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第75話 新魔王所信表明

魔導女帝ヨギに促され、俺は魔王就任の挨拶をすることになった。


「まず、俺は世界征服に興味はありません。

 宣誓は皆さん聞かれましたよね?」


「もちろん聞いていた。

 高らかに世界征服すると叫んでいたではないか。」


魔王アリが眉を潜め不信感を露にする。


「その後が大事じゃないですか!」


「その後、なんて言うのはなかったはずだが。」


「そんなはずは…。」


そんなはずは無い、自分の言ったことだ。

間違える訳が無い。


「その後、を誰か聞いているか?」


アリは聞き漏らしがあったかどうか他の魔王に確認する。


「あたしはきいてないね。」


「俺もだ。」


「ヒトシ様、申し上げにくいのですが私も聞いておりません。」


そしてなぜか誰も聞いていないと言う。

あれ何で?


(マスター。宣誓の途中で通信が途切れていた模様です。)


と、言うことは?


(マスターが本気で世界征服を始める、と言うことになっているようです。)


じゃあ、世界征服無しで。


『宣誓達成前の変更は無効です。』


だって世界征服って最終目標だよね。

それを果たしたあとの変更って意味無くない?

…ごめん、泣きそう、泣いていい?


俺は溢れだしそうな涙をこらえ、話を続けた。


「みなさん。聞いてください。」


魔王達の顔が真剣になった。


「宣誓取り消す方法教えて、お願い!」



「お前はバカなのか?」


「やーい、ばーかばーか!」


リリーさんがアリさんとライムを睨み付け詰め寄る。

そして、ライムはリリーさんに踏まれて、

…潰れた。

これは攻撃のうちに入らないのかしら?


さっきからアリさん俺に対する態度がキツいんですけど。

嫌われてる?


「悪いけど、それは無理だよ。」


「宣誓は魔王の存在意義のようなもの。

 おいそれと変えることなどできん。

 世界征服は、貴様自身の存在意義となったのだ。

 貴様はその存在意義を世界に示し続けなくてはならなくなったのだ。」


「アリの言う通りだよ。

 そして災厄はね、それぞれの宣誓に対応し生成されるんだよ。

 これがどう言うことか分かるかい?」


どうやら宣誓の違いによって、災厄も変わってくるみたい。


「災厄を使って宣誓を果たせと?」


「そういうこったね。」


「望まなくても?」


「ああ、災厄を選択してごらん。」


災厄を選択する。


「脅威とありますね。」


災厄を選択すると

・脅威 【30日】

と表示された


「災厄は魔王レベルが上がる度に新たな項目が増えていくんだが。左に残り時間があるだろ?」


この30日と言うのは残り時間か。なんの?


「あ、はい。30日です。」


「それがあんたの今の寿命さ。」


「え!?魔王って不老じゃないの?

 そんな、あんまりだよ。」


「話は最後まで聞くもんだ。」


「はい。」


「これは災厄を発動すると増えるのさ。

 恐らく30日分増えるはずだよ。一度発動してごらん。」


「え、でも。効果がよく分からないし。」


「レベル1の災厄なら大した効果はないよ。やってみな!」


「はいぃ!」


うだうだしてたら怒られた。

脅威発動!


…………。


しーん。


あれ?脅威発動!


…………。


発動!発動!発動!発動……?


…………。


「どうだい?」


「発動しませんね。十回以上試したんですけど。」


「そんなはずはないんだけどね。残り時間は増えてないかい?」



1年6月…、延びてる。


「やりました、寿命が延びました!」


「でもおかしいね。それだけ発動して、魔王レベルが1つも上がらないなんて…。」


そうか、災厄を使うと絶望値が貯まってレベルアップするんだった。


「魔王の格の違いだな!

 我の恨みの災厄は一回でレベルが上がったぞ!

 ヒトシのは大した災厄ではないんだろ!」


「そうか、よかった。発動してないと思ったから連発しちゃいました。」


と言うことは、誰も絶望しなかったってことだ。

そりゃ「魔王ヒトシ?ぷっ、誰それ?名前ダサくね?!」

的な感じになりますよね。

なんだか魔王を名乗るのが急に恥ずかしくなってきた。


まあ、これで寿命が延びまくるなら使いまくろう。


「あまり使い過ぎるんじゃないよ。」


あれ、止められた。


「災厄を使うとね、絶望と共にもう一つ溜まるものがあるんだよ。」


「溜まるもの。」


「敵意さ。絶望は怒り、悲しみ、恨み、憎しみを生む。

 その感情の全ては敵意に変わり絶望を与えた魔王に返ってくる。」


「敵意…。」


「そう、魔王が人類最大の敵である理由はそこさ。

 ここにいる連中は望む望まないに関わらず、

 人間に害をなして魔王になってる。

 でもね、全世界を敵に回して即討伐なんてことは滅多にないんだよ。

 よっぽど凶悪なやつじゃない限りね。」


「でも俺魔王になる前何回か暗殺されかけましたよ。」


「そりゃ、邪魔な相手は消しに来るだろうさ。

 だがね、それは一部の人間だろ?」


「そうですね。王と、それに繋がる人達です。」


「だが我々魔王は違うのだ。」


アリが口を開く。


「我ら魔王は全人間、いや全世界を相手に活動しているのだ。

 お前が世界を敵に回して、滅ぶのは勝手だ。

 だかその後、敵意の矛先が他の魔王に向かうこともあり得るのだ。

 そうなる前に我輩は人間側に付く。」


「なっ!アリ、貴様!」


「静かにしな、リリス。

 すまないがあたしも人間側に付くことになる。

 アリもあたしも少なからず領地があり、領民がいるんだよ。

 魔王として、領主として、そいつ等を守る義務も責任もあるってことさ。

 人間側に付けば、領民も守れるし、

 人間からの敵意も下げられる。

 悪い話じゃないんだよ。」


「貴様は世界征服の宣誓をした時点で我輩の敵となったのだ。」


「まあ、今の災厄を見る限り、まだペンレシア王周辺以外の人間は、

 あんたを脅威とは見ていないようだけどね。」


「世界征服をする気がないと言うのが本当かは知らんが、

 せいぜい上手く立ち回って、生き延びることだな。

 だが、世界の敵に回った時は容赦はしない。覚悟しておくことだ。」


「あたしも、不要な争いは避けたいところだよ。

 特にあんたとは、ね。」



「…話の腰を折ったな。悪かった。続けてくれ。」


「いえ、大丈夫です。」


アリさんも怖い人かと思ったけど領民思いのいい魔王なのかも知れない。


「世界征服に興味はない。

 この言葉に偽りはありません。

 実は宣誓の言葉の後には続きがあるんです。

 そこが重要なんです。」


「そこにヒトシの真意があると言うわけだな?」


黒の魔王が分かりやすく付け足してくれた。


「はい、俺はあの後こう続けました。

 『悪い奴等を懲らしめる』、と。」


「な?」


「フッ!」


「…。」


「はぁ。」


「スヤスヤ…。」


「そんなのずるいぞ!俺もそれがいい!」


「我らは、魔王だぞ。

 それに世界征服と悪者退治。

 まるで正反対ではないか。」


「そうでしょうか。

 皆さんだって、人間に仇なす魔王が現れたら

 人間側に付くし、その他にも敵意を下げるために

 色々と善行もしてるんじゃないですか?」


「それは…。」


「確かにな。ヒトシがやろうとしていることが

 実は一番正しい道なのかも知れないな。」


「今日の会議は俺を天魔会に入れるかどうかの会議なんですよね?」


「そうだ。そして俺は否認に一票だ。」


アリさんはやっぱり認めてくれないみたい。


「ちなみに、認可されなかった場合は?」


「はぐれ魔王となる。」


「はぐれ、魔王…。」


「現存するのは、魔竜王マグナ。妖精王ハロ。冥王オーム。

 彼らは何にも縛られない。

 あたしらと違って、タイムリミットがないのさ。

 幸い御三方とも人間なんかには興味がないようでね。

 自由にやってるよ。

 だが他は、一人も生き残っちゃいないね。」


「そうですか。

 これは俺が言えることじゃないかも知れませんが、

 保留でお願いします。」


「保留、だと?ふざけるな!我輩は否認と言ったのだ!」


「保留だ。」


「あたしも保留でいいよ。」


「私は、ヒトシ様に従うだけです。」


「わ、我も『ほうりゅう』?だ!」


ライム君、知ったかぶるのはよくないよ。


「リイヴ、いつまで寝てるつもりだい、大事な会議だよ!?」


「ほ、放流します!もう我慢できません、父上、リイヴは大放流大会です!」


?!


ちょっ!ベルトガチャガチャし始めたよこの子。

まさか、そっちの放流?


待て待て待て待て!

新築ダンジョンで粗相はやめて!


「リイヴ!!」


ヨギさん一喝!


「はいっ!あっ……。」


あ、て、え?

もしかして?


「あはは、私用事思い出した。

 あとはテキトーにやっといて!

 じゃ!キュピルリン☆」


竜の翼を生やした少女はキラキラと輝く黄跡を撒き散ら…、

いや、軌跡を描きながら飛び去っていった。


あいつ俺のダンジョン出禁だな。

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