうだ。」
「あ、スラー商会にも声掛けておきますね。」
「ああ、恐らくハルクのコネと商人としての腕も必要になるからな。」
「ご面倒をお掛けしますが、よろしくお願いいたします。」
「何をいってる。魔王さまとの初仕事だ。気合いを入れてやるさ。」
「こっちの事は任せて、攻略頑張ってください。」
シェロルさんがガッツポーズで応援してくれた。
うん、美人さんの応援は力になるね。
「これはギルド揚げての大仕事になりそうですね。」
アヤさんもありがとうございました。
「では行ってきます。」
-スラー商会本店-
商会当主の名はハルク。
先代が商人ギルド長バンザの不興を買い、
大臣に殺され資産を全て没収されたが、
隣国で再起し、瞬く間に頭角を表した。
その後ペンレシアで没収された店舗を取り戻し、
従業員たちを再び呼び戻し営業を再開させた手腕の持ち主。
ヒトシとは冒険者の時に出会い、
素材の売り先が無くて困っている所を助けられた。
「ヒトシ様。ようこそお出でくださいました。
この度の魔王就任、誠におめでとうございます。」
先代からスラー商会に仕えるゼルさんだ。
この人柔和な笑顔に似合わす冷静で凄腕なんだよな。
「おう、魔王様じゃねえか。
そろそろ来る頃じゃねえかと思ってたぜ。」
イタズラな笑みを浮かべてソファーに座っているハルク。
「ハルクさん、魔王様はやめてください。」
「いいじゃねえか、ヒトシと俺の仲だろ?」
「ますますやめてください。」
「はは、相変わらずだな。
金の臭いがプンプンするのも相変わらずだ。」
「ハルクさんこそ相変わらずですね。」
「ヒトシ様、南国から取り寄せた香茶と言うものでございます。
よろしければご感想などをお聞かせください。」
ゼルさんが白磁のティーセットを持ってきた。
「それは新しく取引を始めた香茶ってやつだ。
王族や貴族様に気に入ってもらえそうだったんでな。」
なんだか濁っているけど…、一口飲んでみる。
「あー、これは…。風味がすごく爽やかで美味しいんですけど。
エグ味や渋味がかなり強いですね。」
「やはりそうですか。
南方ではこの渋味こそがお茶の旨味だと言うのですが、
このままではこちらの人間に受けるとは思えないのです。」
「風味がいいだけに何とかして売りたいんだが。
水で薄めたり、茶葉を取り出して煮詰めてみても上手くいかねえんだ。」
「これじゃ確かに売れませんね。
体には良さそうだけど。出し方に問題があるのかな?」
「出し方、ですか?」
「はい、もしかして、グツグツ煮詰めてないですか?」
「はい、煮詰めて茶葉をしっかり絞っております。
これが南で教えられたやり方です。」
「それだ。沸騰したお湯と茶葉をください。」
…
「お待たせしました。」
俺は茶葉を樹霊術の根で作ったネットにくるみ
お湯の中に沈めゆっくり待った。
ゆらゆらと茶色の揺らぎが沈殿していく。
「ほうこれは…、何とも優雅なものですな。」
「そろそろいいかな。」
茶葉を取り出し。
「どうぞ。」
ゼルさんが一口、
「おお、これは!ハルク様。」
ハルクさんにカップを渡し、
「よし、これだ!エグ味も渋味も押さえられ風味だけが生きている!
ヒトシ流石だぜ。これは金の匂いだ!」
「やっばりハルクさんは金ですね。」
「当たり前だ、俺はいつでも変わらねえよ。
そしてヒトシと組めば必ず金に繋がる事を知っている。
それで何の話をしに来たんだ?まさか世界征服の手伝いか?」
「はい、じゃ決まりですね。」
「待て待て待て。そんなの唐突過ぎだ、冗談だろ?」
「じゃないですね。ハルクさんは儲けたくないですか?」
「くそっ!マジかよ、さすが悪名高い魔王ヒトシ。
人の心を弄ぶのが得意だな。」
「だからそういうの、やめてください。」
「そうだな、殺し屋、傭兵、山賊、盗賊。
西の国境の遊牧民族、南の森の戦闘民族。
武力ならいくらでも紹介できるが、そんなもんヒトシに必要か?」
「武力じゃなくて商人として、スラー商会と売買契約をしたいんですけど。」
「…ああ、いいぜ。今度は何を売ってくれるんだ?」
「全部です。俺の素材全部買い取ってもらいます。
ダンテさんには話通してあるんで一度、訪ねてください。」
「全部って、どれくらいだよ。」
「国内のダンジョン全てです。」
ハルクさんは口に含んだ紅茶を吹き出した。
うん、やっぱりいい香りですね。俺の服びしょびしょだけど。




