第73話 魔王集結 中編
なんとか仲裁に入って、それぞれ円卓に着いてもらったわけですが。
「何で仲裁に入ってくれなかったんですか?」
リリスさんとヨギさんが喧嘩してるとき、
黒の魔王は視線をそらして知らんフリをしていたし、
ライム王子に至っては、膝を抱えてガタガタ震えていた。
「同族の恨み」、とお決まりの台詞を呟きながら。
彼は一体何族なのだろう。
「いや、いつものことだからな。」
円卓に座りくつろぎながら黒の魔王が話す。
「どうせ行くとこまで行って、
どちらかが手を出した瞬間
攻撃無効になって喧嘩は終わる。
下手に仲裁に入ると、二人の口撃を同時に浴びることになる。
そこで震えてるそいつのようにな。」
「う、うるさい!俺は泣いてないぞ!
魔王は泣いたりなんかしないんだからな!」
ズビッ!
誰も泣いてるとは言ってないけど。
「そうか、会議中は争いできないんでしたね。」
「それにしてもいい眺めだね。」
ヨギさんが辺りを見回しながら言う。
「広大な森、地平の向こう側まで森の海だよ。
ここは南の地にある大森林かい?
あたしもこんな居城にしたかったよ。」
「未開の地を選ぶなどさすがヒトシ様。
素晴らしき景色。魔力もさぞ豊富でしょう。
ここに魔界大帝国の礎を築き版都を広げ
望みのままに世界を征服なさるおつもりなのですね。」
「いえ、ここはペンレシア王国の東の森の中ですよ。
そしてこの大樹と森が俺のダンジョンです。」
「「「「…………。」」」」
「東の森より明らかに広いが…。」
「それじゃまるで世界樹の聖域じゃないか。」
確かに、そう言われれば。
「森の加護を持ってるのでその影響かも知れませんね。」
「あの森は最古のダンジョンのひとつだ。
悠久の時を掛けて造り上げられたもの。
それに匹敵する広大なダンジョンを
一瞬で作り上げるなど…。
ドッペルゲンガーの件といい、
どれ程の魔力を有しているのか。」
「世界評議会上がりだからどれ程かと思って疑っておったが、
色欲が惚れるのもわからんでもないね。」
「ま、我のダンジョンほどじゃないけどね!」
「愚か者!貴様のちっぽけな穴蔵と
ヒトシ様のダンジョンなど比べ物にならぬわ!」
「ひっ!ふぐぅ…。」
「泣くな、ライム。魔王だろ。」
黒の魔王が慰める。
「泣いてなどおらぬ!
覚えておれ、同族の恨みはいずれ鋭い牙になり貴様を食い殺す!」
今のは自分の恨みだけどね。
「あとの魔王様は来ませんね。」
「おかしいね。
いつもはいの一番に現れるはずの
あいつが来てないなんて。」
ドゴォォォン!
広場の下の方で爆発音だ。
木に穴が開き、煙が吹き出していた。
「なんだい?!」
「分からぬ。だが相当大きな魔力の衝突だ。」
「俺、ちょっと見てきますね。」
俺は広場から飛び降りるとスライムスーツを装着する。
ひょいと枝から枝へ飛び移り煙の立ち込める穴までたどり着いた。
何か小さい影と、巨大な影が戦っていた。
巨大な影は暗褐色の鈍く光る鱗を持ったドラゴンだった。
小さな影は、女の子?
「何でこんなとこにドラゴンルーラーがいる訳?!」
ドラゴンも何かしゃべっている。竜言だ!
「我に勝るにはまだ貴様は若すぎるようだな龍の娘よ。」
「何喋ってるのか分からないのよ!私、竜言苦手なんだから!」
『ガラ・ナヤガ・ゴ…』
ドラゴンの回りに次々に魔方陣が展開され
完成した魔方陣からドラゴンの頭が現れる。
それぞれの口が青白く光り、次の瞬間高濃度のブレスが放たれる。
「無理無理無理無理だってばー!
あり得ないから!出来立てのダンジョンでしょ?!
バカみたいに完成してんじゃないよ!」
薄暗く光ると、龍の翼が生え、高速でこちらへ…。
「ごふっ!」
全速力ダイブ!
「おわっと!ごめん!
君も早く逃げた方がいいよ!」
と告げると、上空へ飛び去ってしまった。
「え、嘘やん。これネトゲやったらマナー違反やで!?」
うひー、そんなことよりこのブレスだ!
何かないか?ブレスに対抗する方法。
てか何の属性?
(光と、水の混合属性です。)
ありがとクローンちゃん。
対抗するには闇と火か?
混合て、どないすんねん!
右手に闇で、左手に火で。合体!
右手に展開した闇の魔力と
左手に展開した火の魔力を正面で合わせる。
「こ、これは…、
はどーけん!」
放射状に放たれる闇と火の、波動?
……。
「ふー、なんとか凌いだか。」
煙が晴れると、煤まみれになったドラゴンルーラーが。
「坊主、やるではないか。ではこれではどうだ?」
いやいや、やりませんから!もう要りませんから!
こんな危険な相手とやるわけないでしょ!?
「さ、さよならー!」
「なんと、つまらんのう…」
なんなのあれ!俺のダンジョンにすんでんの?
「こわっ!」
足元にあんなのが居ると思うと
安心して眠れないんですけど!
しかもダンジョンマスターに襲いかかって来るとか
あり得なくない?
ふう、なんとかよじ登って広場まで戻ってきたぞ。
なにやら騒がしいな。
「ほんとなんだってばー!」
何やら女の子が騒いでいる。
「それで、ヒトシには会わなかったのか?」
黒の魔王がそれに問いかける。
「ヒトシってあの新魔王になった人?
そんな人来なかったけど?」
会いましたよー。思いっきりタックルされました。
「いや、様子を見に行ったはずだが。」
「あ、白い全身鎧の!」
そうそう、思い出してくれました?
「あ、ああ恐らくそいつだ。一緒に来なかったのか?」
「ドラゴンルーラーのエレメントブレスの中に置いてきちゃった…!」
はい、完全なマナー違反です。
「なんですって?!ヒトシ様!ヒトシ様!」
リリーさんがとんでもない顔で焦っている。
もしかしたら残念美人さんなのかもしれない。
「一人で行ってどうする!相手はドラゴンルーラーなんだろ?
いくら魔王でも一人では無理だ!」
「でも、ヒトシ様が!」
あ、ヨギさんと目が合いました。どもども。
「待ちな。どうやら無事だったようだよ。」
「はー、死ぬかと思った。いや、ビックリしました。」




